高齢転移性がん患者において健康関連のQOLと疾患進行が関連
[2020.05.05] 文・編集●「がんサポート」編集部
転移性がんは、一般的に外科的切除が最も有効とされるが、転移個数が多い場合や、他の臓器などにも転移しているケースでは、全身化学療法(抗がん薬治療)が行われる。
こうした転移性がんの進行に、“健康に関連するQOL(生活の質:HRQoL)” の悪化が関与していることが、米国医師会誌「JAMA Network Open」に掲載されたドイツの研究で明らかになった。
膵がん、大腸がん、乳がん、肺がん高齢患者を対象
それによると、今回行われたコホート研究(集団を対象とした観察的研究)では、2011~2018年間に、ドイツの203施設において、4種類の患者データを収集し、分析した。
患者の内訳は、膵がん807例(年齢中央値70.0歳)、大腸がん702例(同66.9歳)、乳がん464例(同61.6歳)、肺がん341例(同65.9歳)の計2,314例。患者全例が1次治療として、全身治療と緩和ケアを受けていた。
データ収集に当たっては、「Functional Assessment of Cancer Therapy–General version 4」など主に欧州で用いられている4つの検証済みの質問票を用いた。患者のHRQoLは、5年にわたって定期的に評価。疾患進行後のHRQoLスコアの変更は、線形ミックスモデルを用いて検証した。
食欲不振、身体機能、疲労が大きく関与
その結果、第1次の疾患進行において、HRQoLスケール45項目のうち、37項目で統計学的に有意な悪化が認められた。そのうちの17項目は臨床的意義をもつものであった。
このうち疾患進行は、がん種にかかわりなく、食欲不振(肺がん10.8ポイント、膵がん10.2ポイント、大腸がん8.8ポイント)、身体機能(肺がん8.4ポイント、膵がん6.2ポイント、大腸がん5.0ポイント)、疲労(肺がん7.7ポイント、膵がん5.5ポイント、大腸がん4.5ポイント)によって最も影響を受けていた。
第2次の疾患進行は、HRQoLのさらなる大幅な低下と相関していた。
全体的なHRQoLとの関連は、肺がん(6.7ポイント、p<0.001)と膵がん(5.4ポイント、p<0.001)が顕著に高く、大腸がん(3.5ポイント、p=0.002)、乳がん(2.4ポイント、p=0.001)では低かった。
原発部位にかかわらず、HRQoL悪化が進行に関与
研究者によると「がんの原発部位にかかわらず、実臨床においては、疾患進行はHRQoLに逆相関(adversely associated)していた」という。
さらに、「今回の分析の目的は、実地医療で患者数の多い4種類のがんにおいて、複数のHRQoLと疾患進行の関連性を明らかにすることであった。得られた知見は、がんの実体(cancer entity)とは別に、HRQoLの悪化と疾患進行が関連していることを示唆するものである」としている。
今回明らかにされたエビデンスから、転移性がん患者においては、疾患進行への時間、無増悪生存期間などとともに、新しい治療の評価として、HRQoLの評価が重要であると言えそうだ。