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腺がんで威力を発揮、局所進行がんの根治をめざす 子宮頸がんの重粒子線治療

監修●若月 優 量子科学技術研究開発機構QST病院治療診断部部長
取材・文●黒木 要
発行:2021年7月
更新:2021年7月

  

「子宮頸がんでも重粒子線の保険適用を申請しているので、2022年の改定で認められることを期待しています」と語る若月優さん

放射線治療は子宮頸がんの約70%を占める扁平上皮がんに効きやすいこともあり、子宮頸がんの根治をめざす治療法として近年、ますますウエイトが増している。また、局所進行がんには、放射線と化学療法を組み合わせる化学放射線療法が標準治療となっている。

それに加え、放射線の一種である重粒子線による治療が子宮頸がんに対する先進医療として行われており、極めて良好な治療成績をあげている。そこで最新の、重粒子線子による子宮頸がん治療について、量子科学技術研究開発機構QST病院の治療診断部部長、若月優さんに話を伺った。

子宮頸がんに放射線治療が好成績な理由

子宮頸がんの根治的な治療法は、手術と放射線治療である。進行してがんが広がっている場合は、放射線と化学療法を併用するケースが多い。

放射線治療が、子宮頸がんにおいて手術と同等の効果を発揮するのには理由がある。

「子宮頸がんのほとんどは、ヒトパピローマウイルス(HPV)の感染が原因です。HPV感染によって起こるがんは、ほかに中咽頭がん、舌がん、肛門がん、陰茎がんなどがありますが、放射線治療が効きやすいという特徴があります。

また、放射線に化学療法を併用する化学放射線治療が有効なのは、局所に留まっているがんを放射線で叩き、子宮を超えて広がっている微小ながん細胞を抗がん薬で叩いて転移を防ぐ、この双方の効果が合わさるからです。それに加えて、抗がん薬によってがん細胞の放射線に対する感受性が高まり、放射線がより効きやすくなるという効果もあります」と、QST病院(旧放医研)治療診断部部長の若月優さんは言う。

子宮頸がん治療の選択は、FIGO(国際産科婦人科連合)の臨床病期分類を基に、がん細胞の組織型(扁平上皮がんと腺がんに大きく分けられる)、年齢、がん以外の合併症の有無などを考慮して決める。

腫瘍が子宮内に留まっているⅠ期と、子宮を超えて隣接する膣や傍子宮結合組織に浸潤するⅡ期で、腫瘍が小さい場合は、手術ないし通常の放射線治療が標準治療となる。

通常の外照射に続いて、密封小線源と呼ばれる放射性物質を病巣の近くや膣に留置して、体内から放射線を照射する腔内照射(小線源治療)が行われるようになり、扁平上皮がんには高い効果を上げている。

Ⅱ期でも腫瘍が比較的大きな場合、そして腫瘍の浸潤(しんじゅん)が子宮を超えて膣の下方や骨盤の壁にまで及んでいるⅢ期、さらに進行して腫瘍が膀胱や直腸にまで進展しているⅣA期の局所進行がんになると、化学放射線治療が標準治療となる。

ただしⅡ~ⅣA期の中でも、腫瘍が5~6cmよりも大きい場合、とくに子宮頸がんの約20%を占める腺がんは、通常の放射線治療が効きにくく、進行して手術ができない場合は、これまでいい成績が得られていなかった。

また組織型を問わず、大きな腫瘍やいびつな形に拡がる子宮頸がんには、線源を留置するだけの方法では充分な効果が得られないこともある。そこで、小線源療法と外照射を組合せるのが標準治療となっている。化学療法も同時に行うようになった。

■子宮頸がんの発生場所および病期分類

「そういった状況の中で、先進医療として実施されている子宮頸がんの重粒子線治療で、6cmを超える子宮頸部扁平上皮がんに対して5年局所制御率70%と非常に良好な成績が示され、進行子宮頸がんに対する重粒子線治療が注目されるようになったのです」(若月さん)

重粒子線治療の特徴とは

■放射線と重粒子線の照射の模式図

粒子線治療の特長は、ブラッグピークと呼ばれる線量集中性を活用することにあります

重粒子線は放射線の一種で、放射線は電磁波と粒子線に大別できる。電磁波はX線やガンマ線、粒子線には重粒子線や陽子線、中性子線などがある。

X線治療は体の表面近くの浅い部分でエネルギーがもっとも大きく、体中を進むにしたがって次第に弱まっていくため、体の深い部分にあるがんに照射するには線量を多く当てる必要があるが、その分、副作用のリスクが高まるという難点がある。

一方、重粒子線は体の浅い所では線量が低く、一定の深さに達すると高くなるピークがあり、それをすぎると線量がゼロになる特性がある。そのためピークになる深さをがん病巣の位置にピタリと合わせることで、がんだけを集中的に狙い撃ちすることができるのだ。

「重粒子線治療は、大きく分けて2つの特徴があります。1つは、ピンポイント照射。もう1つは、どれだけがん細胞を死滅させるかという〝生物学的効果〟で、重粒子線はX線の2~3倍高いといわれています。つまり同じ線量を当てても、よりがん細胞を効果的に倒せるのです」(若月さん)

化学療法の併用がなければ、仕事や日常生活を続けながら外来での治療も可能だ。痛みがなく、体力のない高齢者にもやさしい治療といえる。

重粒子線治療の適応になるのは、がんが子宮を超えて拡がっているII期以上で、遠隔転移がない患者さんだ。扁平上皮がんであれば、がんの大きさが6cm以上。腺がんであれば、Ⅱ期以上で、転移がないことだが、がんの大きさによる制約はない。ただし組織型を問わず、手術や放射線治療を受けたことがないことが条件である。

まとめると、①組織学的に扁平上皮がん、腺がんと診断されている、②FIGO分類で臨床病期がⅡ~ⅣA期である、③子宮頸がんに対し、手術、放射線、化学療法の治療歴がない、の3項目になる。

「扁平上皮がんで4㎝以内なら、普通の放射線治療で90%以上の成績です。治るのであれば普通の放射線治療で充分なのです。それを重粒子線治療で治療することは、オーバートリートメント(過剰治療)になります。また、手術や放射線治療を受けたことがないことが条件であるため、婦人科の医師が重粒子線治療をどこまで理解してもらえているかも重要なポイントになります」と若月さん。

すでに保険適用のがん種も

現在は、子宮頸がんに対する重粒子線治療は「先進医療」として行われている。先進医療とは、厚生労働省が定める制度で平成16年に制定された。高度な医療技術や治療法のなかで、公的医療保険の適用には至らなかったものの有望なものを認定して、将来的に保険適用に値するかを見る場としての意味がある。費用は先進医療の部分は実費、診察・検査・投薬・入院料などは保険診療でまかなわれる混合診療になる。

先進医療として行われているがんは、子宮頸がんのほかには、食道がん、非小細胞肺がん、膵がん、腎細胞がん、肝細胞がん、管内胆管がん、大腸がん、乳がん、婦人科領域のメラノーマ、転移性腫瘍(肺・肝・リンパ節)である。

なお、頭頸部がん、頭蓋底腫瘍、眼球腫瘍、骨軟部肉腫は、すでに保険適用になっている。

■QST病院の重粒子線治療室

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