1. ホーム > 
  2. 各種がん > 
  3. 乳がん > 
  4. 乳がん
  • rate
  • rate
  • rate

ステージⅣ乳がん原発巣を手術したほうがいい人としないほうがいい人 日本の臨床試験「JCOG1017試験」に世界が注目!

監修●枝園忠彦 岡山大学病院乳腺内分泌外科診療科長・准教授
取材・文●柄川昭彦
発行:2022年6月
更新:2022年7月

  

「同時期に同じコンセプトの試験が5つ計画され、すでに4つの結果はそれぞれ出ています。しかし、世界では日本のJCOG1017試験の結果を見て最終的な結論を出しましょう、となっています」と語る枝園(しえん)忠彦さん

従来の診療ガイドラインでは、ステージⅣ乳がんの原発巣は切除する意味がないとされてきた。しかし、切除によって生存期間が延長するという後ろ向き試験の結果があり、実臨床でも切除に積極的な施設と消極的な施設があって、前向き試験への期待が高まっていた。

そうした中で、ステージⅣ乳がんの原発巣切除が有用かどうかを調べる「JCOG1017試験」が始まった。11年に及ぶ試験が2022年8月に終了し、来年には結果が報告される予定になっている。この試験によって何が明らかになるのかを岡山大学病院乳腺内分泌外科診療科長・准教授の枝園忠彦さんに解説してもらった。

原発巣切除の意義を調べる臨床試験

乳がんが発見されたとき、すでに遠隔転移があった場合にはステージⅣと診断される。遠隔転移というのは、腋の下のリンパ節など近くのリンパ節への転移ではなく、肺、肝臓、骨、脳など、離れた臓器に起きている転移のことである。

こうした転移が見つかった場合、基本的には手術は行わず、生存期間の延長と症状の緩和を目的として、薬物療法を行うのが標準治療となっている。この点について、岡山大学病院乳腺内分泌外科診療科長の枝園忠彦さんは、次のように説明してくれた。

「遠隔転移があるということは、がん細胞が全身に散らばった状態と考えられるので、体内のがん細胞をゼロにするのは困難です。つまり、治癒を目指すのは難しい状態と言えます。しかし、現在はいい薬がいろいろあるので、薬でがんが増殖するのを抑えながら、長生きしてもらうことを目標にした治療をしていこう、ということになっているのです」(枝園さん)

乳がんで遠隔転移がなければ、基本的に乳房の腫瘍は手術で切除する。しかし、発見されたときにすでに遠隔転移があるステージⅣ乳がんに対しては、乳房の腫瘍は取らなくていいというのが一般的な考え方で、診療ガイドラインにも「ステージⅣ乳がんに対する予後の改善を期待しての原発巣切除を行わないことを弱く推奨する」といった内容が記載されている。

ただ、そうは言いながらも、薬物療法が進歩することによって、ステージⅣ乳がんでも、かなり長く生存できる患者さんが現れるようになっていた。そういう時代になってくると、薬の効く患者さんなら、ステージⅣでも手術したほうが元気に長生きできるのではないか、と考えたくなってくる。

実際、ステージⅣで手術を受けた人と、手術を受けなかった人の治療成績を比較した後ろ向き研究(過去に生じた現象を振り返って調査する研究)があり、その多くは「手術した人たちの生存期間のほうが長い」という結果になっていた。

「そういった研究結果が出ていましたが、あくまで後ろ向き研究なので、比較する対象にバイアスがかかっているということも十分に考えられます。本当はどうなのかを確認するためには、前向きの臨床試験を行うしかない。ということで、『JCOG1017試験』が行われることになったわけです」(枝園さん)

「JCOG」は、Japan Clinical Oncology Group(日本臨床腫瘍研究グループ)のことで、「1017」は2010年に決まった17番目の臨床試験であることを意味している。臨床試験の名称は、「薬物療法非抵抗性ステージⅣ乳癌に対する原発巣切除の意義に関するランダム化比較試験」である。

2022年8月に追跡期間が終了

この臨床試験は、図に示すようなデザインになっていた。

遠隔転移のある乳がん患者さんに1次登録してもらい、その人の乳がんのタイプに応じた薬物療法を行う。その結果、効果の認められた人に2次登録してもらう。この人たちを無作為に2群に分け、一方を「薬物療法単独群」、もう一方を「原発巣切除群(手術+薬物療法群)」とする。薬物療法単独群には薬物療法を行い、原発巣切除群には手術を行ってから薬物療法を行う。そして、登録後4年間追跡して治療成績を調べることになっていた(図1)。

「この試験に参加した42の施設に対し、ステージⅣ乳がんの原発巣を手術で取りますか、というアンケートを行ったところ、約半分の施設が、取れるなら手術することを考えると答え、約半分の施設は取らないという答えでした。まさにきれいに意見が分かれていたのです。ただ、意見が一致していたのは、腫瘍があることで出血していたり痛みがひどかったりする場合です。このような患者さんには、延命のためというより、症状を取り除くために手術を行ったほうがよいだろう、と言われていました。ただ、このような患者さんは全体の1割ほどで、残りの9割に対しては意見が2つに分かれていたわけです」(枝園さん)

このように意見が2分されていたので、臨床試験ではっきりさせるべきと、JCOG1017試験が始まったのだが、実は世界でも、同時期に同じようなコンセプトの臨床試験が行われていた(図2)。

インド、トルコ、オーストリアを中心とした欧州、米国、そして日本。5つの臨床試験が行われていたことになる。ステージⅣ乳がんの原発巣を取るか取らないかというテーマは、日本だけでなく、世界中で重要な問題と認識されていたのだ。

JCOG1017試験は、2011年から患者さんの登録が始まり、予定していた人数の登録が終了したのが2018年だった。その4年後の2022年8月に追跡期間が終了する。それからデータの解析が行われ、2023年にはASCO(米国臨床腫瘍学会)などの国際学会で発表される予定だという。

同じカテゴリーの最新記事

  • 会員ログイン
  • 新規会員登録

全記事サーチ   

キーワード
記事カテゴリー
  

注目の記事一覧

がんサポート8月 掲載記事更新!