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夢の薬ではない!!
明確な意志を持って未承認薬を使おう

監修:今村貴樹 千葉ポートメディカルクリニック院長
発行:2009年10月
更新:2019年7月

  
今村貴樹さん
千葉ポートメディカル
クリニック院長の
今村貴樹さん

世界で一般的に使われている薬が日本で承認されておらず、保険のもとで使えない――。
未承認薬の問題は、患者さんに立ちふさがっている大きな壁と言えるだろう。しかし、ここであきらめてはいけない。
未承認薬を個人輸入して使う手もあるのだ!

未承認薬だからこそ、エビデンスが大切

写真:千葉ポートメディカルクリニック入り口

現在、千葉ポートメディカルクリニックを訪れるがん患者さんは約50人。なかには、北海道や福岡などから来る人もいるという

「最初に確認しておきたいのは、『未承認薬は基本的に好ましいものではない』ということです。本当はすべての薬が健康保険で使えるべきですが、現状ではドラッグ・ラグに阻まれ、使えない薬がある。それを解消するために未承認薬が必要なわけで、未承認薬やそれを扱う医療機関はいわば、日本の医療制度の鬼っ子ともいえるでしょう」

千葉ポートメディカルクリニック(千葉県千葉市)院長の今村貴樹さんは、このように語り始めた。

今村さんは信州大学医学部を卒業後、千葉健生病院(千葉県千葉市)に約6年間勤務する中で、未承認薬を必要とするがんの患者さんの切実さに打たれ、同時に、「未承認薬だからこそ、エビデンス(科学的根拠)に裏打ちされた、きちんとした医療を行うことが必要」との思いをもつようになる。

そして04年、がん治療薬の世界的な治験状況などの情報を公開すると同時に、患者さんの相談を無料で受けつける「がん患者のあきらめない診療室」をネット上にオープン。翌05年に現在のクリニックを開業し、がんの患者さんに対し、必要に応じて未承認薬を加えた治療を行ってきた。約5年間に提供したセカンドオピニオンは3000件を超え、進行がんの患者さんを中心に、常時50人程度の患者さんを診療している。まさに、未承認薬を使う治療の先駆けの医師と言えよう。

だからこそ、未承認薬を使う場合、米国臨床腫瘍学会(通称ASCO)や欧州臨床腫瘍学会(通称ESMO)など、欧米の主要ながん学会で発表されたデータはもちろん、「ニューイングランド・ジャーナル・オブ・メディシン」「ランセット」など、世界的な学術誌に掲載された論文もできる限りチェックし、エビデンスのある治療を行っている。それでも、「未承認薬の基本的な使い方は、日本国内で標準治療を行い、効果が得られなくなった人に使うべきだと思います」

逆に、ほかに手がない場合は、世界で承認している国がまだない薬でも、第3相臨床試験(比較試験)でいい結果が出ているものは使っていく。欧米では、そうした薬はまず間違いなく承認されるからだ。

主治医と相談して来院。混合診療問題も避けられる

写真:海外から輸入した未承認薬

海外から輸入した未承認薬。 左からヨンデリス、ベクチビックス、アブラキサン他

[千葉ポートメディカルクリニックの未承認薬の輸入状況]

[未承認薬]

商品名 一般名
アブラキサン アルブミン結合パクリタキセル
ベクチビックス パニツムマブ
イグゼンプラ イキサベピロン
ビダザ アザシチジン
ヨンデリス トラベクテジン

[保険適応外で輸入必要]

商品名 一般名
アバスチン ベバシズマブ
タルセバ エルロチニブ
ネクサバール ソラフェニブ
ドキシル ドキソルビシン
アリムタ ペメトレキセド
アービタックス セツキシマブ

[保険適応外だが輸入しなくても使用可]

商品名 一般名
ハーセプチン トラスツズマブ
ダカルバジン ダカルバジン
ゾメタ ゾレドロン酸
エルプラット オキサリプラチン


[未承認薬の使用状況]

がん種 商品名 人数 費用
膵がん、肺がん、乳がん アバスチン 20人 30万
乳がん、膵がん アブラキサン 15人 10万
大腸がん ベクチビックス 5人 40万
乳がん ゾメタ 5人 4万
膵がん タルセバ 5人 30万
*費用はひと月あたり単剤で使った場合

千葉ポートメディカルクリニックを訪れるがんの患者さんの多くは、主治医と相談の上、未承認薬のみをここで処方・投与してもらうためにやってくる。

「中には、『主治医に内緒で処方してほしい』という方もいますが、よほどの事情がない限り、お引き受けしていません。情報は共有しあうものですからね。また、主治医のもとでは保険診療、ここでは自由診療と治療を分けることで、混合診療にともなう全額自己負担の問題も避けられます」(今村さん)

現在、患者さんから要望の高い未承認薬を3つのレベルに分けると、次のようになる。

(1)日本ではまったく承認されておらず、輸入が必要な薬。

(2)特定のがんでは保険が適用されているが、使用制限がきびしいため、それ以外に使う場合は輸入が必要な薬。

(3)同じく、特定のがんでは保険が適用されているが、使用制限がきびしくないため、自費で買える薬。

薬剤名でいうと、

(1)アブラキサン(一般名アルブミン結合パクリタキセル)、ベクチビックス(一般名パニツムマブ)、イグゼンプラ(一般名イキサベピロン)、ビダザ(一般名アザシチジン)、ヨンデリス(一般名トラベクテジン)

(2)アバスチン(一般名ベバシズマブ)、タルセバ(一般名エルロチニブ)、ネクサバール(一般名ソラフェニブ)、ドキシル(一般名ドキソルビシン)、アリムタ(一般名ペメトレキセド)、アービタックス(一般名セツキシマブ)

(3)ハーセプチン(一般名トラスツズマブ)、ダカルバジン(一般名も同じ)、ゾメタ(一般名ゾレドロン酸)、エルプラット(一般名オキサリプラチン)

などが挙げられる。中でもとくに要望が多いのは、膵がん、肺がん、乳がんに対するアバスチン、乳がん、膵がんに対するアブラキサン、大腸がんに対するベクチビックス、膵がんに対するタルセバ、乳がんに対するゾメタなど。

乳がんに使われるハーセプチンは、HER2受容体が陽性なら、胃がんの再発予防にも有用性が確認されている。また、進行・再発大腸がんに保険適用されているエルプラットを、卵巣がんや胃がんの再発予防に投与してほしいと希望する人も少なくない。

「乳がんの初期治療後、ホルモン治療を行っている方が、主治医から『再発率が下がるというデータが昨年の米国腫瘍学会で出ているから、あなたは(骨転移予防薬の)ゾメタをプラスするといい。ただ、保険適用外のため、うちの病院では処方できない』と言われ、来院するケースも少なくありません。

ただし、最近はありがたいことに認可のスピードが速くなっていて、ここでの治療中に認可され、元の医療機関にお戻しすることも多いです。たとえば、切除不能な肝細胞がんに対するネクサバール、再発卵巣がんに対するドキシル、手術不能または再発乳がんに対するタイケルブ(一般名ラパチニブ)などが認可され、当院で治療された多くの方が元の医療機関に戻られました」

ちなみに、千葉ポートメディカルクリニックにかかる期間で最短は数カ月だが、最長の患者さんは7年。膵内分泌がんという珍しいがんの患者さんで、キードラッグ(治療の鍵を握る重要な薬)であるストレプトゾシン(一般名)が未承認のため、ずっとかかっているのだという。


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