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改善されつつはあるが……未だ遅い薬の承認スピード
決してあきらめないで。未承認薬という選択肢も

取材・文:半沢裕子
発行:2009年10月
更新:2014年1月

  

海外で一般的に使われている薬が日本でなかなか認可されないという「ドラッグ・ラグ」の問題。
この「ドラッグ・ラグ」は一体いつ解消されるのか――。これまでの国の動きを検証する。

世界でも特異な「がん難民」を生み出した「薬の承認問題」

未承認薬とは、海外では有効性が証明され、承認されているにもかかわらず、日本では薬事法で承認されていないため、健康保険のもとでは使えない薬を指す。日本には「もはや打つ手なし」と病院から切り捨てられた「がん難民」が多数生まれ、驚くべき事実として世界に報道されたが、未承認薬問題は「がん難民」を生み出す土壌の1つにも数えられてきた。

日本では薬の承認にたいへん時間がかかるため、世界標準のがん治療薬が多数あるにもかかわらず、患者さんが治療中止に追い込まれてしまうからだ。

承認にいたるこの時間的な格差を「ドラッグ・ラグ」と呼ぶが、「ドラッグ・ラグ」を解消する道は、患者さん自身によって模索され始めた。国内で使用が認められていない=健康保険の枠の外にある薬を、自己負担、自己責任で使う道はないか? 製薬会社の治験に協力するかわり、無償で薬の提供を受けられないか?――そうした模索の結果、確立されてきたのが、薬を個人輸入して使う方法であり、医師の推薦のもと、治験に参加する方法だった。

しかし、治験に参加できる患者さんの数は限られている。したがって、それ以外の患者さんに残された道は、個人輸入によって未承認薬を入手する方法のみとなる。そこに壁として立ちふさがったのが、混合診療の問題だった。

混合診療が認められていない日本の現状

日本では、健康保険による診療(保険診療)と、健康保険の適用されない診療(自由診療)を取り混ぜて行うこと(混合診療)が認められていない。結果として、混合診療を受けると、健康保険による診療にも保険が適用されなくなり、全額自己負担による診療になってしまうのだ。

個人輸入によって未承認薬を取り寄せ、治療に使うのは、一般的にお金のかかる方法だ。加えて、健康保険がきくはずの診療まで全額自己負担になれば、患者さんの経済的負担はとんでもない金額にふくれ上がる。

人道的使用も検討されたが、今なお実現せず

状況の改善を求める患者さんの声は急激に大きくなり、市民運動として盛り上がりを見せる。これを受けて、国も2004年、「専門医の間で効果が認められている薬については、混合診療を認める」とし、同時に、どの薬を承認、あるいは治験の対象とするかを検討する「未承認薬使用問題検討会議」の立ち上げを決定。同会議は05年から今年6月まで、会合を重ねてきた。

その結果、世界標準とされている薬の承認スピードは、少しずつではあるが早まってきたと言えるだろう。

一方、保険診療分は保険診療のまま、自由診療分だけをプラスする混合診療は、今も実現されたとはいいがたい。国(厚生労働省)もさまざまな案を打ち出すものの、実現に結びつかないのが現実のようだ。

たとえば、前出の「未承認薬使用問題検討会議」では、2007年4月前後の会合で、未承認薬のコンパッショネート・ユース(人道的使用)について話し合われ、厚労省も次年度(08年)の導入を検討した。

これは文字通り、ほかに治療法がない場合などに、特例的に未承認薬を使うことを認める制度。欧米ではかなり一般的に行われている措置だが、日本では結局、現在も導入される気配がない。

製薬会社が治験をしない薬に1つの道は開けたが……

また、昨年(08年)4月には、「高度医療評価制度」が誕生し、「混合診療がようやく実現する」と報道された。しかし、実際には、高度医療と認定された場合のみ、混合診療が可能になるなどハードルが高いのが現状。この1年あまりの進行状況について、厚労省の担当課(医政局研究開発振興課)に聞くと、「認定にいたるには2つの検討委員会における合意が必要ですが、今のところ、薬に関しては、1つ目の検討会で『この部分を修正すれば、承認も可』とされたものが、1種類と1ジャンルあるのみです。

本当のところ、薬が承認される最短の道は適切な治験を行い、結果を出すことだと思います。この制度は極言すると、種々の理由で治験が行われない薬や医療技術をすくい上げるのが目的。しかし、そうした薬や技術は、決して数多いとはいえないと思います」

とのことだった。

薬が承認されるには、日本で治験が行われることが必要だが、製薬会社は「承認されれば売れる」と確信できない医薬品の治験はなかなか行わない。他国で有効性が確認された薬でも、日本で治験が行われなければ承認されないから、結局、「売れない薬は承認されない」ということになる。これも、日本で未承認薬がなかなか承認されない理由の1つだった。

こういった問題を解決するため、03年からは医師が主導して治験を行う「医師主導治験」が認められた。だが実際には、1つの治験に1億円もの費用がかかるともいわれ、承認にいたった抗がん剤はない。「高度医療評価制度」がつくられた理由の1つは、まさにこうした事態の打破にあったといえるが、現実には未承認薬の承認にも混合診療問題の解決にも、道を開くものにはなっていないのだ。

公募によってどんな薬が必要とされているか把握

05年に始まった「未承認薬使用問題検討会議」は2009年6月に終了し、厚労省では、早期承認を求める薬についての希望を聞く、パブリック・コメントを募集した(8月17日締切)。担当した厚労省医薬食品局審査管理課では、次のように語る。

「どの病気にどんな薬が求められているか整理をし、秋以降、有識者による会議を開催します。この会議で必要・不必要、優先順位などを検討し、優先順位の高い病気についてのワーキング・グループを設置。各薬剤について検討を行います。希望としては、(申請された医薬品の審査を行う)独立行政法人医薬品医療機器総合機構に申請を出し、1年以内に承認されるようにしたいと考えています」

ドラッグ・ラグの解消については、約800億円の補正予算がつけられるなど、国としても取り組みを強化している。今後の展開に期待をもちたいが、それでも、個人輸入の未承認薬による自由診療は、今すぐ治療を必要とするがんの患者さんにとって、今日なお欠かせない手段といえる。患者さんやご家族は未承認薬の治験などについての情報から目を離さず、必要に応じて未承認薬による治療に踏み切るよう、準備をしておくことが必要かもしれない。そこで引き続き、未承認薬によるがん治療に早くから取り組んできた医師に、「未承認薬による治療の現状」と、患者さんがこの治療を効果的に受ける心構えなどについて、話を聞きたいと思う。

[現在、未承認のがんの薬一覧]

商品名 一般名 企業 開発段階 適応 概要
アフィニトール エベロリムス ノバルティスファーマ 申請(09年1月) 腎細胞がん mTOR阻害剤
ジェムザール 塩酸ゲムシタビン 日本イーライリリー 申請(08年8月) 乳がん
ベクチビックス パニツムマブ 武田薬品 申請(08年6月) 進行・再発の結腸・直腸がん 抗EGFR完全ヒト抗体
アブラキサン アルブミン結合パクリタキセル 大鵬薬品 申請(08年3月) 乳がん
タキソール パクリタキセル ブリストル・マイヤーズ 申請(08年12月) 食道がん
ネスプ ダルベポエチンアルファ 協和発酵キリン 申請(08年11月) がん化学療法後の貧血 第2世代エリスロポエチン
アバスチン ベバシズマブ 中外製薬 申請(08年11月) 非小細胞肺がん ヒト化抗VEGF抗体
ガーダシル 4価ヒトパピローマウイルスワクチン 万有製薬 申請(07年12月) 子宮頸部におけるヒトパピローマウイルス
6、11,16,18型感染予防
ワクチン
サーバリックス 2価ヒトパピローマウイルスワクチン グラクソ・スミスクライン 申請(07年9月) 子宮頸部におけるヒトパピローマウイルス
16,18型感染予防
ワクチン
ミリプラ ミリプラチン 大日本住友製薬 申請(07年8月) 肝細胞がん
タキソール パクリタキセル ブリストル・マイヤーズ 申請(07年6月) 頭頸部がん
イメンドカプセル アプレピタント 小野薬品 申請中 がん化学療法に伴う悪心・嘔吐 NK1拮抗作用
エリテック ラスブリカーゼ サノフィ・アベンティス 申請中 血液がん治療に伴う急性高尿酸血症
アロキシ パロノセトロン 大鵬薬品 申請中 制吐剤
トラマール 塩酸トラマドール 日本新薬 申請中 がん性疼痛
トーリセル テムシロリムス ワイス 申請中 腎細胞がん mTOR阻害剤
トレアンダ/リボムスチン ベンダムスチン シンバイオ製薬 申請準備中 低悪性度非ホジキンリンパ腫、
マントル細胞リンパ腫
アボルブ デュタステリド グラクソ・スミスクライン フェーズ3 前立腺がんの発症抑制 5αリダクターゼ阻害剤
アンサー 結核菌熱水抽出物 ゼリア新薬 フェーズ3追加試験 子宮頸がん 免疫調節作用
ハイカムチン 塩酸ノギテカン 日本化薬 追加臨床試験開始発表
(09年2月)
卵巣がん
※2009年8月19日現在

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