縮小した腫瘍が大きくなった?リンパ節郭清は必要か
セミノーマⅡ(II)c期(後腹膜リンパ節転移6㎝~7㎝)と診断されました。BEP療法を3クール受けました。ブレオマイシンは投与できないこともありましたが、第2クール終了後に、リンパ節腫瘍が2.4㎝ほどに縮小したとの診断を受けました。しかし、第3クール終了後には、「腫瘍の大きさに変わりはないが、測り方によっては3.7㎝くらいに見えるところもある」とのことで、リンパ節郭清術が必要と言われました。第2と第3クールの間隔が43日も開いたこととの関連が心配です。*PET検査も検討に値するとも聞きました。
リンパ節腫瘍の大きさはどのように測るのでしょうか。PET検査はいつ行うのでしょうか。郭清術を行わない方法はあるのかも教えてください。
(60歳 男性 東京都)
A セミノーマでは郭清手術は行わない PET検査で経過をみる
古賀文隆さん
5㎝を超えるリンパ節転移をⅡ(II)c期といいます。日本だけでなく世界中の診療ガイドラインでBEP療法3クールが標準治療となっています。
まず、クールとクールの間が空いたことについてです。理想はインターバルを置かずに1クール3週間サイクルを続けて行うことですが、骨髄抑制という副作用を理由に間隔を開けるケースもあります。ブレオマイシンを投与できなかったのもその理由だと思います。
しかし、間隔が開いても3クール終了時での画像診断で腫瘍の縮小が維持されているのであれば、結果的には問題がなかったと考えてよいと思います。
次に腫瘍径の測り方ですが、まず治療開始前にCTで撮影し、治療後にも同じ方向から撮影することで縮小率を評価します。相談者の場合、6~7㎝が2.4㎝になったので、かなり縮小したということです。一方で、腫瘍は均一な球状ではないので、断面によって径も変わります。それが「測りようによっては3.7㎝」との表現になったと思います。
リンパ節郭清を勧められたとのことですが、セミノーマでは化学療法後に腫瘍が残っていても原則的に外科的切除(後腹膜リンパ節郭清)はしません。化学療法が効くからです。3㎝以下は通常経過観察をします。3㎝超えると残存腫瘍があると考えて、PET検査で病変の活動性(生存細胞の有無)を評価すべきです。セミノーマにおけるPETの有用性はエビデンス(科学的根拠)として示されており、PET陰性なら腫瘍が大きくならない限り経過観察となります。
PETを行う時期は、化学療法が終わってから2カ月開けて撮ることが推奨されています。終了直後はまだ死にかけたがん細胞が残っていたりして偽陽性が出る可能性があるためです。
追加の化学療法はBEPか、Q1で説明したVIPが選択されます。化学療法がつらいのなら、腫瘍が小さくなっているので放射線治療も選択肢の1つになります。
ちなみに、非セミノーマではリンパ節郭清となるのですが、腹部を大きく切る開腹手術は体に大きな負担がかかり、手術時間も長くなります。一方、腹腔鏡を使う低侵襲手術も普及しつつあります。当院では3D映像を駆使した腹腔鏡手術で対応しています。
*PET検査=放射性薬剤を体内に取り込ませての画像診断。全身の病巣を1度に調べられる