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分子標的薬と免疫療法薬との併用療法が高い効果 進行腎細胞がんの1次治療に新しい複合免疫療法が登場

監修●植村天受 近畿大学医学部泌尿器科学主任教授
取材・文●柄川昭彦
発行:2021年7月
更新:2021年8月

  

「腎細胞がんは、もともと免疫と深い関わりがあるがんで、免疫チェックポイント阻害薬を組み合わせる複合免疫療法は理にかなった治療と言えます」と語る植村さん

進行腎細胞がんの1次治療は、がん免疫療法薬と分子標的のチロシンキナーゼ阻害薬を併用する「複合免疫療法」が中心となっている。現在は3種類の併用療法が行われているが、最近になって、2種類の複合免疫療法の第Ⅲ相試験結果が報告された。

新たな複合免疫療法である<オプジーボ+カボメティクス併用療法>と<キイトルーダ+レンビマ併用療法>の臨床試験結果は、従来の治療法の成績を超えているという。期待の併用療法を含め、進行腎細胞の複合免疫療法について解説してもらった。

進行腎細胞がんの1次治療は複合免疫療法が中心

現在、進行腎細胞がんの1次治療としては、がん免疫療法薬(ICI)と分子標的薬のチロシンキナーゼ阻害薬(TKI)を組み合わせた「複合免疫療法」が広く行われている。免疫チェックポイント阻害薬のようなICIが登場してくる以前は、TKI単独が主流だったが、現在は併用療法が行われることが多い。

ICIとの組み合わせが有効であることについて、近畿大学医学部泌尿器科学主任教授の植村天受さんは次のように説明してくれた。

「腎細胞がんは、もともと患者さんの免疫と深く関わっているがんなのです。他の転移性がんでは、ふつう手術で原発巣を切除することはありません。しかし、腎細胞がんではずっと以前から原発巣を切除してきました。これは、原発巣を除去することで、転移巣のがんが消えるという例が散見されるからなのです。私自身、そういう症例を何度か経験しています。

実際のメカニズムはわかりませんが、原発巣が除去されることで、宿主(患者さんの)免疫が賦活されるためではないかと考えられています。

また、分子標的薬のチロシンキナーゼ阻害薬TKIが登場する以前、腎細胞がんには抗がん薬はまったく効かないため、インターフェロン、インターロイキンといった免疫関連の薬剤が使われていました。もともと免疫と深い関わりがあるがんなので、免疫チェックポイント阻害薬ICIを組み合わせる複合免疫療法は理にかなった治療と言えます」

また、TKIとICIという作用メカニズムの異なる薬剤を組み合わせることで、相加・相乗効果が期待できるという面もある。例えば、TKIには免疫を高める働きもあり、そうした効果が加わることで、片方ずつ使った場合とは異なる効果が期待できるのだという。

現在行われている3種類の複合免疫療法

進行腎細胞がんの1次治療としては、現在、3種類の複合免疫療法が行われている。

・キイトルーダ(一般名ペムブロリズマブ)(ICI)+インライタ(同アキシチニブ)(TKI)併用療法
・バベンチオ(同アベルマブ)(ICI)+インライタ(TKI)併用療法
・オプジーボ(同ニボルマブ)(ICI)+ヤーボイ(同イピリムマブ)(ICI)併用療法

ICIとTKIを組み合わせた併用療法が2種類、ICIとICIの組み合わせが1種類である(表1)。

まず、「ICI+TKI」の2種類の併用療法を見ていくことにしよう。キイトルーダとバベンチオはどちらも免疫チェックポイント阻害薬だが、キイトルーダが抗PD-1抗体薬、バベンチオが抗PD-L1抗体薬という違いがある。そして、組み合わせるTKIは、どちらの併用療法もインライタだ(図2)。

「何種類もあるTKIの中からインライタが選ばれたわけですが、単剤での効果を見たら、インライタよりスーテント(一般名スニチニブ)やヴォトリエント(同パゾパニブ)のほうがよいように思えます。ところが、ICIとスーテントやヴォトリエントを組み合わせて使用したところ、重篤な有害事象が出たのです。それでインライタと組み合わせることになったという経緯があります」(植村さん)

有害事象のことを考えると、インライタは使いやすい薬剤だという。半減期が5時間程度と短いので、何か有害事象が起きたとしても、それがインライタによるものだとしたら、休薬することですぐに消えてくれるからだ。コントロールしやすいので、併用療法の相手役としては優れた薬剤だったのである。

3種類の複合免疫療法の使い分け

では、<キイトルーダ(一般名ペムブロリズマブ)+インライタ>と<バベンチオ+インライタ>はどのように使い分けられているのだろうか。どちらの併用療法もスーテント単剤療法と比較した第Ⅲ相試験が行われている。

<キイトルーダ+インライタ>と<スーテント単剤>を比較した「KEYNOTE-426試験」では、併用療法群のPFS(無増悪生存期間)中央値が15.7カ月、スーテント群が11.1カ月で、併用療法の有効性が証明されている。

<バベンチオ+インライタ>と<スーテント単剤>を比較した「JAVELIN Renal 101試験」では、併用療法群のPFS中央値が13.8カ月、スーテント群が8.4カ月で、やはり併用療法の有効性が証明されている(表3、4)。

「2つの臨床試験の数字だけ比べるのは意味がありません。別の試験ですし、患者背景が微妙に違っていたりするからです。あくまで印象ですが、効果にはほとんど差がないので、有害事象で使い分けているケースが多いのではないかと思います。

例えば、高齢者や体力がない患者さんに有害事象が少し軽い<バベンチオ+インライタ>を選び、そういった心配がない患者さんに<キイトルーダ+インライタ>を使うというやり方です」(植村さん)

<ヤーボイ(一般名イピリズマブ)+オプジーボ>も<スーテント単剤>と比較した「CheckMate-214試験」という第Ⅲ相試験がある。この試験では、中リスクと高リスクの患者さんを対象にして、併用療法の有効性が証明されている。

「この試験で注目されているのは、がんが消えてしまう完全奏効率(CR率)と奏効期間です。比較的リスクの高い患者さんを対象にしていながら、CR率が11%と高く、いったん効果を示すと長期にわたって効果が持続することです。

感覚的に言うと、ICI+TKIに比べて早期の腫瘍縮小効果は高くないですが、一発逆転のホームランが期待できる併用療法ということになります。例えば、患者さんがまだ比較的若くて、がんが高リスクだというような場合、この併用療法を選択する人が多いのではないでしょうか」(植村さん)

こうした3つの複合免疫療法法に加え、進行腎細胞がんの1次治療ではTKI単剤療法が行われることもある。主に低リスクの場合だ。

「進行腎細胞がんの1次治療は複合免疫療法が中心ですが、低リスクの場合は、複合免疫療法でもTKI単剤でも、治療成績にそれほどの差は出ません。ただ、ICIは2週間に1回の点滴で投与するので、そのための通院が必要になります。その点、TKIは内服なので、TKI単剤ならたびたび通院しなくてよいというメリットがあるのです」(植村さん)

以上が現在行われている治療である。

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