乳がん術後13年目に再発。HER2陽性の治療法は?
13年前、左乳房の乳がん温存手術を受け、術後「がんの顔つきが悪い」ということで、左乳房への放射線照射、EC療法、ホルモン療法を受けました。当時、私がかかっていた施設では、まだHER2の検査を行っていませんでした。その後は問題なく過ごしていたのですが、今年(2016年)に入り、腰の痛みで受診したところ、骨転移が判明。13年前の組織を検査してHER2陽性だったことから、*タキソテール+*ハーセプチン+*パージェタを使った化学療法を受けることになりました。この治療法で効果がありますか。もし、効果がなかった場合はどのような治療になるのでしょうか。
(59歳 女性 神奈川県)
A ハーセプチン+抗がん薬、カドサイラなどを使う
上野貴史さん
HER2は乳がんの予後因子であり、分子標的薬ハーセプチンの特異的なターゲットでもあります。
乳がんでは通常HER2、ホルモン受容体、がん細胞の増殖因子(Ki-67値)という3つの要素によってサブタイプを分類します。米国臨床腫瘍学会(ASCO)ガイドラインでの進行再発乳がんのHER2陽性タイプの第1選択は、タキソテール+ハーセプチン+パージェタの3剤併用療法ですから、ご相談者の治療法は標準治療と言えます。
効果があるうちはこの治療法を続け、なくなってきたら別の治療法に切り替えます。第2選択薬は*カドサイラです。第3選択薬はハーセプチンに*ナベルビンや*ハラヴェンなど別の抗がん薬を組み合わせた併用療法か、*タイケルブ+*ゼローダとなります。カドサイラはハーセプチンと抗がん薬の作用を併せ持つ薬で、ハーセプチン+抗がん薬療法に比べると、一般的に副作用が軽いという特徴があります。
*タキソテール=一般名ドセタキセル *ハーセプチン=一般名トラスツズマブ *パージェタ=一般名ペルツズマブ
*カドサイラ=一般名トラスツズマブ・エムタンシン注 *ナベルビン=一般名ビノレルビン *ハラヴェン=一般名エリブリン *タイケルブ=一般名ラパチニブ *ゼローダ=一般名カペシタビン