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治療歴を問わずオプジーボの有効性が認められた 原発不明がんの治療薬が世界に先駆け初承認

監修●中川和彦 近畿大学医学部内科学腫瘍内科部門主任教授
取材・文●柄川昭彦
発行:2022年3月
更新:2022年3月

  

「原発不明がんは、どのように治療すべきかの特徴があります。一番重要なのは予後良好か予後不良な原発不明がんかを見分けて治療することです。また、必要な検査に費やす時間は1カ月が限度にすることも大事です」と語る
中川和彦さん

転移巣があるが、原発巣が見つからない原発不明がん。多くは予後不良で、プラチナ併用療法が行われてきたが、実は原発不明がんの治療薬として承認された薬剤は存在しなかった。そうした状況の中、原発不明がんに対する臨床試験が行われ、免疫チェックポイント阻害薬オプジーボの有用性が証明された。

その結果により、2021年12月、オプジーボが原発不明がんに対する治療薬として世界に先駆け日本で承認された。この臨床試験を主導した近畿大学医学部内科学腫瘍内科部門主任教授の中川和彦さんに、原発不明がんとその治療について解説していただいた。

原発巣の見つからないがんが存在する

がんが発見される場合、必ずしも原発巣から見つかるとは限らない。まず転移巣が見つかり、それから原発巣を探すこともある。ところが転移巣は見つかるが、いくら探しても原発巣が見つからないことがある。このようながんは「原発不明がん」と呼ばれている。

近畿大学医学部腫瘍内科学教室主任教授の中川和彦さんによれば、こうした原発不明がんは、がん全体の1~5%を占めているという。

「発見されたがんが、原発巣なのか転移巣なのかは、画像を見ればすぐわかります。たとえば肺でがんが見つかった場合、それが転移巣なら、だいたい同じ大きさの腫瘍が、肺のいたるところに散在しています。形も辺縁の明瞭で丸いのが特徴です。原発巣の場合は、腺がん、扁平上皮がん、大細胞がん、小細胞がんなどの種類がありますが、それぞれ特徴的な形をしています。たとえば腺がんなら、周囲の組織を巻き込みながら増殖していくので、丸くならずギザギザした形になり、転移がんとの違いは一目瞭然です」(中川さん)

転移巣があるなら必ず原発巣があるはずだが、原発巣が見つからないということがどうして起きるのだろうか。

それについては、明確なことはわかっていないという。

「一般的には、どこかに原発巣ができ、早い段階で遠隔転移、もしくはリンパ管に転移が起きた後に、何らかの理由で原発巣が消退したのではないかと考えられています」(中川さん)

がんの原発巣では、がん細胞がどんどん増殖しているが、同時にがん細胞の死も起きている。増殖するほうが多いので腫瘍は大きくなっていくが、がん細胞の増殖と死滅は同時に起きているのだ。そのバランスが崩れることで、原発巣が消えてしまうことがあるのではないか、と考えられているのである(図1)。

予後良好タイプは原発巣を推定して治療する

原発不明がんは、「予後良好タイプ」と「予後不良タイプ」に分けることができる。予後良好タイプが15~20%程度を占め、残りが予後不良タイプだという。

「予後良好に分類されるのは、原発巣がある程度推定できるような原発不明がんです。たとえば患者さんが女性で、腋窩(えきか)リンパ節にだけ転移巣があって、組織を採取して調べると腺がんだったという場合、たとえ原発巣が見つかっていなくても、乳がんが転移したものだと推定できます。乳がんは治療効果が高いですから、このような原発不明がんが予後良好タイプで、この場合なら乳がんに準じて治療を行うことが推奨されています。他に転移がなければ腋窩リンパ節を手術で切除し、ホルモン受容体やHER2を調べ、その結果に応じた治療を行っていくことになります」(中川さん)(図2)

代表的な予後良好例を挙げておこう。

患者さんが女性で、腹膜にがんが広がっていて、組織を調べると腺がんで、腫瘍マーカーのCA‐125が高くなっている。この場合、原発巣は卵巣がんと推定されるので、卵巣がんに準じた治療を行うことになる。

患者さんが男性で、腫瘍マーカーのPSAが上昇していて、造骨性の骨転移がある。しかし、前立腺を調べてもがんが見つからない。この場合、前立腺がんが推定されるので、前立腺がんに準じた治療を行う。

首のリンパ節転移しかなく、組織を調べると扁平上皮がんだった。このケースで考えられるのは、おそらく頭頸部がんだろうということである。頭頸部がんはできるだけ局所治療を優先することが推奨されているので、リンパ節を手術で切除するか、それができない場合には放射線治療を行うことになる。

「予後良好タイプの原発不明がんは、推定される原発がんに準じた治療を行うことで、比較的良好な治療結果が得られます。前に挙げた腋窩リンパ節だけの原発不明がんなどは、治る可能性も高いといえます。そのため、原発不明がんの治療では、予後良好か予後不良かを早く見分け、予後良好だった場合には、それに応じたしかるべき治療を行うことが必要です」(中川さん)

原発巣が見つからないと、検査などで時間を費やしてしまいがちだが、原発巣探索に費やしていいのは1カ月まで、ガイドラインにも記載されている。原発巣が見つからず、原発不明がんが疑われる場合には、原発不明がんを多く扱っている病院に紹介してもらう必要があるという。原発不明がんを扱う診療科は腫瘍内科である。

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