がん看護専門看護師 山田みつぎの

副作用はこうして乗り切ろう!「抗がん薬治療中の脱毛」

監修●山田みつぎ 千葉県がんセンター看護局通院化学療法室看護師長
構成●菊池亜希子
発行:2016年1月
更新:2018年2月

  

がん看護専門看護師の
山田みつぎさん

髪の毛が抜けるショック、それは他の副作用とは種類の違う苦しみです。抗がん薬治療が終われば、また生えてきます。今はつらいけれど、ウイッグや帽子でオシャレを楽しみながら、新しい髪の毛を待ちましょう。

やまだ みつぎ 千葉県がんセンター看護局通院化学療法室看護師長。2006年日本看護協会がん化学療法看護認定看護師認定。11年聖隷クリストファー大学大学院博士前期課程修了(看護学修士)。同年、がん看護専門看護師認定。13年より現職。日本がん看護学会、日本臨床腫瘍学会、日本看護研究学会所属

なぜ脱毛するのか?

■図1 抗がん薬による脱毛のメカニズム

抗がん薬治療をする患者さん、とくに女性患者さんの、苦痛に感じる副作用の第1位に「頭髪の脱毛」があげられています。そこで、まず、なぜ抗がん薬を投与すると脱毛するのかを説明しておきましょう。

抗がん薬は、分裂が盛んな細胞に集まって行く特性があり、正常細胞よりも細胞分裂が活発ながん細胞に大きく作用するのです。

ところが、正常細胞の中にも、分裂が非常に活発なものがいくつかあり、それらは、がん細胞と同様に抗がん薬によって強いダメージを受けてしまいます。その1つが、毛根にある毛母細胞なのです。

では、毛母細胞とは何でしょうか。

毛髪が抜けると、毛根が白く丸くなっています。この丸い部分が毛母細胞。その中には毛乳頭があり、そこは神経や毛細血管が集中していて、毛髪の成長に必要な栄養素や酸素を取り入れています。そして毛母細胞は、毛乳頭からもらった栄養や酸素をもとに、活発に細胞分裂を繰り返して、毛髪が伸びる仕組みになっています。

そこで、投与された抗がん薬が、血流に乗って細胞分裂の盛んな毛母細胞に集まってきてしまい、その結果、毛母細胞が劣化して毛髪が抜けてしまうというわけです(図1)。

治療開始前にショートヘアに

■表2 脱毛が起こりやすい抗がん薬

医療用つけ眉毛。男性用もある

脱毛を引き起こしやすい抗がん薬もわかっています。
タキサン系のタキソテールが一番強く、カルセド、アドリアシン、キロサイド、ベプシド、タキソール、メソトレキセートと続きます(表2)。

シスプラチンやカルボプラチンなどのプラチナ製剤はあまり脱毛しないことが知られていますが、抗がん薬治療の第1選択肢としてタキサン系のタキソテールやタキソール、アンスラサイクリン系のファルモルビシンやアドリアシンが使われることの多い、乳がんや婦人科系がんの場合、まず脱毛すると思っていただきたいのです。

とくに、タキソテールやタキソールは、6~7回の治療で、毛髪だけでなく、まつげや眉毛などの体毛もほとんど抜けてしまいます。ですから、あらかじめ心の準備をして、それと共に帽子やバンダナ、ウイッグなどを事前に準備していただきたいと思います。

眉毛は、全部抜けてしまうと非常に描きづらいので、以前の自分の写真を手元に置いて、参考にするとよいと思います。場合によっては、タトゥーを効果的に使う方法もあります。加えて、つけまつげ、つけ眉毛といった対処法もあります(写真)。

また、抜け始めたときのショックを少しでも軽減するために、抗がん薬治療開始前に、ショートヘアにしておくことを強くお勧めします。そのとき、同時に同じようなスタイルのウイッグを作っておくといいでしょう。

シスプラチン=商品名ブリプラチン/ランダ カルボプラチン=商品名パラプラチン

脱毛の本当の苦しみとは

抗がん薬治療が始まって3週間ほどすると、突然、脱毛が始まります。頭皮がピリピリしたり、ゴワゴワしたり、引っ張られるような感覚があったら、それが脱毛が始まるサイン。その直後、いっきに抜けます。

とはいえ、脱毛はあくまでも抗がん薬治療による一過性の副作用。治療が終われば、1~2カ月で毛母細胞は再生し、3~6カ月で発毛し始め、8カ月から1年ほどでほぼ回復します。

たとえ抗がん薬を、長期投与を続けていても、2~3カ月で毛母細胞が抗がん薬に耐えられるようになり、徐々に髪の毛は生え始めます。しかし、抗がん薬治療が終わっても、頭頂部が生えない人が、数%いることは事実です。

また、脱毛には他の副作用とは明らかに違う点があります。それは、毛髪が抜けるという見た目の大きな変化はありますが、痛みや吐き気といった〝身体的苦痛〟を伴わないことです。しかも、たとえすべての毛髪が抜けたとしても、前述のとおり、数カ月後には毛母細胞が回復して、新しい毛髪が生えてきます。そのために、医療者にはそれほど重要視されない傾向があります。

しかし、患者さん、とくに女性患者さんの脱毛よる〝精神的苦痛〟は、決して軽視してはならないと思っています。

男性はもともと短髪なので、それほどでもないのですが、女性の場合、たとえ前もって覚悟していたとしても、いざ髪の毛が抜けたときの精神的ショックはとても大きく、著しい免疫力低下を引き起こしてしまうことも少なくありません。

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