- ホーム >
- 検査・治療法 >
- ホルモン療法 >
- ホルモン療法の副作用
ほてり・発汗、疲れ、めまい、頭痛、手術後の関節痛などに高い改善率
乳がんホルモン療法の副作用を漢方療法で改善する
東京都立駒込病院外科部長の
戸井雅和さん
東京都立駒込病院内科医長の
屠聿揚さん
アロマターゼ阻害剤の時代
乳がんのホルモン療法では、ノルバデックス(一般名タモキシフェン)が普及し、長い間、大きな役割を果たしてきた。90年代後半、第3世代の新しい閉経後乳がんの経口治療薬としてアロマターゼ阻害剤が登場し、ノルバデックスに替わるものとしてすでに医療現場で使用されている。新しいアロマターゼ阻害剤は、アリミデックス(一般名アナストロゾール)、フェマーラ(一般名レトロゾール)、アロマシン(一般名エキセメスタン)の3種類だ。3つのアロマターゼ阻害剤は、閉経後乳がんの経口治療薬として術後補助療法に用いられて、優れた治療成績を示している。
東京都立駒込病院外科部長の戸井雅和さんは次のように述べる。
「術後補助療法にアロマターゼ阻害剤を用いた場合、欧米の大規模臨床試験ではアリミデックス単独のほうがタモキシフェン単独よりも明らかに再発抑制を得られることがわかりました。フェマーラについても同様の結果が近々発表される見込みです。アロマシンについては、タモキシフェンからアロマシンに切り替えた場合とタモキシフェン単独の場合を比較した臨床試験で、アロマシンを含む場合のほうが有意に再発抑制を得られることが報告されています。そこで、現在、閉経後乳がんの術後補助療法の標準治療は、アロマターゼ阻害剤となっています」
こうした臨床試験の結果、ノルバデックスを飲んだあと、その延長療法として、アロマターゼ阻害剤に切り替えて飲み続ける治療法も始まった。例えば、00年の手術後ノルバデックスを5年間飲んだあと、アロマターゼ阻害剤にスイッチして5年間飲み続ける。このことで再発抑制を図るというわけだ。乳がんの術後補助療法は、世界的にそうした治療に向かって動き出している。
アロマターゼ阻害剤の副作用
ただし、アロマターゼ阻害剤にはデメリットもある。アロマターゼ阻害剤は女性ホルモンを抑制する作用があるため、骨筋系の障害、循環器系障害、骨粗鬆症などを起こしやすいことがわかってきた。ノルバデックスについては、子宮がんを増加させるなどのデメリットが知られている。「世界的に見ると、乳がんのホルモン療法は、ノルバデックスからアロマターゼ阻害剤にシフトしていますが、同時にその副作用対策も重要となってきました」と戸井さん。
そこで、05年10月、同病院では「ホルモン治療に関するアンケート調査」を行った。その調査結果が下の図である。乳がんのホルモン療法に関する調査は欧米ではたくさん報告されている。しかし、日本人を含むアジア人ではまとまったデータはまだないという。この調査では2つの目的があった。
「1つは、日本人は大豆や小魚など骨によいと言われる食事をしています。また、畳での生活も骨にはよいとされています。欧米と比べて本当によいのかどうか知りたかったのです。もう1つは、体重の増加についてです。これまで注目されていなかった部分についてスポットを当てました」(戸井さん)
この調査の結果、ホルモン療法の副作用については欧米での報告とほぼ同様だった。また、体重については2キログラム増加が約30パーセント、4キログラム以上の増加が約10パーセントとやや多いこともわかった。逆に4キログラム以上の体重減少も5パーセントほどあった。3つのアロマターゼ阻害剤の副作用の内容は多少違うが、大きな差はないという。
ところで、今回のアンケート調査で明らかになったホルモン療法によるさまざまな副作用に対して、西洋医学による改善はかなり難しいようだ。そこで、戸井さんは、同病院内科で漢方医学を得意とする屠聿揚さんの協力を得て、ホルモン療法による副作用の改善、軽減に取り組んでいる。
[体重の変動]
[ホルモン治療内容]
LH-RHa(ゾラデックス、リュープリン)
アロマターゼ阻害剤(アリミデックス、アロマシン)
[ホルモン治療内容と副作用の有無]
同じカテゴリーの最新記事
- ホルモン療法中は骨折リスクに注意! アロマターゼ阻害薬服用時の骨粗鬆症治療
- がん治療中も後も、骨の健康が長生きの秘訣 ホルモン療法に合併する骨粗鬆症を軽視しない!
- ホルモン療法の副作用対策 抗がん薬とは異なる副作用が発現
- ホットフラッシュ、関節痛、倦怠感を抑えられるか?古くて新しい薬 ホルモン療法のつらい副作用を漢方で乗り切る
- ホットフラッシュ、関節痛、うつに対処し、治療を完遂する方法 ホルモン療法中のつらい副作用は、こうして乗り切る!
- 整形外科との協力で関節痛などの副作用を緩和している 副作用をコントロールして乳がん術後ホルモン療法を乗り切る
- 骨粗鬆症など、骨関連事象の対処法と生活上の留意点 乳がんホルモン療法の副作用と対策
- からだに異常を感じたら早めに対処することが大切 QOLを高める前立腺がんホルモン療法の副作用対策あれこれ
- ホルモン療法の大家、アラン・モニエさん特別インタビュー 患者さんのQOLを第一に考えた乳がんホルモン療法
- 前立腺がんホルモン療法後の副作用 ほてりに対するSSRIの効果