知っておきたいお金の悩み解決法(1)
高額医療費制度を利用して医療費問題を切り抜けよう

文:山田由里子(社会保険労務士)
発行:2004年11月
更新:2013年8月

  

高額療養費を算出してみましょう

高額医療費貸付制度

みなさんは必ず何かしらの健康保険に加入していることと思います。何に加入しているのか、これは主に世帯主が勤めている会社や職業で決まります。自営業や無職の人は国民健康保険、会社勤めの人とその家族は政府管掌健康保険(国が保険者となっている)、または健康保険組合に加入しています。比較的大きな会社に勤務する人は健康保険組合であることが多いです。また、公務員は共済組合の健康保険です。どの制度に加入していても「高額療養費」の制度はすべての人に適用されます。

高額療養費とは、「同じ月、同じ医療機関で保険診療を受けた際、加入している公的医療保険(健康保険、国民健康保険など)で支払った自己負担額が一定額(自己負担限度額)を超えた場合に後から払い戻しを受けられる制度」のことです。

自己負担額の上限は、所得により異なります。また、実際にかかった医療費の額によっても、自己負担限度額は異なります。計算の方法は70歳未満と70歳以上にわかれていて表1のようになっています。

[高額療養費の自己負担限度額(表1)]
70歳未満の方 高額療養費の自己負担限度額 4回目以降の限度額
一般 72,300円 + (医療費 – 241,000円)× 1% 40,200円
上位所得者
(標準報酬月額56万円以上)
139,800円 + (医療費 – 466,000円)× 1% 77,700円
低所得者 35,400円 24,600円
70歳以上の方 高額療養費の自己負担限度額 4回目以降の限度額
外来
(個人ごと)
外来 + 入院(世帯ごと)
一定以上所得者 40,200円 72,300円 + (医療費 – 361,500円)× 1% 40,200円
一般 12,000円 40,200円
低所得者(II) 8,000円 24,600円
低所得者(I) 8,000円 15,000円
※上位所得者とは、国民健康保険の場合は基礎控除後の総所得金額が670万円を超える世帯の人
※一定以上所得とは、課税所得が124万円以上の70歳以上の方がいる場合
※低所得者(I)とは、世帯全員が住民税非課税の場合
※低所得者(II)とは、世帯全員が住民税非課税の方であり、かつ、世帯全員の各所得が0円である場合

月給40万円のAさんが入院して保険診療分が100万円だった場合をみてみましょう。本人負担3割の場合、Aさんが窓口で負担する金額は30万円です。 そして、この30万円について高額療養費の申請をすることになります。高額療養費の自己負担限度額は、一般と高額所得者に分かれますが、給与が40万円のAさんは一般の計算式を使います。計算式にある医療費とは医療費全額のことです。診療報酬明細書に医科診療点数が記載されているときは、これを1点10円として計算すると、保険医療総額がでます。または自己負担3割のときは保険診療自己負担金額の3分の10でも算出できます。Aさんの計算では表2のようになります。

保険診療分=高額療養費の対象となるのは、保険適用の金額のみ。差額ベッド代や入院食事代は対象外となる

[Aさんに支給される高額療養費(表2)] Aさんに支給される高額療養費

ポイント1:入院はなるべく同じ月にする

少しでも高額療養費で得をするために、次のことを知っておきましょう。高額医療費の説明に「同じ月」とあります。同じ月とは、暦月で1日から末日までをいいます。たとえば10月1日から10月20日までの20日間入院して30万円の窓口負担(保険分)があったときは、Aさんについてさきほど計算した22万6941円が高額療養費として支給されます。しかし10月22日から11月10日までの20日間の入院で、窓口負担が10月分(10月22日から31日まで)15万円、11月分(11月1日から10日まで)15万円だったとすると、それぞれで計算をすることになります。さきほどの計算式で計算すると高額療養費は15万4882円、同一月の入院と比べると同じ治療を受けたにもかかわらず、7万2059円も自己負担が多くなってしまうことになります。入院時期が選択できる場合は、なるべく同じ月にまとめたほうが自己負担は少なくてすむことになります。

ここで注意することは「同じ医療機関」ごとに計算しなければならないことです。同じ病院であっても、総合病院などの場合は診療科ごとに違う扱いになります。ただし、入院していて複数の診療科を受診したときは歯科以外は同一となります。また、入院と通院も別々です。別々になるというのは、それぞれの窓口負担をそのまま足すことができないということです。同一月で窓口負担が2万1000円以上になるものだけ合算することができます。

ポイント2:家族で合算する

家族が同時期に病気やけがを患い、医療費がかさむこともあるでしょう。また一人であっても、患者が複数の医療機関にかかって相当の自己負担がかかるということも考えられます。

こういう場合、1人の負担が自己負担限度額を超えなくても、世帯全体で超えていれば、支給の対象となります。これを「合算高額療養費」といいます。ただし、世帯内で2人以上が自己負担2万1000円以上でなければ対象外となります。また、共働きで、それぞれ別の医療保険に加入している場合は、同一世帯とはみなされません。(表3参照)

[一般課税同一世帯のBさん、Cさん、Dさん(世帯合算)(表3)] 一般課税同一世帯のBさん、Cさん、Dさん(世帯合算)

ポイント3:過去12カ月に4回受けると自己負担限度額が引き下げられる

1人の診療が長期にわたったり、家族が次々に入院したりして、同じ世帯で高額療養費に該当する月が、その月を含めて過去12カ月に4回になると、4回目からは、自己負担限度額が引き下げられ、それらを超えた額が、高額療養費として支給されます。4回目以降は自己負担の上限額は4万200円(一般の場合)となります。

がんの治療は長期化することが多くあります。たとえ1回の申請で高額療養費として支給される金額が1000円に満たないような場合でも、多数該当となるかどうかの1回にはカウントされます。少額でも面倒くさがらずに申請をするようにしましょう。(表4参照)

[多数該当のケース(表4)]
多数該当のケース


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