新型コロナウイルス感染がん患者では致死率高まる ~米ニューヨーク市でのデータ分析~
[2020.05.07] 文・編集●「がんサポート」編集部
欧州では感染者数がピークを越えたと言われる新型コロナウイルス感染症(COVID-19)。
感染対策の初動を誤ったとされるアメリカでは、依然感染の勢いは止まらない。推定死亡者数も一時は5万人以下とされていたが、段階的な行動規制緩和の影響で、8月上旬までに13万5千人近くに達すると見込まれている。
こうした中で、米ニューヨーク市での新型コロナウイルスに感染したがん患者の動向が、米国癌学会(AACR)誌「Cancer Discovery」に報告された。
悪性腫瘍患者の218例が陽性
がん患者では、悪性腫瘍、治療による免疫抑制、併存症の増加が原因(underlying)となって、新型コロナウイルス感染(COVID-19)による死亡リスクの増大が推定されている。
ニューヨーク市のアルバート・アインシュタイン医科大学傘下のモンテフィオーレ・ヘルスシステム(Montefiore Health system)で治療を受けた患者を対象に、2020年3月18日~4月18日間で、悪性腫瘍と診断された患者のうち218例が、COVID-19陽性であることが確認された。コホート(観察集団)は主に成人患者を対象としており(全体の98.6%)、年齢中央値は69歳(10~92歳)であった。
血液がん、肺がん患者での致死率高い
このうち、新型コロナウイルス感染により死亡したがん患者は61例(28%)で、致死率(case fatality rate : CFR)は、血液がん患者37%(20/54例)、固形がん患者では25%(41/164例)であった。
がん種別では、肺がんが55%(6/11例)と最も多く、次いで消化器がん(大腸がん38%、膵がん67%、上部消化管がん38%)、婦人科がん38%であった。一方、泌尿生殖器がんと乳がんでは低く、それぞれ15%、14%であった。
高齢、併存症などが相関
多変量解析(multivariate analyses)を行った結果、致死率の増加は、高齢、複数の併存症、要ICU(集中治療室)サポート、炎症マーカーでもあるD-ダイマー、LDH(乳酸脱水素酵素)、乳酸(lactate)値の上昇と有意に相関していた。
また、年齢調整による致死率の比較では、非がん患者に対し、特に45~64歳、75歳以上のがん患者で有意な増加がみられた。
治療法との関連性なし
研究者によると、興味深いのは、1年未満の活動性がん、および進行転移性がん患者では、致死率の増加傾向は認められたものの、統計学的な有意差はなく(それぞれp=0.09、p=0.06)、また積極的な化学療法と放射線療法は、致死率の増加とは相関がなかったこと。
免疫療法に関しては、対象となったコホートでの受療者は極めて少なく、死亡との関連性はなかった。
感染を受けやすい患者層での積極的な対応が必要
今回の研究では、解析手段において、いくつかの問題点はあるものの、「これらの分析結果(データ)は、新型コロナウイルスの感染を受けやすい患者層においては、感染機会を減らすことや、早期に感染を識別する手段の改善などの積極的な対策の必要性を示唆している。今や感染の真っただ中にあるニューヨーク市でのデータは、他のヘルスケアシステムやがん患者にとって、非常に役立つものと思われる」と研究者は述べている。