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新しいペプチド受容体核医学内用療法(PRRT)がスタート 希少がんで見つけるのが難しい神経内分泌腫瘍

監修●高田良司 大阪国際がんセンター肝胆膵内科医長兼希少がんセンター
取材・文●柄川昭彦
発行:2021年10月
更新:2021年10月

  

「ペプチド受容体核医学内用療法は、日本神経内分泌研究会や患者さんがここ数年待ち望んでいた承認でした」と語る高田良司さん

希少がんの1種である神経内分泌腫瘍の新しい治療薬「ルタテラ」が、2021年6月に承認され、いよいよ治療が始まろうとしている。

この薬は、腫瘍細胞に発現しているソマトスタチン受容体と結合するソマトスタチン類似物質に、放射性物質を取り付けた構造になっている。腫瘍細胞に結合し、体内から放射線を照射することで治療効果を発揮する。よく効いた人の中には、その後の治療が不要になった人もいるという。この新しい治療法を中心に、神経内分泌腫瘍の治療について解説していただいた。

神経内分泌腫瘍とは

神経内分泌腫瘍は、全身のさまざまな臓器に存在する神経内分泌細胞から発生する腫瘍で、NENNeuroendocrine Neoplasm)と略される。

人口10万人当たりの新規発症数は5人ほどで、希少がんの1種とされている。新規発症数が10万人当たり6人未満が希少がんと定義されるので、希少がんの中では比較的多いほうなのだが、稀ながんであることは確かだ。そうしたこともあって、この病気は見つけるのが難しい、と大阪国際がんセンター肝胆膵内科医長の高田良司さんは言う。

「診察した医師がこの病気のことをよく知っていて、神経内分泌腫瘍ではないかと疑ってみない限り、なかなか見つけることができません。そこで、国際神経内分泌腫瘍連盟のシンボルマークには、シマウマの縞模様が使われています」(高田さん)

ひづめの音を聞いたら誰もが「馬だろう」と考える。シマウマのことを知っていて、シマウマかもしれないと疑ってみなければ、シマウマには気づかない。神経内分泌腫瘍という病気は、疑わないと見つけられないシマウマのような存在だ、ということらしい。

神経内分泌腫瘍(NEN)は、大きく2つの種類に分類できる。高分化型の神経内分泌腫瘍(NETNeuroendocrine Tumor)と、低分化型の神経内分泌がん(NECNeuroendocrine Carcinoma)である。NETは比較的悪性度が低く、低~中悪性度だが、NECは悪性度が高いという特徴がある。

神経内分泌細胞は全身の臓器にあるため、全身のあらゆる臓器にできる可能性があるが、できやすい臓器はある。日本人に多いのは、膵臓や大腸(主に直腸)のNENだ。腹部のCT検査やエコー(超音波)検査、あるいは大腸の内視鏡検査などで、偶然発見されるケースが増えているという。

「現在、全国の115施設が参加し、神経内分泌腫瘍の登録研究が進められています。以前からこの病気の診療に取り組んできた代表的な病院には、東京医科歯科大学、横浜市立大学、国立がん研究センター中央病院、北海道大学、九州大学、愛知がんセンター、京都大学、関西電力病院などがありますが、それらと並んで大阪国際がんセンターもこの研究に参加しています。当センターには2020年に希少がんセンターが開設され、施設としても希少がんの診療に力を入れています」(高田さん)

膵臓と消化管の神経内分泌腫瘍の診断

神経内分泌腫瘍の診断について、『膵・消化管神経内分泌腫瘍診療ガイドライン』(2019年版)では、次のような方法が推奨されている(図1)。

膵臓の神経内分泌腫瘍は、腹部エコーやCTで発見されることが多い。そのような場合には、CTやMRI、腹部造影エコー検査、超音波内視鏡検査を行ったり、「オクトレオスキャン」という神経内分泌腫瘍特有の検査やPET-CTなども行ったりして全身を調べていく。

消化管の神経内分泌腫瘍は、大腸内視鏡検査で偶然発見されることが多い。そのような場合には、内視鏡で大きさや形を見たり、超音波内視鏡検査で深さを調べたりする。

オクトレオスキャンとは、どのような検査なのだろうか。

「神経内分泌腫瘍の細胞には、ソマトスタチン受容体(SSTR)が発現している細胞が一定数あります。その受容体と結合する放射性物質を使用したシンチグラフィ(核医学検査)が、オクトレオスキャンです。ソマトスタチン受容体が発現している細胞があると、その部分に放射性物質が集積し、画像にはっきりと描き出されるのです」(高田さん)

この検査は、日本では2015年から保険で受けられるようになっている(図2)。

膵臓と消化管の神経内分泌腫瘍の治療

膵臓の神経内分泌腫瘍の場合、日本のガイドラインでは、手術ができる場合には手術を行うのが原則となっている。膵臓の腫瘍であれば膵切除手術が行われるが、膵切除手術は大きな侵襲を伴うため、腫瘍が小さくリンパ節転移がない場合には、慎重に経過観察することも選択肢の1つとなる。一方、転移があって切除手術が行えない場合には、薬物療法が行われることになる。

神経内分泌腫瘍の中には、ホルモンを分泌する腫瘍があり、「機能性神経内分泌腫瘍」と呼ばれている。機能性の場合には、ホルモンによって現れる症状があるので、そのコントロールも行う必要がある。

直腸の神経内分泌腫瘍の場合、腫瘍が1㎝未満であれば、内視鏡治療を行うのが原則となっている。1㎝以上の場合には、深く進展していたり、血管やリンパ管に浸潤していたりすることがあるので、手術を行う。転移があって手術ができない場合には、薬物療法の対象となる。

膵臓と消化管の神経内分泌腫瘍の薬物療法では、表に示したような薬剤が使われている。

サンドスタチン(一般名オクトレオチド)やソマチュリン(一般名ランレオチド)は、ソマトスタチン類似物質と呼ばれる種類の薬剤である。腫瘍が大きくなるのを抑えたり、腫瘍細胞からのホルモン分泌を抑えて症状を改善したりする効果が期待できる。

アフィニトール(一般名エベロリムス)やスーテント(一般名スニチニブ)は分子標的薬で、腫瘍が大きくなるのを抑える働きがある。

NECの治療に使われるシスプラチン(一般名)、ベプシド/ラステット(一般名エトポシド)、カンプト/トポテシン(一般名イリノテカン)は細胞障害性の抗がん薬で、腫瘍が大きくなるのを抑える働きをする。腫瘍細胞だけでなく、正常細胞にも同じように影響を与えるため、強い副作用が出る(図3)。

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