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がん患者さんもちょっと知っておきたい抗がん薬の「薬理学」

抗がん薬はなぜがんに効くの!?

監修●今村知世 慶應義塾大学医学部臨床薬剤学教室講師
取材・文●半沢裕子
発行:2013年1月
更新:2013年4月

  
今村知世さん個々の患者さんでその薬が効くか効かないかを予測する「個別化医療」の研究も進んでいると話す今村知世さん

がん治療において欠かせない抗がん薬。服用した薬剤が胃を通って腸で吸収された後、どのようにがんに作用しているのか。実は知らないことも多いのではないだろうか――。

細胞分裂をじゃまする

■図1 殺細胞薬ががん細胞の分裂をさまたげる仕組み
■図1 殺細胞薬ががん細胞の分裂をさまたげる仕組み

がんの増殖を抑える効果がある一方で、さまざまかつ強い副作用を伴う薬。抗がん薬には、白血球が減ったり、強い吐き気が出たり、髪の毛が抜けるといった副作用の出る従来からある薬剤のほかに、最近は分子標的薬が次々と誕生し、また乳がんや前立腺がんのようにホルモン由来のがんにはホルモン薬も治療に用いられている。

「昔から言われている、いわゆる抗がん薬も分子標的薬もホルモン薬も、がんの治療に用いる薬剤は全て『抗がん薬』と呼びます。白血球が減ったりする従来からある抗がん薬は殺細胞薬という分類の薬です」

慶應義塾大学医学部臨床薬剤学教室講師の今村知世さんは説明する。そう、その殺細胞薬。今回は殺細胞薬を中心になぜがんの増殖を抑えるのか、どうして副作用が伴うのか、薬の基本を伺う。まず、殺細胞薬とはどんな薬なのか。

「がん細胞も一般の細胞と同じく、細胞分裂によって増えていくのですが、その細胞分裂をさまたげることで、がん細胞が増殖するのを抑える薬です」

殺細胞薬は細胞分裂のどの段階でどのように働くかによって、大きく6つに分けられる(図1)。

①アルキル化薬……がん細胞のDNAの鎖の中に入り込み、DNAの合成を阻害する。

②代謝拮抗薬……DNAの材料である核酸のかわりに入り込み、がん細胞のDNAの合成を阻害する。

③抗腫瘍性抗生物質……がん細胞のDNAに結合したり、DNAがつくられるときに必要な酵素の働きを抑えて、D NAの合成を阻害する。

④微小管阻害薬……細胞分裂のときにできる物質(微小管)の役割を止めて、細胞分裂を止める。

⑤白金化合物……がん細胞のDNAの鎖の中に入り込み、DNAの合成を阻害する。

⑥トポイソメラーゼ阻害薬……DNAがつくられるとき必要な酵素の働きを抑えて、DNAの合成を阻害する。

なお細胞は全身にあり、正常な細胞も影響を受ける。なぜがん細胞をやっつけることができるかというと、がん細胞は正常な細胞より増殖が盛んで、殺細胞薬は増殖の盛んな細胞=DNA合成の盛んな細胞にダメージを与えるからだ。とはいえ、正常な細胞の中にも増殖が盛んな細胞はあり、そういった細胞は、殺細胞薬の影響を受けやすい。その代表が、血液の細胞を作る骨髄細胞や髪の毛の細胞。だから、殺細胞薬によって、骨髄の働きが抑制されたり、髪の毛が抜けたりと、副作用を伴うのだ。

薬は主に尿に溶けて排泄される

■図2 体の中での薬の流れ
■図2 体の中での薬の流れ

殺細胞薬の投与方法は経口薬(飲み薬)、注射など、いろいろあるが、最近は患者さんの利便性を考え、飲み薬が増えている。では、体にはどう入り、どう働くのだろう(図2)。

飲み薬は基本的に食べ物と同じ。口から入り、胃の中で1~2時間留まり、錠剤から薬物が放出される。薬物は小腸に行き吸収され、血流に乗る。注射薬の場合は、吸収の過程がないため、薬物はすぐに血流に乗る。

血液の流れに乗ってがん細胞に到達した殺細胞薬は、前述のようなメカニズムでがん細胞の増殖をさまたげる。

薬物が体の外に排泄されるためには、肝臓と腎臓が大きな役割を担っている。肝臓にはさまざまな酵素が存在しており、薬物を代謝して排泄しやすい形に変換させる。

「代謝の目的は、脂溶性の高い(水に溶けにくい)薬物を水溶性の高い(水に溶けやすい)代謝物に変換し、尿に溶ける形にして尿と一緒に体の外に出すことです。ですから、もともと水溶性の高い薬物は代謝を受けずにそのまま尿と一緒に排泄されます。また胆汁と一緒に消化管に分泌される薬物は、便と一緒に排出されます」

効果が現れるには副作用が必発

■図3 「薬物の量」と「効果と副作用」の関係
■図3 「薬物の量」と「効果と副作用」の関係

薬には副作用がつきものだが、抗がん薬の効果と副作用にはどんな関係があるのだろう。ここで、患者さんにぜひ覚えておいてほしいことがある。

「殺細胞薬の効果が現れるには副作用が必発なので、いかに副作用を上手くマネジメントして効果を得るかというのが、殺細胞薬を投与するときの医療者側のポイントとなります」

つまり殺細胞薬では、効果が現れる量よりも低い量で副作用が現れる(図3右)。

一方、血圧の薬や痛みどめなどの多くの一般的な薬物は、効果が現れる量よりも高い量で副作用が現れる(図3左)。したがって、全員で副作用がみられるということはなく、副作用の出る頻度は5%未満である場合が多い。殺細胞薬と一般薬では「薬物の量」と「効果と副作用」の現れ方の関係が異なるため、殺細胞作用で治療を受けるからには「副作用のない治療」というのはあり得ない。

「最近では白血球減少や吐き気に対して非常に有効な薬剤がありますので、副作用対策のレベルは高くなっています。副作用をできるだけ抑えて、抗がん薬を投与し続けていくことが治療効果につながります。患者さんにもこの点を理解していただいた上で治療に臨んでいただきたいですね」

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