電子タバコ愛好者の尿中に膀胱がんに関連するバイオマーカーが

[2020.05.26] 文・編集●「がんサポート」編集部

膀胱がんに強い関連性をもついくつかの発がん物質のバイオマーカー(生物指標化合物)が、電子タバコ愛好家の尿中に存在することが、欧州泌尿器科学会(EAU)誌「European Urology Oncology」掲載の研究で明らかになった。

喫煙は膀胱がんの最も重要な危険因子(リスクファクター)とされているが、4年以上の禁煙により、発がんリスクを低減させるとも言われている。このほか、アニリン色素、芳香族アミンなどさまざまな化学物質が発がん原因として知られている。

今回の研究では、電子タバコに含まれる毒性物質の尿路上皮への長期間の曝露がもたらす意味合い(implications)については、現状では不明とのことだが、喫煙と同じように、膀胱がんとの関連性を懸念させるものであるという。これらの知見は、「電子タバコの泌尿器科学的安全性に対する、さらなる研究の必要性を促すものである」と言えそうだ。

電子タバコに関する文献をシステマティックに分析

米ノースカロライナ大学ラインバーガー(Lineberger)総合がんセンターの研究者らは、PRISMA(システマティックレビューおよびメタアナリシスのための優先的報告項目声明)ガイドラインなどに基づいて文献検索を実施。初期検索では、1,385文献を同定し、うち最終的に採用基準にかなった22件が分析対象となった。

全体的には、電子タバコ愛好家の尿中における40の異なる親化物質(親化合物:parent compound)と、4つの金属元素(metal)が記載されていた。それぞれの親化物質はいくつかの異なる経路で代謝されていたが、63の独自の毒性物質、または発がん代謝産物のバイオマーカーが同定された。

非愛好家に比べて尿中バイオマーカーの濃度がより高い

非愛好家を対象とした比較では、電子タバコ愛好家は、膀胱がんに関連するいくつかの発がん物質の尿中バイオマーカーの濃度がより高かった。

今回の知見から、研究者らは「電子タバコを吸う(vape)人は、種類の異なる多くの発がん物質に曝露されていることを示唆するものであり、曝露が長年にわたるケースでは、悪性腫瘍、特に膀胱がんの発がんリスクに晒(さら)されていると考えられる」としている。

研究では正確な評価を妨げる要因も

ただし今回の研究は、愛好者の尿中内の発がん原因となる物質のすべてのレベルを把握していないこと、紙巻タバコ喫煙および電子タバコを愛好するいわゆる ”二重喫煙者” が含まれていること、紙巻タバコ喫煙者が電子タバコ喫煙にスイッチしたケースも存在することなど、リスクを正確に評価する上で限界があった。

このように、研究集団が極めて不均一性(heterogenous)であったことが、尿中に検出される発がん物質が、実際に電子タバコ由来のものなのか、紙巻タバコ由来のものなのかの評価を難しくしていた。

研究者らは、さらなる研究で、特に膀胱がんなどの発症をもたらす発がん物質への曝露の閾値(threshold)を明確化させる必要性のあることを強調。今後、電子タバコ愛好者、紙巻タバコ喫煙者、非愛好家の尿中の発がん物質の評価を行う予定だという。

出典情報:
「European Urology Oncology」March 16, 2020 オンライン掲載
「European Urology Oncology」March 16, 2020 オンライン掲載/PDF

参考情報:
欧州臨床腫瘍学会(ESMO)診療ガイドラインに基づいた患者さん向け情報「膀胱がんの原因は?」(Page 8)

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