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もっとガイドラインを上手に使いこなそう! 『患者さんのための乳がん診療ガイドライン』はより患者目線に

監修●佐治重衡 福島県立医科大学腫瘍内科学講座教授
取材・文●伊波達也
発行:2020年10月
更新:2020年10月

  

「ガイドラインは、日本乳癌学会で専門医が総力をあげて作成した最も信頼性の高い情報源」と語る佐治重衡さん

近年、がん治療は医療者任せにせず、患者も病気や治療の知識を求めて、医療者と充分なコミュニケーションをとって臨むものとなってきている。そして、医療者が使うものであった『診療ガイドライン』も、各がん種で患者用のものが増えている。なかでも、その先駆けとなったのは乳がんのガイドラインだ。

新たに改訂された『患者さんのための乳がん診療ガイドライン』2019年度版の委員長を務めた、福島県立医科大学腫瘍内科学講座教授の佐治重衡さんに、改定されたポイントや使い方などについて伺った。

初めて患者用に作成されたガイドラインは乳がん

現在、患者のための診療ガイドラインは、膵がん、肺がん、子宮頸がん・体がん、卵巣がん、大腸がん、放射線治療、緩和(痛み)など、各がん種でも作られている。

その先鞭をつけたのが、乳がん。『患者さんのための乳がん診療ガイドライン』が最初に作られたのは2006年だ。

その後、2009年に改定。2012年以降は2014年、2016年と2年ごとに改定されていたのだが、最新版は3年空いて、昨年2019年7月に刊行された。

3年空いた理由について、最新改訂版の患者向けガイドライン小委員会委員長を務めた福島県立医科大学腫瘍内科学教授の佐治重衡さんはこう述べる。

「医療者向けの診療ガイドラインは2年ごとに改定を行ってきましたが、前回作成方法が大きく変わり、大幅改定となったため、作成に時間がかかり、2018年刊行となりました。それに準じて、患者さんのガイドラインも1年遅れたというわけです」(図1)

■図1 2011年からの医療者用と患者用のガイドライン発刊の流れ

より患者目線で作成、使い勝手がよくなる

今回の大改訂によって反映されたポイントを佐治さんは次のように話す。

「最新かつ正確な情報を盛り込み、わかりやすい表現にし、患者さんが知りたい情報に早く確実に辿り着けるという、これまでの基本方針を守りながら、患者さんにとって重要な、診断されてから治療を受けていくにあたって、必要である社会的情報を充実させたことです。具体的には、仕事をどうするか、経済的な支援はどのようなものがあるかという点を、『乳がんと診断されたら』の章に入れるなど、目次と構成を工夫することで、患者さんにとって使い勝手が良いものにしました」

また、患者の視点から治療の流れがわかるように「一般的な乳がん治療の流れの例」というものを追加掲載した。

これは、フローチャートになっていてとても理解しやすい。自分が今どういう段階にいるのかが俯瞰できてわかりやすい。

「このような患者さんの視点が重視されたのは、患者さんの代表である桜井なおみさん、中川圭さんの意見に基づいて、看護師の阿部恭子さん、薬剤師の宮本康隆さんの意見も加え、副委員長の徳永えり子さんがまとめてくれたからです」

執筆は、医療者向けガイドラインを作成した手術、放射線療法、薬物療法、疫学、検診、病理の各専門医が、新たな知見を入れて行った。

今回の改訂にあたっては、遺伝診療やがんゲノム医療についてが、日本で本格的に導入され始めたため、この内容も増えた。

また、遺伝性乳がん卵巣がん症候群(HBOC)に関連するBRCA遺伝学的検査の重要性は、ますます高まっている。

日本乳癌学会のHPでも見ることができる

『患者さんのための乳がん診療ガイドライン2019年版』(日本乳癌学会編/金原出版)は、2,3O0円(税別)で、市販されている。もちろんインターネットでの購入も可能だ

ガイドラインの構成は、「原因と予防について」、「乳がん検診と診断の進め方」、「乳がんと診断されたら」、「初期治療を受けるにあたって」、「初期治療後の診断と検査」、「再発・転移の治療について」、「薬物治療について」、「療養上の諸問題について」、「若年性のがん・男性乳がんについて」、「付1.初期治療として使用される主な治療」、「付2.転移・再発治療として使用される主な治療」、「利益相反」となっている。それぞれの中に関連する質問と答えがわかりやすい言葉で説明されている。

患者は自分の状況に応じて、その必要な部分を読むことができる。日本乳癌学会のホームページで見ることができるので、目を通してみてほしい。また、目次だけでもプリントアウトして持っているといいかもしれない。

「ガイドラインの本を、各病院の外来に置いて見てもらうというのもいいでしょう。そうすれば、何か気づいた点を、その場で医師のみならず看護師さんや薬剤師さんなどにいつでも質問できるでしょう。また、患者さんご本人のみならずご家族の方にも知って欲しいこともありますから、自宅に1冊あるというのが理想かもしれません」

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