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がん情報を理解できるパートナーを見つけて最良の治療選択を! がん・薬剤情報を得るためのリテラシー

監修●齊藤光江 順天堂大学大学院医学系研究科乳腺腫瘍学講座教授
取材・文●「がんサポート」編集部
発行:2024年2月
更新:2024年2月

  

「がんリテラシーは、情報を分析してそれを活用して行動に繋げる。最終的には何をするのかという意思決定に繋げていかなければいけません」と語る齊藤さん

玉石混交のがん情報が溢れているデジタル情報社会。その中から自分が必要とするがん情報をどう選び取るか、難しい状況です。また、自分にとって必要ながん情報が入手できたとしても、その情報をどのように活用していくかがとても大事と、順天堂大学大学院医学系研究科乳腺腫瘍学講座教授の齊藤光江さん。

今回はデジタル社会で、患者さんががんリテラシーを高め、最適ながん情報をどのように入手して活用するかを伺いました。

リテラシーとはどういう意味ですか?

〝リテラシー〟とは、一般には「理解して、解釈・分析する」という意味です。最近では、ヘルスリテラシー、ITリテラシー、経済リテラシーなどというように、さまざまな言葉とつなげて使われています。

「現代はとくに健康情報が巷に氾濫しているため、まず、欲しい情報をどこから入手するか、情報の選び方がとても大事です。その次に、選び取った情報を理解する能力が必要になります」と、順天堂大学大学院医学系研究科乳腺腫瘍学講座教授の齊藤光江さん。

〝がんリテラシーが低い〟と、がん医療に関する知識や理解力が不足している状態のため、適切な判断を下すための情報を得ることが難しく、また最適な意思決定をするために必要な情報を理解することができません。

がん情報を共に理解するための良きパートナーとは?

「医療者は勉強して資格を取って専門家になりますが、患者さんはある日突然がんと告知されるわけですから、がんのことを最初は何も知らなくても当然のことです。そこで、情報の理解の仕方を誰かと共に考えることが大事になってきます。つまり、患者さんは良いパートナーを見つけて一緒に理解していくことが大切なのです」

齊藤さんは〝良いパートナー〟について次のように話します。

「がん告知でショックを受けている患者さんは、事態を冷静に受け止められる人と共に、がん情報を読み解いていく必要があります。それには、自分の身近な親しい人や、良きパートナーになってくれるような医療者が適任です」

リテラシーは分析までを含みますが、健康に関わるヘルスリテラシーは、さらに次のことが重要になると齊藤さん。

「得た情報を分析して、それを活用して、どう行動に繋げていくかが重要です。活用する能力ということでは、『何をするのか』『何をしないのか』という意思決定に繋げていかなければなりません」

医療者は患者さんの生活すべて知っているわけではないし、いくら親しい友人であっても自分のすべてを曝け出しているわけではありません。

「最後まで伴走してくれる人がいるのが理想ですが、いつ、どのような治療を選ぶかという最終の意思決定は自分自身でしなければなりません。つまり、自分が意思決定の最終責任者になるということです。ただ、そこに至るまでは理性的な作業が必要で、そのときに良いパートナーが必要なのです。最後は自分の好き嫌いで決めてもいいですが、ずっと感情だけで決めていくと、良いものを選び取れるかわかりませんから」

デジタル社会のがん情報入手先についての注意点は?

情報のデジタル化の良い面は情報がふんだんにあり、リアルタイムに情報を取れること。悪い面は、玉石混交の種々雑多な情報が飛び込んでくることです。ネットサーフィンで乱読できるため情報取得のハードルが低く、質も気にせず人目を引くものを見がちです。

「そこで必要なのが、選択する力です。乱読しても良いですが、『こんなこと言っているが、質が悪そう。これは質がよさそうだ』と、情報のランク付けを自分で行なっていかなければいけないですね」

また、医療者が信頼しているエビデンス(科学的根拠)のある情報がどこにあるか、知っておくことも大事です。

「自分に好都合な情報を見てもいいと思いますが、たとえばそれが診療ガイドラインに推奨されているものなのか。推奨度はどれくらいか。それらを知りに行くことがとても大事です。私が属している日本乳がん学会は、その点とても進んでいて、患者さんのために優しく書かれた『患者さんのための乳がん診療ガイドライン』もネットで公開しています」(画像1)

残念ながら、すべてのガイドラインをネットで閲覧することはできず、患者さん向けのガイドラインも出してない学会も多い。ただ、国立がん研究センターのがん情報サービスでは患者さん向けのがん情報を出していますし、そういう信頼できるところの情報を見つけましょう。

「少しずつですが、多くのがん学会が乳がん学会と同じ方向に向いてきています。ですが、それは時間がかかる作業だと思います」

その作業を、「医療者がわかっていることを、優しい言葉使いで患者や市民にわかるように発信してほしい」と患者側から声を出すことで、医療者側からの働きかけより物事が早く進むとのことです。

エビデンスのあるがん情報を得るためには?

「『この人の話は信頼できそうだ』とか、『なにか胡散臭い』などの直感的な感覚を、人は生きるためにもともと持っています。そのように五感を働かすことは、とくに人と直接話すときは大事ですが、ネットでもある程度はできると思います」

デジタル社会では、ひとりの世界にのめり込みやすく、自分にとって耳当たりの良い情報しか入ってこない危険性があります。そうなると、これが最良の情報だと錯覚しがちです。

「自分だけで考えていると妄想が膨らんでしまいがち。とにかく、直感を働かせて「何かおかしい」と感じたときは、誰かに聞くことが大事です。自分の五感を頼りにしつつ、その道のエキスパートでなくても、とにかく自分以外の第三者がどう思うか聞くことです」

それは、患者会などでもいいのでしょうか?

「患者会はいろいろ問題もありますが、1人で考えるよりは良いでしょう。相談できる人がいない、病気のこと知らせたくないという人も結構います。そのようなときは医療者を選ぶと良いでしょう。臨床心理士、看護師、薬剤師、あるいはがん相談支援窓口の人など何人かに聞いて回ると、『この人なら』という人に行き当たると思います」

医療者がパートナーというのは理想ですが、敷居が高いのでは?

「そうなんですよ。当院の乳腺センターの工夫がよい例になればと、お話ししましょう。まずは、看護師がいる処置室はドアを開けっぱなしにして、『いつでも声をかけてください』と張り紙をしています。言葉で伝えても単なる挨拶の1つと思われがちなので、入り口に貼っています。私は気になった患者さんは再度呼び出したり、検査の待ち時間に話したりします。医師に時間がなくても、看護師全員が把握しているので患者さんと話をしたりしています。ですから処置室は、がん患者相談窓口みたいになっていますね」

それでも患者さんは、医師は非常に忙しいので、話を切られるのではと懸念したり、聞きたいことも聞けずに治療を受けているとよく聞きます。

「乳腺センターの看護師は医師と綿密にコミュニケーションを取っていて、患者さんの心に寄り添うことに積極的に参入してもらっています。もちろん患者会なども大事ですが、やはり医療行為に対する質問は、医療者に聞くべきだと思います。患者さんを1人きりにさせないためには、医療者ももう少し突っ込んで患者さんにつき合うという姿勢が大事です」

得た情報を賢く利用するためには?

患者さんが理解して意思決定するには時間が必要です。そこに医療者は対応できるのでしょうか?

「確かに、医師は今日診察に来た人を今日中にかえさなければならないため、時間が足りなくて話が十分ではないと多くの医師が感じています。その問題解決にデジタルが利用できるのではと思っています。パソコンで、あるいはスマホで一般的情報は入手して、医師との診断時、『先生、それ知っています』『これのほうがいいんですよね』など、基礎知識をある程度持っていてくれれば、Q&Aを外来で繰り返さなくて済みますから」

診察時間に制約がある以上、「私はここの予備知識を持っているが、ここは個別ケースだと思うから医療者に聞く」というように、デジタル情報をうまく利用する必要がありそうです。

「私たちも整えていかなくてはけないし、患者さんが勉強する力もリテラシ―の中で大事な〝解釈する〟という2番目のステップです。デジタル化はそこに貢献できる。そういう利用の仕方をしてもらいたいと思います」

医療行政の力で整ってきたところはあるのでしょうか?

「複数の職種で相談に乗ったら保険点数がつくなど、ある程度強制力を行使することにより整えていくことが進んできています。昔は、新薬が発売され『本剤は5日間の投与が承認されました』と書いてあれば5日投与していた。その後ガイドラインの整備ができて、使える薬剤があることと、それをどう使って行くのがベスト(利益と不利益のバランスを鑑みた推奨)なのか。この2つが整って初めて医療行為がより適正なものになってきました。その結果、たとえばその薬剤は『化学療法後に3日間内服することが推奨された』などと、承認と推奨に差異がある場合があることなども出てきました。よって、いろいろな方面からよくなってきています」

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