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長い停滞を乗り越えて次々と新薬登場! 内臓転移でも選択肢が増えたメラノーマ

監修●吉野公二 がん・感染症センター都立駒込病院皮膚腫瘍科部長
取材・文●黒木 要
発行:2021年6月
更新:2021年6月

  

「自己検診になる皮膚がんは、初めは痛みもかゆみもないが、見ていて不安に思うのなら専門医に診てもらったほうがいい」と語る
吉野公二さん

皮膚がんは、当初はほくろや皮膚炎などと見間違うことも多く、市販の薬で処置したりほっておく人も多い。皮膚がんのなかでも悪性度が高いメラノーマ(悪性黒色腫)は、早期であれば手術だけで完治するが、病気の進行が早いため、診断を受けたときにはすでに転移を起こしていることもある。その場合、薬物療法に大きな効果が望めない時代が長く続いた。そこに、今では様々ながん種で使われるようになった免疫チェックポイント阻害薬オプジーボがメラノーマに初登場した。2014年のことである。

その後も、新しい分子標的薬などが承認され、治療選択肢が着実に広がっている。今回は主にメラノーマの最新療法についてがん・感染症センター都立駒込病院皮膚腫瘍科部長の吉野公二さんに伺った。

日本人でも増えてきたメラノーマ

「皮膚がん」は、皮膚にできるがんの総称で、表皮のなかのどの細胞から発生したかによって、「基底(きてい)細胞がん」「有棘(ゆうきょく)細胞がん」「メラノーマ」「血管肉腫」「乳房外パジェット病」などに分かれる。そのなかで基底細胞がんと有棘細胞がん患者数は多いが、ここでは治療が大きく進展したメラノーマをメインに取り上げる(図1)。

〝ほくろのがん〟ともいわれるメラノーマは、皮膚のメラニン色素を作る色素細胞ががん化したもの。非常に悪性度の高いがんで、メラノーマが疑われる異常を見つけたらすぐ受診することが大事だ。最近は、日本人の患者数も増えていて、若い人の発症が多いのが特徴(表2)。

治療は、手術で切除することが基本で、切除できれば予後も良好である。遠隔転移(内臓への転移)が起こっているⅣ期の根治切除不能進行がんでは、薬物療法が中心となる。しかし、使える薬剤は抗がん薬のダカルバジン(一般名も)とインターフェロンβのみで、ダカルバジンの奏効率は5~20%。このような閉塞状態が2014年まで、約30数年間続いていた。

30数年ぶりに新規薬剤が登場

「根治切除不能進行メラノーマの治療状況を一変させた画期的な薬が、免疫チェックポイント阻害薬と分子標的薬です。日本では免疫チェックポイント阻害薬のオプジーボ(一般名ニボルマブ)が2014年に承認されました」と、がん・感染症センター都立駒込病院皮膚腫瘍科部長の吉野公二さん。

治療状況を一変させた免疫チェックポイント阻害薬とは、がん細胞がヒトの免疫攻撃から逃れるために、その免疫機構にブレーキをかける作用を解除して、免疫が本来のがん攻撃力を発揮できるようにする薬。オプジーボに次いでヤーボイ(一般名イピリムマブ)が2015年に承認された。

オプジーボは抗PD-1抗体薬、ヤーボイは抗CTLA-4抗体で、結合を阻害する場所は違うが、免疫機構にかかっているブレーキを解除させる点では同じである。

なお、オプジーボと同じ抗PD-1抗体薬キイトルーダ(一般名ペムブロリズマブ)が2016年承認されている。

もう1つの新しい分子標的薬とは、細胞の増殖に関わっているBRAF(ビーラフ)という遺伝子に働きかける薬である。BRAF遺伝子に変異が多く発現していると、がん細胞増殖のシグナルを発してがん細胞が際限なく増えてしまう。この異常シグナルを発するBRAF遺伝子を標的として、がん細胞の増殖を抑える分子標的薬がBRAF阻害薬である。

BRAF遺伝子に変異を有するのは欧米人で6割、日本人は3割ほど。事前に遺伝子検査をしてBRAF遺伝子変異の有無を調べ、陽性であればこの薬剤を使うことができる。

BRAF阻害薬であるゼルボラフ(一般名ベムラフェニブ)が2014年に、タフィンラー(同ダブラフェニブ)が2018年に使用できるようになった。BRAF阻害薬単剤ではなく同じ分子標的薬のMEK阻害薬メキニスト(一般名トラメチニブ)と併用する。また、2019年には同じ作用を有するビラフトビ(一般名エンコラフェニブ)、メクトビ(同ビニメチニブ)も使えるようになった(図3)。

免疫チェックポイント阻害薬と分子標的薬の効果

この2つの新しい機序の薬剤によって治療成績はどう変わったのだろうか?

メラノーマの唯一の治療薬だったダカルバジンとゼルボラフを比べた海外の第Ⅲ相試験「BRIM-3」では、ゼルボラフはダカルバジンと比較して死亡リスクは63%、死亡または増悪リクスは74%低下した。

「2014年秋までは、ダカルバジンの次に打つ手はありませんでした。今はこれらの薬が控えており、2次、3次療法にも困りません。またこれらの薬剤を組み合わせる併用療法もあり、治療状況は一変しました」と吉野さん(表4)。

これらの新規薬剤はどのように使い分けられるのか? 重要なポイントを見て行こう。

まず免疫チェックポイント3剤の使い分けだ。

「オプジーボ、キイトルーダをそれぞれ単剤として使うか、オプジーボとヤーボイの併用療法かという情勢になっています」(吉野さん)

単剤として使う場合、治療成績が気になるところだが、オプジーボ単剤、ヤーボイ単剤、2剤併用を1対1対1で比較する海外第Ⅲ相試験「CheckMate 067試験」の結果、全生存期間中央値は2剤併用群で未到達、オプジーボ単剤群37.6カ月、ヤーボイ単剤群19.9カ月だった。

ではオプジーボとキイトルーダの治療成績はどうか?

どちらも抗PD-1抗体で作用機序は同じということで、両者を直接比較した臨床試験はない。

「2つの薬剤は投与スケジュールの違いがあり、オプジーボは2週か4週ごと、キイトルーダは3週か6週ごとになります。地方では、通院に片道2~3時間かかるようなことは珍しくなく、通院回数が少ないほうが患者さんの負担が少ない。そのような場合、キイトルーダを選ぶなど、患者さんの都合で使い分けています」と吉野さん。

医療費も選ぶ際の目安となる。2~4週間隔と3~6週間隔で治療を受けるとすると、年間の治療回数にも差が出て、医療費の負担額も違ってくる。

「免疫チェックポイント阻害薬はご存知のように薬価は高く、高額療養費制度の適用になるとしても医療費は負担になります。治療回数は、少ないほうがいいという患者さんは少なくありません」(症例画像)

次に分子標的薬BRAF阻害薬の使い方だ。

BRAF陽性の場合、BRAF阻害薬+MEK阻害薬併用療法ならびに免疫チェックポイント阻害薬のいずれも使用できる。

「BRAF阻害薬は効果が速やかに現れ、よく効くのですが、その効果は持続しないことがありました。また、約19%に有棘細胞がんができるというリスクが当初はありました。これらを克服するために、MEK阻害薬との併用が使用条件に加わりました。

効果の持続性や新たな皮膚がん発症リスクは少なくなっているものの、なくなったわけではなく、BRAF阻害薬の単独療法から併用療法に変わりました。薬剤の使い分けに重要なのは、病状が安定しているかどうかです。すなわち転移臓器が1~2個と少ないこと。またメラノーマの予後指標の1つであるLDH(血清乳酸脱水素酵素)の値が正常であること。日常生活を送る上での全身状態を表すPS(パフォーマンスステータス/1~4)が1~2と良好であること。このような患者さんには、免疫チェックポイント阻害薬を先に使うように勧めています。

それらの要件を満たしていない患者さんには、BRAF阻害薬による治療を先行すると当初は言っていたのですが、実際はそう単純ではなく、BRAF陽性であっても、免疫チェックポイント阻害薬を最初に使ったほうが治療成績は良いという報告が出てきています」と吉野さん。

いずれにせよ、「免疫チェックポイント阻害薬と分子標的薬を使用する場合、薬剤の特性と人種による病型の特性があり、それらを含めて総合的に判断して、最初の薬物治療の切り替え時を判断する必要があります」と吉野さんはいう。

例えば、免疫チェックポイント阻害薬は効果が現れるまで3カ月ほどかかるが、劇的に効く患者さんもいる。また、免疫チェックポイント阻害薬は投与を中止してもその効果が持続する。反面、間質性肺炎や肝障害などの主な副作用以外にも、下垂体機能低下や副腎機能低下、糖尿病などの副作用があることも明らかになっている。

また、日本人のメラノーマは、足の裏や手足の爪に発症する末端黒子型(まったんこくしがた)が多く、欧米人に多い表在拡大型に比べて、免疫チェックポイント阻害薬が効きにくいという。

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