• rate
  • rate
  • rate

進行別 がん標準治療
手術療法が中心だが、第2の選択肢の可能性も

監修:斎田俊明 信州大学皮膚科教授
取材・文:祢津加奈子 医療ジャーナリスト
発行:2005年5月
更新:2013年9月

  
斎田俊明さん
信州大学教授の斎田俊明さん

皮膚がんの中でももっとも悪性度の高いメラノーマ。日本人では足の裏にできることが多く、いっぽう欧米人では、背中や腕、大腿部や足の脛にみられるといいます。
紫外線との関係や、足への刺激などがその原因としてとりざたされていますが、じつのところ、はっきりしたことはわかっていません。

ただ、初期診断を見誤ると命取りにもなりかねない、専門医が少ない、手術療法が中心に行われていることだけは確かです。メラノーマを中心とした皮膚がんの標準治療を見てみましょう。

皮膚がんの一番大きな危険因子は紫外線

最近、オゾン層の破壊によって地上に降り注ぐ紫外線の増加が指摘されていますが、そこで危惧されているのが、皮膚がんの増加です。

信州大学皮膚科教授の斎田俊明さんによると「正確な統計がないので、紫外線の増加がどの程度皮膚がんの発生に反映されているかは不明です。しかし、メラノーマ(悪性黒色腫)による死亡者は明らかに増えています。我々が行った全国アンケート調査ではメラノーマとともに、有棘細胞がん、基底細胞がんも増えています」と言います。

皮膚は、表皮、真皮、皮下組織という3つの組織から構成され、表皮はさらに上から角層、顆粒層、有棘層、基底層という4つの層からなっています。

その下にある真皮には血管や神経が走り、髪の毛を作る毛包や皮脂を分泌する皮脂線、汗を分泌する汗腺などがあります。こうした皮膚組織に発生する悪性腫瘍が皮膚がんです。

しかし、皮膚がんと一口にいっても、多種類のがんがあり(下図参照)、その性質も異なります。

「皮膚は、直接外部と接しているのでさまざまな発がん因子にさらされています」と斎田さん。しかし、その中で一番大きな危険因子が紫外線なのです。

したがって、皮膚がんは一般的に、日光に暴露される部位に好発し、高齢になるほど多くなります。つまり、高齢者の頭頸部や手の甲に発症することが多いのです。

[皮膚の構造]
皮膚の構造
皮膚は、表皮、真皮、皮下組織から成る。表皮は主に角化組織から成
るが、メラノサイトなど、種類の異なる細胞も少し存在する。角化細
胞は有棘細胞、顆粒細胞と形を変え(角化)、外側へ押し出される。

紫外線が強い地域の、ブルーアイ、ブロンドヘアの白人に多い

男女差はほとんどありませんが、人種によって発生頻度に大きな違いがあるのも皮膚がんの特徴です。たとえば、皮膚がんの中でも最も悪性度の高いメラノーマの場合、日本人の発生数は、年間10万人に1.5~2人の割合です。ところが、欧米の白人では皮膚がんは最も多いがんの1つで、メラノーマの発生率は10万人に15~20人と1桁違うのです。とくに、紫外線の強い地域に住む白人に発症が多いことが知られています。赤道に近いオーストラリア北部のクイーンズランド州は、世界一メラノーマの発症が多い地域です。ここでは年間10万人につき40~50人がメラノーマになります。

「紫外線が強い上、この地域は白人の中でもケルト系で色素が少なく、ブルーアイにブロンドの人が多いのが原因」と斎田さんは指摘しています。メラノサイトで作られる色素、メラニンは、紫外線をブロックして皮膚の細胞を紫外線の害から守る働きをしています。この色素が少ない白人は、皮膚がんになりやすいのです。日本人でも、色白の人のほうが皮膚がんのリスクは高く、逆に黒人には皮膚がんはめったに生じません。

「日本人に皮膚がんが増加しているのも、1つには戦後皮膚を日光にさらす機会が増えたことが、反映しているのでしょう」と斎田さんは語っています。

悪性度の高いメラノーマにも、画期的な検査法が誕生

皮膚がんには多くの種類がありますが、代表的なものが、有棘細胞がん、基底細胞がん、メラノーマです。

「一番多いのは基底細胞がんとされていますが、日光角化症、ボーエン(Bowen)病は、有棘細胞がんの初期病変と考えられます。そう考えると、有棘細胞がんが一番多いことになる」(斎田さん)

そして最近日本人にも増えているのが、乳房外パジェット病です(下図参照)。

これらのがんは、同じ皮膚がんでもかなり性格が異なります。一番悪性度の高いメラノーマは、ごく小さいうちからリンパ管や血管にのって全身どこにでも転移します。がん全体の中でも悪性度が高いがんです。これに対して、有棘細胞がんはリンパ管の流れを介して転移することが多いのですが、それほど早い時期から転移することはありません。一方、基底細胞がんは、転移をしません。転移しないのに、なぜ「がん」と呼ぶか。「局所で際限なく増殖し、浸潤して大きくなっていくからです」と斎田さん。とくに、このがんは顔に好発するため、目や鼻、時には骨まで破壊していくことになります。命には関わらなくても、組織を破壊するという意味で、怖いがんなのです。

皮膚がんの治療は、手術による摘出と抗がん剤治療、放射線治療が中心です。手術でとれるのなら手術するのが標準ですが、抗がん剤治療はまだ十分な効果を上げているとは言えない段階です。とくに、メラノーマでは手術で摘出できる段階で発見することが、一番の方法です。しかし、一方でメラノーマでは早期の診断に画期的な検査法が誕生し、またリンパ節転移の有無をみる「センチネルリンパ節生検」が普及し、無駄なリンパ節郭清を省くことができるようになるなど、大きな進歩があります。

[皮膚がんの種類と分類]
皮膚がんの種類と分類
[主な皮膚がんの発生頻度]
主な皮膚がんの発生頻度


同じカテゴリーの最新記事

  • 会員ログイン
  • 新規会員登録

全記事サーチ   

キーワード
記事カテゴリー
  

注目の記事一覧

がんサポート11月 掲載記事更新!