いいウィッグを見つけたときは恋人に巡り合ったときのように嬉しい
脱毛の喪失感を乗り越え、病気前と変わらない生活を楽しむ

参加者:大沢明日美さん(仮名)
大田真希子さん
三好鈴子さん
山科比呂美さん(仮名)
撮影:村山雄一
発行:2010年10月
更新:2013年5月

  
大沢明日美さん(仮名)

大沢明日美さん(仮名)55歳
2006年、激痛で病院にいったところ左乳房浸潤性硬がん。左乳腺全摘手術後、抗がん剤FEC、タキソテールを行った。FEC投与後3週間で脱毛。現在はホルモン剤を服用中

三好鈴子さん

三好鈴子さん 57歳
2008年、乳がんと骨転移が同時にわかった。手術は行っていない。ホルモン療法と抗がん剤治療の後、2009年から服用したタキソールで脱毛を体験。現在も脱毛中


大田真希子さん

大田真希子さん 52歳
2006年、タイ旅行中に乳がんがわかった。手術後、抗がん剤治療を行い、脱毛を体験。現在はホルモン剤を服用中

山科比呂美さん(仮名)

山科比呂美さん(仮名)45歳
2007年、自己触診でしこりを発見。術前化学療法、乳房温存手術の後、ホルモン療法を行った。抗がん剤による脱毛の副作用では、焦燥感と頭痛に悩んだ

髪の毛は女性の命とまで言われる。抗がん剤や放射線など、がん治療によって起こる脱毛は患者さんを悩み苦しませてきた。
そこで、脱毛を体験した乳がん患者さんに集まっていただき、脱毛をどう乗り越えてきたか、そのときウィッグはどんな役割をしたか、話し合っていただいた。


事前にウィッグを準備脱毛時にあわてずにすんだ

写真:座談会

座談会では、フォンテーヌの医療向けウィッグが用意され、実際に手に取りながら脱毛のつらい経験やウィッグの役割について話し合われた

編集部 国民2人に1人ががんになるといわれる時代、抗がん剤による脱毛に悩む女性は増える一方です。今日は脱毛を乗り越えてこられた皆さんに、どんな点に悩まされたか、そのときウィッグがどんな役割を果たしたか、うかがいたいと思います。まずは、最初に身体の変化に気づいたときの状況をお聞かせください。

大沢 06年11月、胸部に激痛があり、病院で乳がんと診断され、翌1月に左乳腺の全摘出手術を受けました。術後にFEC療法()を6クール、タキソテール()の毎週投与を4クール受けました。
抗がん剤の投与前に、「3週間くらいで毛が抜ける」と聞いたので、東京・青山にあるがん患者サービス事業会社に行きました。いくつかのメーカーのウィッグが揃っていたので、全部かぶってみて、頭の形に1番合ったのが「フォンテーヌ」のウィッグでした。その後、本当に「今日で3週間」という日にバサッと抜けてしまい、下見しておいたウィッグを購入しました。

三好 08年6月に、首の骨への転移と同時に乳がんがわかりました。「首の状態が危ない」ということでその場ですぐ入院、絶対安静、トイレにも行ってはいけないと言われました。1年間、ホルモン治療を行いました。その後肝臓に転移し、09年8月から抗がん剤TS-1()を投与しましたが、効かなかったので、11月末からタキソール()に切り替えました。その頃、藁をもつかむ気持ちで乳がん患者会の「アイビーの会」に参加、親切な方からウィッグも譲っていただきました。精神的にウィッグを見に行く余裕もなかったので、とても助かりました。

大田 私は06年2月、タイに遊びに行ったとき、しこりを見つけました。30代のとき、直腸がんを経験していたので、あわてずに旅行を続け、帰国後に乳がんの診断を受けました。4月に手術を受け、6月にFEC療法を開始し、その後にタキソテールの投与も受けました。その前にウィッグを用意しておくようアドバイスされ、たくさんのお店を見て歩きました。結局、新宿小田急で「ハイネット」のウィッグを購入しました。
もともと薄毛で、ウィッグは髪が不自然にふくらむことが多いのですが、夏用のすごく薄いものがあり、これ以上ないほどぴったり。1年以上使いました。

髪が抜けていく様子は夫にも見られたくない

山科 3年前、42歳で乳がんになりました。胸にずっとしこりがあり、何回検査を受けても「乳腺症」。でも、おかしいと思い、大学病院、がん専門病院でやっと診断がついた。しこりは4.4センチになっていて、術前化学療法としてCAF療法()を6クール行い、2週間休んでタキソールの毎週投与を12クールやりました。手術を前に、体がボロボロになりました。
治療を始める前、いくつかの店でウィッグを試着し、「女性専門」が気に入って、「スヴェンソン」の銀座サロンでウィッグを買いました。少し高いけど試着は個室だし、リッチな気分になれると病気にもいいと考え、セミオーダーでつくりました。そして、ウィッグが届いたらすぐ、髪が抜け始めました。髪が抜けるときは、すごく頭が痛くて……。

一同 えーっ、そうなんですか。本当に人それぞれなのね……。

山科 しかも、シャンプーをすると、ゴソッと抜けるでしょう? 私たちは夫婦2人なので、いつも2人で入浴していましたが、抜ける様子を見られたくなくて、1人で入りました。で、抜けきってから彼に見せたら、「うわ、カッコイイ」と。

一同 (笑)

山科 それで安心して、家の中ではほとんど帽子もかぶらず過ごしました。私、誉められて伸びるタイプなんです(笑)。

胸より髪の喪失感が強く、抜けた毛が捨てられなかった

大沢 私は「フォンテーヌ」表参道店に行きました。個室があって、自毛のカットもしてくれます。美容師に相談して毛材が合成繊維のものを選び、2カ月に1度ウィッグの調整に通いました。薄くなったところに毛を足してくれたり、裏が透けて下の地肌が見えるといったら、黒い裏地ネットを張ってくれたり、そのつど同じ販売員さんが丁寧に対応してくれて、とてもよかったです。青山をぶらぶら散歩しながら行けるのも、よかった。
私は胸を失った喪失感より髪の毛を失った喪失感が大きくて、脱毛中は主人にも見せていません。抜けた髪の毛も捨てられず、ためた髪の毛で針山を作りました。今でも使っています。

三好 私はもう少しふわっとしたのがほしくて、2つめを通信販売で買いましたが、「お湯でのシャンプーもドライヤーもOK」のはずが、シャンプーしたら縮れ毛になって戻りませんでした。ちゃんとケアしてもらえるところで買わないと、だめですね。でも、1番の問題はいいウィッグは高いこと。治療にお金がかかるので、ウィッグがもう少し安いと助かります。ウィッグが医療費として補助されればいいのにな…と思っています。

「再発するかもしれないから」と販売員に言われ……

大田 私にとってウィッグ選びの基準は、「髪質が合って、普段の自分と極端に変わらず、ウィッグとわからないこと」でした。もう1つ、知人の体験ですが、つくったウィッグがとても気に入り、治療後、仲よくなった販売員さんに「もう1つウィッグをつくりたい」と相談したら、「再発するかもしれないのに、今つくったらもったいない」と言われた。

一同 それはちょっとねえ……。

大田 販売員さんは「高いものだから、新たにつくるより今のものを使ったらどうですか」と親切で言ったのだと思います。でも、それから行く気がなくなったと言っていました。販売員さんの人柄って大きいと思いますね。私は、においに敏感になっている時期に、タバコ臭い販売員さんに会って嫌な思いをしたことがあり、そこでは購入しませんでした。

編集部 脱毛時につらかったことはありますか?

大田 今24歳の娘が「今だから言えるけど」として、「おにぎりに毛がいっぱい入っていた」とか「あのときのおかあさんはホラーだった」など、と話してくれます。ただ、いずれ生えてくると思っていたので、そんなに落ち込みませんでした。むしろ、ウィッグによって病気以前と同じように生活したいという気持ちが強かったです。だから、私にとってウィッグは絶対に必要。これというウィッグを見つけたときは、恋人に巡り合ったほど嬉しかったです(笑)。

山科 私は今は元気ですが、しこりが大きかったため、引きこもり状態になりました。絶対に病気をしていると思われたくないと思い、ウィッグに見えないものを探しました。それがウィッグ選びのポイントでした。
ウィッグがあってよかったと思ったのは、病気になる直前に始めた書道教室に通えたこと。いい気分転換になりましたが、私が告白するまで誰もウィッグと気がつきませんでした。

三好 私の場合、首にコルセットをしていたので、いやでも「どうしたの」と聞かれ、隠しておけません。でも、オープンにして、かえって楽でした。

大沢 私は、3カ月間、抗がん剤治療を受けながら、職業訓練校でパソコンを習いました。だから、ウィッグは毎日。夫婦の趣味がゴルフだったので、ゴルフ場でも頭が熱くならないよう〝蒸れを解消するタイプ〟にしましたが、大正解。ちょうど夏場に通いましたが、朝から晩までつけてもつらくありませんでした。合成繊維なので毎日水で洗って扇風機で乾かしましたが、今でもちゃんとかぶれますよ。

一同 すごーい。

ウィッグはすごく進化。おしゃれ感覚で楽しんで

写真:ウィッグの試着

「ウィッグはここ数年で進化してる!」(大田さん)「脱毛時もおしゃれを楽しみたいですね」(大沢さん)ウィッグの試着に、会場の雰囲気は一気に華やかになった

編集部 さて、アデランス、フォンテーヌの医療向けウィッグと一般ウィッグを試着していただきましたが、そのご感想と、これから脱毛が危惧される患者さんに、メッセージをお願いします。

大沢 私がウィッグを使っていた時期から、まだ2~3年しかたってないのに、毛質や毛触りがすごく自然になっていてびっくりしました。医療向けは、裏地ネットの肌触りも考えられていますね! 私の友人には、いろいろなウィッグでおしゃれを楽しんでいる人もいます。ウィッグで術前と同じ生活ができるだけでなく、気分転換もできるんだと思いましたね。とにかく、髪を失うのは一生ではなく、いっときのこと。できるだけ楽しまれたらいいと思います。私も楽しみましたよ。合成繊維のウィッグにはパーマはかけられませんが、少しずつ短くカットしたら印象も少しずつ変わって、とてもよかったです。

三好 私は通信販売で買ったウィッグをお湯で洗って台無しにしてしまったけど、「フォンテーヌ」のオーダーメイドウィッグは水でもお湯でも気にせず洗えるという点がいいと思います。つけた感じは、とっても軽くて自然だから、家に帰ってもとるのを忘れそう。ウィッグをつけることを、あまりおそれず気にせず「出かける前に髪の毛の手入れがいらなくていいわ」くらいに考えて、気軽に使ってみてはいかがでしょう。

大田 私も思ったよりウィッグはいいなあと思いました。自毛がショートなので、本来ならこまめに美容院に行かなくちゃなりませんが、ウィッグを上手に使うと回数も減らせます。しかも今日、最新のウィッグを拝見したら、数年ですごく進化していますね。オーダーメイドウィッグなんかは、つけているのかつけていないのか本当にわからない。今まで使ったことはなかった部分用ウィッグも、ちょっと加えるだけで気になる部分をボリュームアップできて全然違うんですね。治療はつらいけれど、納得できるウィッグでQOL(生活の質)を保ち、自分らしく生活していただきたいと思います。

山科 私はセミオーダーでウィッグをつくりましたが、ちょっと重いのが難点でした。ウィッグはつけ心地が1番。今日試着したウィッグは、軽くてよかったです。それから医療向けオーダーメイドウィッグ「ラフラ・アイフィット」は装着用の留め具がついていないことにびっくり! 不安のないフィット感に感動しましたよ。最近は若い人が普通におしゃれでウィッグをかぶるようになりましたし、「私はおしゃれのためにウィッグをかぶっているのよ」という気持ちで使ってみてはいかがでしょうか。

編集部 たくさんの貴重なご意見をありがとうございました。

(構成/半沢裕子)

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