後腹膜照射はしたほうがいいか?

回答者・新井 学
獨協医科大学越谷病院泌尿器科准教授
発行:2014年4月
更新:2014年11月

  

セミノーマの手術を受けました。その結果の診断では、病期はⅠbとのことでした。再発を予防するための後腹膜照射は受けたほうがいいのでしょうか。

(50歳 男性 神奈川県)

2次がんを避けるため行わない

獨協医科大学越谷病院泌尿器科准教授の新井 学さん

セミノーマはどんなに進行していても、正しい治療を受ければ基本的には治る病気です。手術後に適切な経過観察を行い、転移がわかった時点で抗がん薬治療を行えば、ほぼ100%の人が治癒します。

病期Ⅰのセミノーマは、がんが陰嚢にとどまっている範囲の早期の腫瘍です。それでも15~20%の症例に目に見えない転移がすでに生じており、術後1年半後ぐらいまでに再発すると言われています。

この再発を予防するために、後腹膜に放射線を照射する追加治療を選択することができます。この照射によって再発は5%以内に抑えられると言われています。

しかし、後腹膜に放射線照射を受けると、長い期間を経たあとに、消化管などに2次性のがんが生じるリスクが高いことが指摘されています。つまり、セミノーマはもともと8割以上の人が再発しないがんですから、そこに放射線をかけるということは過剰な治療になる上に、2次発がんのリスクも加わるため、選択肢としては可能であっても、通常は行われません。

ただし、適切な経過観察を受けることが条件です。セミノーマの再発・転移はすぐに発見しなくては、一気に病状が進みます。経過観察は半年から1年に1度の頻度で、期間はガイドラインでは5年以上となっていますが、私自身は8年以上行うことにしています。

また、もし再発・転移した場合は抗がん薬治療を行うことになりますが、精巣腫瘍の抗がん薬治療は効果が高いものの、高度な副作用を伴う治療です。そのため、再発・転移がわかった場合は、精巣腫瘍の治療経験の豊富な施設で治療を受けることをお勧めします。

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