MDSから急性転化 無治療を望むが

回答者・鈴木憲史
日本赤十字社医療センター副院長・血液内科部長
発行:2014年3月
更新:2015年2月

  

骨髄異形成症候群(MDS)だった74歳の母が最近、急性転化し、急性骨髄性白血病(AML)と診断されました。

治療は、移植、化学療法があると知りました。母は高齢ですが、元気で体力もあり、私は是非、母に治療を受けてもらいたいと思っています。

ただ、母は移植も化学療法も受けたくないと言っています。

母の意思を主治医に相談すると、無治療で、貧血などが起こればその都度輸血などをして様子をみる方法もあると言ってくださいました。母の意思を考えると、その方法がいいと思いますが、今後どのような治療があるのか、また無治療だった場合の予後など、詳しくお聞かせ下さい。

(52歳 女性 山梨県)

QOLを維持する治療選択を

日本赤十字社医療センター副院長・血液内科部長の鈴木憲史さん

74歳で白血病化となり、なかなか大変ではありますが、ご本人の意思とQOL(生活の質)を重視して納得のいく治療選択が望ましいですね。

骨髄異形成症候群の白血病化の治療として、移植治療(高齢の患者さんの場合はミニ移植)という方法がありますが、体へダメージが非常に大きいことから、原則は65歳まで、非常に全身状態(PS)のよい方でぎりぎり行ったとしても70歳までです。例え移植治療を行ったとしても白血病化の場合は再発が非常に多く、4割ほどの方が再発します。また、3~4割の方に感染症などの問題が起こります。

根治の可能性も10%くらいで、決して高くはありません。

そういった点を踏まえて、お母様の74歳という年齢からメリットとデメリットを考えた場合に、リスクが高くデメリットの方が大きいと思います。

今後の治療の選択肢としては、化学療法と、主治医がおっしゃったように積極的な治療は行わずに、症状に合わせて輸血や感染症への対応をしながら経過を見ていくベストサポーティブケア(BSC)があります。

1)化学療法では、ビダーザという薬剤、それからCAG療法というキロサイド、アクラシノン、G-CSF製剤の3剤を組み合わせる併用療法を行います。

腫瘍量が多く、白血病細胞が多い場合はCAG療法を先に行い、その後にビダーザで安定させる治療を行います。

一方、芽球が少ないようであれば初めからビダーザによる治療を行います。ビダーザで4~5コースの治療を行って、反応が良ければ継続して治療を行いますが、あまり反応が良くないようでしたらCAG療法に切り替える方法もあります。

CAG療法の副作用はそれほど強くはありません。脱毛は少し起こりますが、白血球の急激な減少もありません。ビダーザの副作用も軽度です。ただ、効果の面では治療の手ごたえがあるのは約30%ほどの方で、過分に期待することはできません。

しかし、副作用も軽度で、QOLへの影響もそれほど大きくはないので試みるのも1つの方法だと思います。

2)また、症状に対処しながら経過をみていくベストサポーティブケアも1つの選択だと思います。その主な対症療法としては輸血がメインになります。外来通院で行え、負担は大きくありません。ただし1週間に1度の通院が必要です。

病状が進行し、だるさが出てくると、ステロイドなどを使用して緩和します。また発熱や食欲不振が起こる場合もありますが、上手に体調管理を行っていきます。積極的な治療を行わなくてもQOLを維持しながら普通に過ごされる方は多いです。

ベストサポーティブケアを選ばれた場合の予後についてですが、化学療法と比較したような臨床試験は行われていません。

このため言及は難しいですが、多くの方が3カ月から半年はベストサポーティブケアで過ごされています。1年以上、続けられている方もまれにいます。

根治は難しいことをご理解された上で、化学療法にチャレンジしてみるのもいいかと思います。またベストサポーティブケアも1つの選択肢に入れられ、納得する治療法をご選択ください。

ビダーザ=一般名アザシチジン キロサイド=一般名シタラビン アクラシノン=一般名アクラルビシン
G-CSF=顆粒球コロニー刺激因子

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