失敗から学ぶ、役立つセカンドオピニオンの求め方

文●まつばらけい 子宮・卵巣がんのサポートグループ「あいあい」主宰
発行:2004年3月
更新:2019年8月

  

「主治医に言い出せない」患者の心の壁、でも心ある医師はきちんと対応するはず

主治医に対して失礼ではないか、もう診てもらえなくなるのではと心配で、セカンドオピニオンを求めたいことをどうしても言い出せません。

同じような悩みを持つ方は、大勢います。でも、このような心配は無用な場合が増えています。むしろ、それは、患者さんの心の中にある壁かもしれません。躊躇したあげく、申し出たところ、何の問題も起きず、事務的に対応してもらえたという話を多数聞いています。もし、怒り出すような医師であったら、患者の人権をないがしろにしていますから、かかり続けることを考え直したほうがいいかもしれません。

また、セカンドオピニオンを求めて、主治医の治療方針に納得して戻ってきた患者を、心ある医師は拒むことはありません。患者には自分のかかる医師や医療機関を選ぶ権利があります。むしろ、「治療に前向きな患者」、また第三者の医師の目が入る可能性がある患者だと思うと、より丁寧に対応することもあると話す医師もいます。

セカンドオピニオン医は、「あなた自身のがん」に詳しい専門医を選びたい

セカンドオピニオンのチェックリスト

こんな場合はセカンドオピニオンを求めるとよい。

一次医療医から勧められた内容を確かめたい。
主治医が腫瘍科医ではない。
主治医があなたのかかったがんの治療に熟練していない。
最新の治療を受けられるという確証がほしい。
勧められた治療の副作用や長期的な影響が心配である。
研究段階の治療に関心がある。
主治医とのコミュニケーションに問題がある。
主治医がよく知らない治療法について読んだ。
主治医から、あなたの生活習慣や家族の希望、仕事上の約束ごとや願望について質問されなかった。
勧められた治療法はあなたらしい生活を送る上で妨げになるので、ほかの選択肢がないかどうかを知りたい。
主治医の知識、経験、判断に確信がもてない。
主治医の勧める治療法に苦痛を感じる。

(『がん 自分で選び、決定するために』アメリカがん協会編、細谷亮太監訳、保健同人社)

子宮体がんで主治医から準広汎子宮全摘出術を勧められ、できればリンパ節の郭清をしたくないと思いました。セカンドオピニオン医の心当たりがなく、婦人科の良性疾患のグループに事情を話し、温存に熱心だという医師(開業医)を紹介してもらいました。 その医師は相談中、学会発行の子宮体がんの治療法についての文献を探してきて、それと首っ引きで「リンパ節郭清をするのが標準療法だから、それが一番いい治療法」と言われました。結局、2人の医師の意見が一致したので、あきらめて郭清しましたが、いまだにあの医師に相談するのが適当だったのか、釈然としません。

セカンドオピニオン医に、主治医よりもがんに詳しくない医師を選んでいます。セカンドオピニオンには、主治医と同等か、それ以上にがんに詳しい医師、がんの専門医を選ぶようにしましょう。

また、良性疾患に対し温存に熱心な医師が、がんでも熱心とは限りません。子宮頸がん治療で子宮や卵巣の温存に熱心な医師が、子宮体がんや、卵巣がんの場合にも、温存や縮小手術に熱心とは限りません。

温存や縮小手術の可能性を模索する目的であれば、がん治療に経験が豊富で、できればその部位のがんの希望する治療方法に熱心に取り組む医師を選びます。

ある団体のセカンドオピニオン相談を利用しました。でも、対応してくれた医師は、消化器外科が専門で、卵巣がんのことはあまりご存知ない様子でした。

このごろ、市民団体などで、セカンドオピニオンを行うところもありますが、必ずしも、自分のがんに詳しい医師が相談に応じてくれるとは限りません。あらかじめ、担当するのが何科の医師で、自分のがんに詳しい人かを確認することをお勧めします。

また、がん専門病院にもセカンドオピニオン外来が設置される動きがありますが、希望する医師を選べないことがあります。その医療機関に受診したい特定の医師がいる場合、その医師宛ての紹介状を持参して、その医師が一般外来を担当する日に受診したほうが、納得のいく相談ができる場合があります。医療機関によって取り決めが違うので、詳細は問い合わせてみましょう。

子宮頸部腺がんが2a期で見つかって、産婦人科医には「腺がんは放射線が効かないから、手術しかない」と言われました。でも、手術を受けるのは、排尿障害など後遺症のことを考えると、絶対にイヤです。ほかの病院の産婦人科も受診したのですが、「一刻も早く切らなくちゃダメだ」と叱られました。結局、手術が怖くて、現在どこの病院にもかかることができないでいます。

子宮頸がんの1a2期~2a期は、同等の治療成績が得られる治療方法として、放射線治療があります。放射線治療にもメリット・デメリットがあるので、その説明もよく聞いた上で、選択してください。広汎子宮全摘出術や、それに加えて放射線治療を受けた患者に比べ、放射線治療単独や、放射線治療と抗がん剤療法との組み合わせのほうが、後遺症や合併症が少ないことがわかっています。

ただ、日本の婦人科医や一部の放射線科医の中に、「腺がんは放射線が効かない」という通念があります。欧米の標準療法では、腺がんも扁平上皮がんに準ずる治療が行われており、効果を上げています。そのような考えを持つ、放射線科医を直接受診されることをお勧めします。

がんという診断が確実なものかを確認したいときには病理医、化学療法について意見を求めたいときは、婦人科がんに詳しい腫瘍内科医というように、目的によって違う科の医師にかかる方法があります。

自分で相談に行けない場合は資料を代理の人に託すことも可能

再発して入院中で、自分でセカンドオピニオン医に受診できない状態です。何か良い方法はないでしょうか。

ご家族や友人に代理で、資料持参の上、受診してもらう方法があります。医師の中には、本人以外のセカンドオピニオンには応じない主義の人もいるので、できれば、あらかじめ代理の人でも応じてもらえるか、確認してみましょう(プライバシーの尊重や、遺産相続問題などが絡むこともあるため)。その際、本人の委任状を持参すると望ましいでしょう。

保守的な地域で他の意見を求められない場合、思い切って遠方に出かけてみよう

地方都市にある、大学病院で治療を受けています。主治医に「セカンドオピニオンを求めたい旨を伝えたところ、「どこの病院に行っても、どうせ、治療法は同じ。ムダだよ」と言って、紹介状や資料を出すのをしぶっていました。必死で説得して、なんとか出してもらうことができましたが、地元のがん専門病院の婦人科を受診したところ、「あなたの主治医は、僕の後輩だよ。彼だったら、心配いらない」と言って、紹介状や資料にもろくに目を通してくれませんでした。

一つの大学医学部の出身者が医師の大半を占めるような地域、セカンドオピニオンが普及していない保守的な地域では、受けた教育が同じであることや、セカンドオピニオン医が主治医に遠慮して、有意義な意見を求めることは難しい場合があります。遠方の医療機関にかかるより仕方がないこともあります。ただ、転院と違い、セカンドオピニオンは一度だけの受診で済むこともあります。

セカンドオピニオンの求め方

1.ファースト・オピニオン(前)医から説明を聞き、理解したうえで

セカンドオピニオンに熱心に取り組む医師によると、セカンドオピニオンを求める患者の中には、本来、担当医から受けるべき診断や治療の説明が不十分な状態の人がけっこう多いと聞きます。まず、担当医から受けるべき説明を受けてから。ただ、中には担当医が質問すると怒り出すなど、やむを得ない場合もあります。

2.紹介状、治療のデータを持参する

どんな名医でも、正しい診療情報がない中で、的確な意見を述べることは困難です。持参するのが望ましいのは、紹介状と、検査データのコピー、画像の貸出しまたはコピーです。  
病理検査を受けた人は、できれば病理標本のプレパラートも貸出してもらいます。病理診断はバラつきがあり、誤診もあり得ます。病理診断はすぐにはできない場合が多いので、その場合は、セカンドオピニオン医の病院に一時的に標本を預けることになります。  
中には、病理標本などの資料の紛失を恐れるなどの理由で、貸出してくれない病院もあります(医療機関には診療情報を5年間保管する義務がある)。その場合は、セカンドオピニオン医から前医に請求してもらう方法もあります。その場合も拒否されたら、その前医や医療機関は大いに疑ってみる必要があります。

3.セカンドオピニオンは医師選びが重要

ポイントとしては、勉強熱心な医師にかかる/がんの専門医にかかる/自分の希望する治療を行なっている医師を選ぶ/セカンドオピニオンに熱心な医師にかかる/出身大学や所属する医局の違う医師を選ぶ/必要に応じて違う科の医師(病理医、放射線科医、腫瘍内科医など)にかかる。

4.心の悩みや前医のグチのはけ口にしない

診断直後のショック状態で、やみくもに何かしなければと焦って、右往左往する人もいますが、問題を整理できず、ますます混乱してしまうことがあります。そのような時は、気持ちが落ち着くまで少しの間待ったり、メンタルケアにふさわしい相手と話しましょう。  
また、自分の担当医のグチや批判を長々とする人もいるそうですが、それは医療相談や患者仲間などに聞いてもらう方が向いています。

『子宮・卵巣がんと告げられたとき』29頁より

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