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マニュアルではない対話力でサポート

院内連携で心の問題を解決する 看護師の役割とは

監修●川名典子 杏林大学医学部付属病院リエゾン精神看護師
取材・文●「がんサポート」編集部
発行:2015年1月
更新:2015年3月

  

「看護師には対話力を身に付けてほしい」と語る精神看護専門看護師の川名典子さん

がん患者さんが抱える心理的負担は大きい。がん罹患で人生が変わってしまったという焦り、この先どんな治療をするのか、それによって普段の生活がどう変わるのかも見えない不安――。
このような心理的背景にある患者さんへの対応には、配慮が必要だ。看護師を中心とした院内での対応の現状と課題を聞いた。

患者さんへの対応は 心理的背景を踏まえて行う

杏林大学医学部付属病院には、リエゾン精神看護師として院内で起こる精神的な問題への対処に各部門をつなぐ専門家がいる。精神看護専門看護師(日本看護協会認定)の川名典子さんだ。川名さんは指摘する。

「患者さんの表面的な言動だけで判断しては、対応を誤ってしまいます。例えば、化学療法の副作用が怖いから受けたくないという患者さんは、『怖い、怖い』と話しながらも、『治療のためには化学療法を受けたい』という気持ちも同時にもつことが珍しくありません。院内では患者さんのそのような心理的・精神的事情を踏まえて、コミュニケーションをしっかりと図り、患者さんの本当の希望に適切に対処する体制が大切なのです」

精神的ストレスの段階と 段階別の対応

精神的ストレスの負担は多岐にわたる。川名さんは、患者さんの心理的負担の度合いとケア提供者からの対応について、NHS-NICEという分類を参照し、4段階を示す。同院内で採られるメンタルケア(心のケア)の対応基準もこれに準じている。

第1段階は、すべての医療者が提供すべきもので、医療側の役割は患者さんに心理的ニーズがあることを理解し、情報を提供することにある。

「がんが判明してショックを受けている患者さんの心のケアの大部分を受け持つのが、外来や病棟の看護師です。まず、患者さんとコミュニケーションが取れることが大切です。世間話から始まってもいいですが、その中で『治療を受けたくない』という声が出てきたら、『何か嫌な体験があるのですか?』などと聞いていくと、見えてくる問題もあります。宗教や家庭環境などのその人の背景も見据えるようにして、患者さんが本当に必要としている情報を提供します。実は、がん患者さんへの対応では、この第1段階こそが大事なのです」

表1 がん患者さんが必要とする情報提供の例

(川名典子:杏林会医誌、44巻2号、2013)杏林大学医学部付属病院がんセンターによる患者・家族向け講座「がんと共にすこやかに生きる」では、このような情報が提供される

この段階での心の問題は、患者さんとの会話を通じて、患者さんの状況に適した有効な情報が与えられると、解消されることが多いからだ。この情報提供の窓口として、例えば食事や退院後の状況など、日ごろから生活の情報提供を行っている看護師が適任だという(表1)。

第2段階は、心理的知識を持つ医療者によって提供される。「がんの告知を受けたときは冷静だったのに、化学療法の説明を受けた後から不安が募り、本人も驚くほどいらいらするようになった」というようなケースだ。第1段階では患者さんと日ごろ接する看護師らがその場で対応するのがほとんどだが、第2段階以降になると、専門部署や院内チームで対処する。そのルートは何本も張り巡らされている(図2)。

図2 がん患者さんの心の問題に対応する院内連携

「対応するのは、緩和ケアチームや、不安や心理反応に対する知識を持ちトレーニングを受けたがん看護専門看護師やその他のがん関連の認定看護師です。そのほか、ソーシャルワーカーなどが含まれます」

この段階では、がんの再発や転移の告知後や化学療法撤退時といった危機的な状況を念頭に置かなければならない。

NHS-NICE=英国 National Health Seivice-National Institute for Clinican Excellence

ストレス対処法の支援と 精神科対応へのスクリーニング

第3段階は、訓練を受けた心理士や川名さんのようなリエゾン精神看護師などの精神保健専門家レベルの医療者によるもので、軽度から中等度の不安や抑うつ、怒りなどに対応する。

「コミュニケーションが難しい人や、抑うつ、焦燥感などの精神症状が現れている人、対人関係が難しくなり、人を寄せ付けないといった精神疾患がある人です。依頼は、主治医や病棟から直接来ることもあるし、病棟−主治医経由や緩和ケアチーム経由の場合もあります」

川名さんが行うのは、主にストレス対策と対話法だ。「ストレス対策では、患者さんの自分自身でストレスに対処する力を身に付けてもらえるように支援します。主に取り入れるのは、自律訓練法というリラクゼーションの1手法です。ストレスからくる自律神経の緊張状態を解く方法で、数回実践して患者さんが身に付けると、自宅でも行えて心身の疲れを取ることができます」

精神的な不安定さから交感神経が過度に緊張すると、体のコリにつながる。体をほぐし情緒の安定を図るケアも行う。マッサージや指圧をしたり、入院中に眠れないという訴えのある方には漸進的筋弛緩法を指導することもある。

継続的なケアが必要だと判断したケースでは、患者さんの許可を得た上で、病棟看護師らと情報を共有し、継続的な患者ケアに活かす。このほか、川名さんは精神科治療の必要性についてスクリーニングを行い、精神科治療の必要な場合は、精神科コンサルタントの介入を助言する。

第4段階は精神科医や高度の臨床心理学者によるもので、重度のうつ病やせん妄、器質脳障害、不安障害、人格障害などが対象となる。精神医学的診断の上、精神疾患として治療される。

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