持病ありの白血病治療はどうすれば良いか
83歳の母親が昨年(2016年)6月に骨髄異形成症候群(MDS)と診断されました。それでも比較的元気に日常生活を送っていましたが9月の定期受診で、白血病への転化(白血病細胞が1%から5%に増加)を告げられました。もともと本人は自分が高齢で他に持病(喘息、リウマチ、風邪をこじらせての肺炎)もあるので、苦しくつらいだけの治療は受けたくないと言っていました。しかし、娘の私は諦めが悪く、何とかならないのかと日々考えてしまいます。あまりつらく苦しくない程度で治療はできないものでしょうか? これだけ持病が多いと、白血病の治療というのは難しいのでしょうか? 現在の主治医には、*アザシチジンによる治療はできないものかとご相談しましたが、まだいいのではないかと説明を受けました。どうするのが母親のためになるのか、とても悩んでいます。
(52歳 女性)
A アザシチジンは有効だが、ベストサポーティブケアも考慮を
骨髄腫アミロイドーシスセンター
長の鈴木憲史さん
高齢者の白血病の7~8割は骨髄異形成症候群からの転化です。若い人はある日突然正常細胞から白血病になるのに対し、高齢者の場合は、正常細胞から一段階おいた骨髄異形成症候群というステップを踏んで、その後白血病に転化するケースが多いです。若い人はがんを叩いた後に残るのは正常細胞なので、移植など色々な治療法がありますが、高齢者は抗がん薬も効きにくく、よくなっても再び骨髄異形成症候群を発症してしまいます。正常細胞が非常に少ないので、残念ながら治療が難しく、予後(よご)も悪いのが現状です。
83歳という年齢を考えると「つらく苦しくない治療」は難しいです。ある意味、本人をあまり苦しめないようにという配慮は重要なポイントとなります。
しかし、治療法があるのに何もしないのも悔しいという娘さんの気持ちもわかります。まずは副作用が少ないとされるアザシチジンの選択は正解です。アザシチジンの効果は、血球が増えてきて1~2年はQOL(生活の質)を保ったまま、元気に生活できる点があげられます。ただし残念ながら、治ることはありません。アザシチジンは注射薬で1カ月に1回、月曜から金曜まで5回続けて投与し、効果があればそれで良いし、効果がなければ輸血などの対応になります。
一方で、主治医が「まだ治療をしなくてもいいのでは」と言うのもわかります。効くケースは良いのですが、効かない場合は正常な赤血球や血小板が減ってしまうためにかえって病状を悪くしかねません。そのため、経過を見るということは1つの選択肢だと思います。
持病がいくつかあって肺炎も持っているという状態なら、ベストサポーティブケア(BSC)として、輸血などの対症療法で臨むのが良い場合もあります。赤血球輸血、血小板輸血をしながら1~2年過ごしている方もいます。
いずれにせよ、本人に治療の意向があるのかが最も大切なことです。主治医とよく相談して治療法を決めるべきでしょう。つらいでしょうが、限りある命なので、本人がもうしばらくしたいことをさせてあげるということも、1つの考え方だと思います。
*アザシチジン=商品名ビダーザ