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キノコ系食品「AHCC」に見るエビデンスのレベル
本当にがんに効果があるのか!? 健康食品のチカラ
関西医科大学名誉教授の
上山泰男さん
健康食品は本当にがんに効果があるのだろうか。どのような効果があるのだろうか。
どこまで効くのだろうか。科学的に検証してみた。
健康食品の科学的な検証とは
補完代替医療には漢方、ハリ、アロマテラピー、気功……とあるのに、わが国では、補完代替医療といえば健康食品と思っている人がほとんどであることは、すでに見てきた通りである。
では、健康食品は、本当にがんに効果があるのだろうか。どのような効果があるのだろうか。どこまで効くのだろうか。科学的な検証をしてみよう。
健康食品の世界では、科学的データとして、動物や細胞レベルの実験データを示しているケースがよくある。「マウスを使って、がんがこんなに消えた!」などというものだ。しかし、これは、がん患者にとっては、あまり参考にならない。動物や細胞実験でがんに効いたからといって、人間で効くとは限らないからだ。むしろ人間では効かないほうが多いということを、まずは知っておきたい。
では、人間での科学的な検証をするためには何が必要かというと、臨床試験である。
まずは、健康食品を摂取した臨床試験、臨床研究がどれくらいあるかを見てみる必要がある。実は、厚生労働省の「がんの代替療法の科学的検証と臨床応用に関する研究班」というグループが、すでにそれを調べている。パブメド(PubMed)という文献を検索する検索エンジンを使って、メドライン(MEDLINE)という、米国国立医学図書館が提供する世界最大規模の医学関係文献データベースの中から調べたのだ。メドラインには、米国をはじめ、80カ国以上の国で出版される、37の言語の5000以上の学術誌に掲載された1500万を超える文献情報が網羅されている。
健康食品に関する臨床試験は?
その中で、健康食品に関する臨床試験の文献がどのくらいあったかというと、実に少なかったのだ。検索の結果は、
アガリクス 3つ
AHCC 2つ
サメ軟骨 3つ
メシマコブ 3つ(症例報告のみ)
プロポリス 0
という具合だ。
もっとも、文献があっても、問題はその中身だ。文献といってもさまざまなレベルがあり、信頼度の高いものもあれば低いものもある。科学的に検証するにはそれをよく見極めていかなくてはならない。とくにメシマコブのように、信頼度の低い文献には注意する必要がある。
このような観点から、健康食品に関する文献を比較検討してみると、信頼度の1番高いのは、2002年に「ジャーナル・オブ・ヘパトロジー(Journal of Hepatology)」誌に掲載されたAHCCに関する論文である。「ジャーナル・オブ・ヘパトロジー」は欧州肝臓学会の学術誌で、肝臓分野では権威のある雑誌とされている。そこで、この文献の内容をエビデンス(科学的根拠)という観点からもう少し詳しく見ることにしよう。
関西医大グループが行ったコホート研究
これは、関西医科大学第1外科のグループが肝細胞がん患者の手術後にAHCCを摂取してもらってその効果を調べたコホート研究の報告である。
AHCCとは、ちょっとややこしいが、「Active Hexose Correlated Compound」の略で、活性化された多糖類関連化合物とのこと。東京大学薬学部教授の岡本俊彦さんと札幌市にあるアミノアップ化学との共同研究によって開発されたキノコ系の健康食品である。
コホート研究とは、別名「追跡調査」ともいわれ、大勢の人を長期にわたって追跡調査するもので、よく疫学で用いられる研究手法の1つである。調査開始時点を起点にして、未来へ向けて被験者の様子を観察していくところから、「前向き」研究といわれるが、エビデンス・レベルから見て、1番高いものではない。「無作為化比較試験」に比べると低いが、臨床研究のレベルからいえば、3番目に高いものである。
調査が行われたのは、92年2月から01年12月まで。関西医科大学第1外科で、肝がんに対する肝切除術を行い、組織所見で肝細胞がんと診断された269人の患者を対象に、AHCCを摂取する群と摂取しない群とに分けて、AHCCに効果があるかどうかが調べられた。
AHCCは、粉末、カプセル、ドリンクタイプの3種類があるが、多くの患者さんでは粉末、1日3グラムずつ(朝、昼、晩の食後)を摂取してもらった。
AHCCの原料、担子菌の液体培養の様子
AHCCのソフトカプセル(写真上)と細粒
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