国立がん研究センター理事長インタビュー がん医療の総帥に聞く!

新しい薬・適応外の治療をもっと早く、患者さんのもとへ
「がんとともに生きる社会」を一緒に創りましょう!

取材:がんサポート編集部
構成:吉田燿子
発行:2012年2月
更新:2013年5月

  

堀田知光さん(ほった ともみつ)
国立がん研究センター理事長・総長
1944年生まれ。名古屋大学医学部卒業。1970年名古屋大学医学部第一内科入局。1996年東海大学医学部内科学教授を経て、2000年東海大学医学部付属病院副院長、2002年東海大学医学部長。東海大学総合医学研究所長(兼務)。2006年独立行政法人国立病院機構名古屋医療センター院長。2012年4月独立行政法人国立がん研究センター理事長に就任。専門は血液内科。悪性リンパ腫などの血液がんの治療に力を注いできた。

国立がん研究センターは、がん治療の実践を通して得た知見をもとに、国内のがん医療とがん研究の今後を、国などとの連携のもとで推進する中心的施設だ。ここではいま、がん治療に臨む患者が求めていることをどのように捉え、何を目指しているのか。同センター理事長の堀田知光さんに聞いた。

新生がん研究センターの初代理事長の大改革

――2010年4月、旧国立がん研究センターは、「独立行政法人国立がん研究センター」として再出発しました。堀田さんは昨年4月に、2代目の理事長に就任されたわけです。

初代理事長の嘉山孝正さんは、「がんセンターが“がん難民”を作ってきた」と公言し、「患者志向」を掲げ、「がん相談対話外来」の設置や総合内科の創設、レジデントの処遇改善などの新機軸を打ち出し推進してきました。前理事長の仕事をどのように評価されていますか。

堀田 以前の国立がん研究センターについて、「再発患者は診てくれない」「合併症があると治療してくれない」などのマイナス評価があったことは事実です。しかし、“がん難民”が生まれた理由は、それだけではありません。最大の問題は、「がん医療に関する正しい情報が患者さんに届かない」という点にあったのです。

こうした流れを変えるきっかけとなったのが、2007年の「がん対策基本法」の施行と「がん対策推進基本計画」の策定でした。これを機に、全国でがん診療連携拠点病院が整備され、がん医療にかかわる情報の普及も進みました。2010年には国立がん研究センターが独立行政法人化され、嘉山さんは国の所管下で作られた古い仕組みを変えるべく、次々に改革を行ったのです。

掲げる目標は同じアプローチが異なる

多くは必要な改革でした。しかし、急激な改革は弊害ももたらしました。たとえば、国から距離を置きすぎて、厚生労働省との人事交流が一切なくなったことも、その1つです。しかし、がん対策に本気で取り組むには、国とがん研究センターが一体となって対策を進める必要がある。そこには、ある程度の人事交流も必要です。それはけっして「国の言いなりになる」ということではありません。今は、効果的ながん対策の実施に向けて、厚生労働省との適切な関係作りを模索しているところです。

――具体的に、どのような点を変えようとしているのですか。

堀田 嘉山さんは「世界トップ10のがん研究・医療機関を目指す」という目標を掲げ、がん研究センターが日本のがん医療の中核となることを明言しました。その思いは私も変わりません。

ただし、それを実現するためのアプローチについては、少し違いがあるかもしれません。嘉山さんは、組織改革で中間組織を取り払うことにより、現場からダイレクトに要望や意見を吸い上げ、直接指示できる仕組みを作りました。これには、「現場の声が直接トップに届く」というプラス面もありましたが、大きな組織の隅々まで目を配ることは難しい。また、現場との間に入って要望を練り上げる組織がなかったので、現場からは、「生煮え」の要望が直接上がってくる。その結果、各部署の要望が、互いに齟齬をきたすことも少なくなかった。今はそれを修復・整理しながら、うまく定着するように調整しているところです。

「新薬開発」「治療エビデンス」「情報の提供」が3つの柱

■図1 早期・探索臨床研究センターでの研究

2013_02_09_021
(「新たな治験活性化5カ年計画の中間見直しに関する検討会報告」より改編)

――国立がん研究センターは「世界最高の医療と研究を行う」「患者視線で政策立案を行う」という2つの理念を掲げています。この理念にもとづき、どのような取り組みを進めていくお考えですか。

堀田 3つの柱からなる具体的な目標に向かって取り組んでいます。1つ目は、がん研究センターの使命である「高度先駆的な医療の開発」です。2011年8月、新薬の臨床開発を推進するために厚生労働省が公募した早期・探索的臨床試験の拠点に当センターが選ばれ、新たに「早期・探索臨床研究センター」を創設しました。これは、新しいがん治療薬を人間に投与する「フェーズⅠ試験」など、初期の臨床研究を行うことを目的としたセンターです(図1)。

2つ目は、「がん医療の均てん化への貢献」です。現在、がん治療の臨床試験は、大小さまざまな臨床研究グループが行っていますが、必ずしも連携が取れているわけではありません。今後は、各グループが連携して効率のよい臨床研究を行えるよう、当センターのがん研究開発費研究班を基盤としたJCOG(日本臨床腫瘍研究グループ)ががん臨床試験ネットワークの中心的役割を担うようにしたい。それにより、標準治療のエビデンス確立を推進し、がん治療の普及に貢献したいと考えています。

3つ目は、「がんの医療情報を、患者さんや国民にきちんと伝えていく」ということです。これは当センターが中心となって進める仕事であると同時に、国や行政、民間や市民などが一緒になって、オールジャパンで取り組むべき仕事です。近年関心が高まっている就労支援や緩和ケア、小児がんや希少がんなどの医療開発にも注力し、「がんとともに生きる社会」を先導したいと考えています。

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