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質問促進パンフレット:医療者と患者とのコミュニケーションが上手くいかないという人のために あなたは聞きたいことを医療者にきちんと聞けていますか?
「自分の聞きたいことを医師になかなか聞けない」――。そんなジレンマを日々抱えている患者さんも多いのではないだろうか。そこで今回紹介するのが、そうした患者さん向けに作成された「質問促進パンフレット」。国立がん研究センターのホームページから無料でダウンロードできる。
質問促進パンフレット作成
がんの告知後、患者さんが次に迎えるのが、自分の病状や治療方針などを担当医から聞く大事な話し合いだ。このときに「患者さんが、ものおじや遠慮しないで質問ができるように」と、2011年に作られた冊子がある。それが「重要な面談にのぞまれる患者さんとご家族へ―聞きたいことをきちんと聞くために―」という質問促進パンフレットだ(写真1)。
このパンフレットにはがん患者さんが担当医と交わすだろう53項目の質問が網羅されており、使用後調査では「こんなことを聞いてもいいのだと質問しやすくなった」「事前に質問のイメージがつかめた」などの高い評価があった。
国立がん研究センターのホームページから無料でダウンロードできる(図2)。
「パンフレットを作ったきっかけは、がん医療で、患者さんと医療者とのコミュニケーションがうまくいっていない現状があることを感じていたからです」
こう話すのは、このパンフレット作成に関わった、東京大学大学院医学系研究科成人看護学/緩和ケア看護学分野客員研究員の白井由紀さん。現在はがん患者さんと医療者のコミュニケーションを研究している白井さんだが、以前は都内大学病院の血液内科病棟で、看護師として患者さんと接していた。臨床の現場でどう感じていたのだろう。
コミュニケーションは重要
「たとえば『この患者さんは、この機会を逃すと希望されている在宅の生活には戻れない、かなりシビアな状況だ』と看護師にはわかるけれど、患者さんには伝わっていないのを感じたことがあります。医療者は患者さん本人に悪い知らせを伝えにくく、患者さんも悪い知らせは聞きたくないという傾向があるのです」
医療者とのコミュニケーションがうまくいかないと、患者さんのその後の治療に悪い影響が出ることもある。その影響は、精神面に限らず「患者さんが、薬の服用など医師の指示を守れなくなってしまうこともあるのです」と白井さん。医師とのコミュニケーションがうまくいかないことは、治療効果があがらない根本原因を作ることにもつながるのだ。
「医師は治したいと思い、患者さんは治りたいと思っているのに医師と患者さんですれ違いが起こっている。見ていて切ない」と白井さん。国立がん研究センターで行われた調査でも、患者さんにとって医療者に質問することは簡単ではないことが明らかとなり、何か少しでもこの状況を変える方法はないかと、質問促進パンフレットは作成された。
家族やこころの質問も
質問促進パンフレットに載っている質問数は53(図3)。海外ではこうしたパンフレットは以前から作られており、まずはそれを参考に質問を抜き出し、たたき台を作成。それをもとに、国立がん研究センター東病院の患者さん14名とがん専門医5名に実際に話を聞き、項目を洗練させた。
最終的に選びぬかれた質問は、「病状」「治療」「生活」「家族」「こころ」など10のカテゴリーに分かれており、質問数は合計53個。最も質問数が多い「治療」では20の質問が「治療を選ぶとき」「選んだ治療について」などに分かれて掲載されている。
質問項目の作成にあたって、患者さんから加えてほしいととくに要望があったのは「家族のこと」「こころのこと」の項目だったという。
「がん治療は自分だけでなく、家族にも負担をかけるという患者さんの気持ちが現れているのでしょう」
これらの声を反映させて、質問促進パンフレットは作成された。