悪性胸膜中皮腫の疑いあり。治療法を知りたい
職場の健康診断で、右肺に胸膜肥厚が見つかりました。紹介された病院の検査では、「悪性胸膜中皮腫の疑いがある」とのことです。長年、建設業界で働いてきました。現場で、アスベストを吸ったことが原因かと思っています。悪性胸膜中皮腫と診断された場合には、どんな治療法がありますか。手術で切除すれば治りますか。
(愛媛県 男性 59歳)
A 手術と抗がん剤、放射線の併用が一般的
悪性胸膜中皮腫は、組織の型によって、上皮型、肉腫型、混合型(2相型)の3つのタイプがあります。手術は、上皮型でリンパ節転移のない1期(進行度)の場合には5年生存率60パーセント程度の手術成績が残せると言われています。言い方を換えると、上皮型の一部は手術をすれば治る可能性を含んでいますが、残念ながら中皮腫の多くは手術だけで治すのは難しいのが現状です。
その理由の1つは、発見時に進行していることが多く、完全切除に至らないケースもままあるからです。もう1つは、手術自体の難しさです。中皮腫には胸膜肺全摘術を行います。外科医が肉眼的には取りきれたと思っても、顕微鏡下のレベルではがん細胞が残っている場合があります。
そこで、中皮腫には手術と、抗がん剤、放射線の併用が一般的です。病気の進行状況、細胞の型、治療に耐えられる体力があるかどうかなどで、治療法は異なります。相談者は、「中皮腫の疑い」とのことですが、「疑い」だと労災保険法や、石綿による健康被害の救済に関する法律の恩恵を受けられない可能性があるため、病気をはっきりされることが重要です。本人も家族も治療のみならず経済的にも負担が大きくなります。確定診断には、針を刺して調べる方法や胸膜鏡による胸膜生検を受ける必要があります。胸膜生検は1泊~数日の入院を要する場合があります。中皮腫に詳しい病理の医師が診断します。全国各地のがん拠点病院や大学病院などで胸膜生検を受けるのが安心かと思います。