ネット型セカンドオピニオンの有用性が示された ――第24回 日本緩和医療学会学術大会 ランチョンセミナーより

講演者●柳澤史乃さん リーズンホワイ株式会社
講演者●御園生泰明さん LAVENDER RING主宰・肺がんサバイバー
取材・文●七宮 充
発行:2019年8月
更新:2019年8月

  

〝自分らしい人生〟を謳歌して生きるために

講演者●柳澤史乃さん リーズンホワイ株式会社

がん患者が納得のいく治療法を選択するため、主治医とは別の医師に「第2の意見」を求めるのが「セカンドオピニオン」である。ネット型セカンドオピニオンは、これをインターネットを用いて行うもの。医療の過疎地域に住んでいたり、通院時間が取りにくい人でも、自宅で複数の専門医のオピニオンを聞くことができる利点がある。ここでは、私とネット型セカンドオピニオンの出会い、その目指すところやメリット、具体的な利用の仕方などについて話してみたい。

〝自分らしい人生の選択〟をする手伝いがしたい

まず、自己紹介を兼ねて私自身のことに触れたい。看護師を目指していた高校生のとき、祖母が住み慣れた自宅で死ぬことを望んでいたにもかかわらず、その希望をかなえてあげられなかったという苦い経験をしている。それまで「あなたは優しい子だから看護師にぴったりね」と言われてきたが、優しさだけではどうにもならない現実を突きつけられ、いったんは看護師になることをあきらめた。

しかし、死は誰にでも訪れる。その時、大切な人が最後まで自分らしい生き方をしてほしい、そんな願いから、優しさという名の〝強さ〟を持った看護師になることを改めて決意した。

その後、20年近く大学病院の外来に勤務し、2009年にはがん化学療法看護認定看護師の資格を取り、外来業務と兼務しながら看護外来で、がん患者の治療選択における意思決定のサポートを行ってきた。しかし、大学病院には所属部署ごとにカベがあり、窮屈な感じがぬぐえなかったし、また兼務だったので、患者の支援に十分時間を割けないという悩みもあった。

そうした中で、「もっと多くの人の、自分らしい人生の選択をする手伝いがしたい」という思いが次第に募っていった。そんな時に出合ったのが、がん患者のセカンドオピニオンを、インターネットを介して行う「ネット型セカンドオピニオン」である。

ネット型セカンドオピニオンとは?

では、ネット型セカンドオピニオンとはどのようなものか。システムは、がん治療に不安や悩みを持ち、主治医以外の専門医の意見を聞きたい人が、相談したい内容をネットにアップロードする。相談の内容について、サービスに登録している複数の専門医がセカンドオピニオンを受ける意思表示を行う。次に依頼した患者はその中からセカンドオピニオンを求めたい医師を選ぶ、という仕組みである(図1)。

■図1 ネット型セカンドオピニオンの仕組み

これを利用したい方は、まずサービスに利用登録し、ネット上のフォームに沿ったかたちで、病名など必要な項目や相談内容を入力する(図2)。

■図2 ネット型セカンドオピニオンの実際の利用画面

主治医と意見を共有するには、診療情報提供書や画像、検査情報などが欠かせないが、現状では医師への遠慮があって、言い出せないケースも多い。そこで、オペレーター(私)が間に立ち、相談者がどのようなことに悩み、迷い、疑問を感じているかをチャットのやり取りなどで聞き出し、その助けとなる意見を専門医からもらうには、どのような情報が必要かを伝え、入手していただくようにしている。

これらの情報が得られると、いよいよ医師に向けて患者の悩みを公開する。医師はそれを閲覧して挙手してくれるが、より適切な医師からオファーが得られるように、登録医62名の中から相談内容に専門性がより合致する医師を探して依頼する。それでも回答がなかったり、該当の専門医がいない場合には、弊社が運営する医療チームのコミュニケーションツールに登録している4,400名の医師にアプローチをかけている。ちなみに、登録医は、DPC病院に所属し、医師歴10年以上であることが条件になっている。

そこには、内向きな心を外に向かわせるリアルな世界がある

ネット型セカンドオピニオンの良さとして、①患者や家族が病院に足を運ばなくても、自宅でセカンドオピニオンを受けられる、②予約不要、③通常の受診型のセカンドオピニオンでは2週間ぐらいかかるとされるが、短時間(最短2日)で得られる、④全国の専門医から複数のセカンドオピニオンを得ることが可能――などが挙げられる(図3)。

■図3 ネット型セカンドオピニオンの良さ

■患者やその家族がわざわざ足を運ばなくとも、自宅でセカンドオピニオンが得られる

■予約不要

■短時間(最短2日)で得られる

■全国の専門医から複数のセカンドオピニオンを得ることが可能

しかし一方で、「そもそもネットなんて怪しい」、「セキュリティは大丈夫か」、「こんなことをする医師ってヒマなんでしょう」、「セカンドオピニオンは対面が基本では」、といった意見が多く寄せられるのも事実である。

しかし、ネット型セカンドオピニオンを受けたがん患者の中には、「セカンドオピニオンを受け、今の治療でよいと納得した」、「安心感が得られた」、「新たな選択肢があることを知り、希望が湧いた」という方が少なくない。

がん患者は、死と直面し、心も体も内向きになってしまいがちである。しかしネット型セカンドオピニオンを通して心が外に向き、人生を前向きに考え始めている人を、私自身、多く目の当たりにしている。

入口はネットだが、内向きな心を外に向かわせるようなリアルな世界がそこにある。今後も多くの方に寄り添い、ネット型セカンドオピニオンを利用する一人ひとりが、自分らしい人生を選択できるようサポートし、人生を謳歌する世界を作っていけたらと思っている。

ネット型セカンドオピニオンを詳しく知りたい方は、Findmeをご参照ください。

 

がんになっても、いきいきと暮らせる社会をめざす

講演者●御園生泰明さん LAVENDER RING主宰・肺がんサバイバー

私はがん患者です。広告会社に勤務しながら、仕事と治療を両立させています。また、がんになっても笑顔で暮らせる社会の実現を目指して、さまざまな活動を有志によって運営するプロジェクト「LAVENDER RING」を立ち上げました。ここでは、がん患者としての私の人生、そしてLAVENDER RINGの活動を紹介します。今日の話を聞いて、なにか1つでも持ち帰っていただけるものがあれば、演者としてこれ以上の喜びはございません。

FIGHT TOGETHER

現在、私は41歳。妻、長男(10歳)、長女(6歳)と暮らしています。広告会社の仕事が好きで、一生懸命働いていましたが、2015年8月、健康診断で肺に影が見つかり、10月、肺腺がんステージ4と診断されました。どうしよう、目の前が真っ暗になりました。このとき痛切に感じたのは「死の恐怖」と「治療と仕事の両立」。これをどうクリアすればいいのか、すごく悩みました。

確定診断が下った日、病院を出てすぐ上司に連絡しました。

私「がんになりました。根治が難しいとのことです。会社への説明はどうしたらいいですか?」

上司「すべてオープンにしたほうがいい」

しかし、オープンにするといっても、どう説明すればいいのか。がんになったことは報告できるが、その後の言葉が見つからない。「がんになったから、仕事を取ってこられなくても許して下さい」、「がんになったから失敗しても勘弁して下さい」とでも言えばいいのか。とてもそんなことはできません。

すると上司は「よしわかった。任せろ」と。一体どうする気だろうと思っていると、彼は、私の顔写真の上に〝FIGHT TOGETHER〟(共に戦おう)というメッセージを入れたステッカーを作り(画像1)、それを自分のPCの背面に貼りつけた(画像2)。そして、このPCを持って社内、社外の打合せに行く。ステッカーは目立つから、相手は「これ御園生さんでは。これはなんですか?」と聞く。そこで上司が「実は、彼ががんになった。もしよければ一緒に応援してもらえないか」とステッカーを1枚渡す。友だちの輪ではありませんが、それが次々と広がり、他の上司、同僚、取引先などが私の病気を知り、理解を示し、応援してくれるようになりました。お陰で、私は体調が悪いときでも、黙って抱え込むことがなくなり、治療に専念することができるようになりました。

■画像1 FIGHT TOGETHERというメッセージが入ったステッカー

■画像2 ステッカーを貼ったPC

周囲の応援で〝治療と仕事〟を両立

また、上司は部員全員にメールを送付。私が肺腺がんになりステージ4であること、現在、分子標的薬などの新しい治療がどんどん確立によって、仕事と治療の両立が可能になりつつある状況なので、可能であれば仕事は普通に続けたほうがよいと医師からアドバイスされていることなどを伝え、部員ができるサポートはすべて行おうと協力を求めてくれました。

そしてその上で、「サポートを通じて、『御園生君と一緒にがんと戦う』という意識を持ちたいと思います。がんと戦っていくには強い意思とポジティブな気持ちが必要です。腫れものに触るような後ろ向きの姿勢でなく、『明るく一緒に戦おうぜ』という気持ちを共有して、チーム一丸となって、御園生君をもりたてていきたいと思います。彼が全快したとき、その過程を通じてチームに大きな財産が残ると思っています」と記していた。

このように、上司が寄り添い、周囲が応援してくれる空気を作ってくれたことで、「仕事と治療を両立してもいいのだ」という安心感が得られました。また、「彼と一緒にがんと戦うことでチームは成長する」とのメッセージから、それで役に立てるなら、少しは甘えてもいいかもしれない、とも思わせてもくれました。

もう1つ、私を奮い立たせてくれたものがあります。湘南ベルマーレ・フットサルクラブの久光重貴さんの写真です。久光さんは、私と同じ肺腺がんのステージ4だが、治療を続けながら現役選手としてピッチに立っている。精神的に落ち込んだ時、この写真を見て、「がんになってもフットサルで日本一を目指している選手がいる。であれば、オフィスワークだって十分できるはず」という気持ちが湧いてきました。この経験が後に、LAVENDER RINGの活動につながっていきました。

がんになっても、いきいきと暮らせる社会を実現したい

とはいえ、がんになって目の前に死が突きつけられている状況は変わりません。それまで、「時間は有限」と観念の上では知っていたが、それを自分のこととして捉えたことはありませんでした。しかし、がんになって初めて「時間は限られている。本当に死ぬのだ」と強く意識するようになりました。そして芽生えてきたのが、人生を有意義にしたいという思いです。

幸い、私は家族や職場の理解、サポートによって人生を謳歌できています。しかし、「自分だけよければそれでいいのか」、「社会に対して自分が貢献できることはないのか」、そう考えるようになりました。

同じ、肺腺がんの仲間をみると、皆が人生を謳歌しているわけではありません。中には、がんになったことで、仕事から外されたり、窓際に追い込まれた人もいます。その要因を探ると、「がん=死」と考えている周囲の認識が浮かび上がってきます。しかし、決して「がん=死」ではありません。現に、私自身がステージ4のがんと診断されたにもかかわらず、3年半以上生きています。このような、がん=死という誤った思い込み・偏見が、がん患者、がんサバイバーが生きにくい社会を作っていると思います。

では、これを打ち破り、がんになってもいきいきと暮らせる社会を実現するにはどうすればいいのだろう。アプローチ法はいろいろあると思いますが、私が思い浮かべたのは、先に触れた、湘南ベルマーレ・フットサルクラブの久光重貴さんの写真です。この1枚を見て、私が「がん=死」という呪縛から解放されたように、これを広く伝えれば、周囲の偏見も消え、がんサバイバーを勇気づけることになるのではないかと考えました。

そこで再び上司に相談し、資生堂などの協力を得て立ち上げたのが、様々な活動を有志によって運営するプロジェクトLAVENDER RINGである。LAVENDERはすべてのがんを表す色、RINGはつながり。すべてのがんになった人がつながるように、という意味を込めて名付けました。

主な活動は「Makeup&Photo」、がんと闘う〝がんサバイバー〟たちの笑顔を撮りオリジナルポスターにする企画です。撮影を希望したがんサバイバーが、資生堂のスタッフにヘアメイクをしてもらい、資生堂所属のプロのフォトグラファーが、そのいきいきとした表情を撮影していきます。できあがった写真には、サバイバー本人が、いま熱中していることや取り組んでいることを手書きで書き添え、その場でプリントアウトし、プレゼントします。ある人は「SMILE WITE CANCER(がんと一緒に笑っていたい)、またある人は「DANCE WITE CANCER」とメッセージは様々です(画像3)。

■画像3 がんサバイバーの笑顔

これまで、180人あまりがこのMakeup&Photoに参加し、写真を撮っています。出来上がった1枚1枚の写真をみれば、皆さんが人生を謳歌していることを実感できるはずです。

人生を謳歌したいのであれば、貴重な時間にただ立ち止まるのではなく、「一歩前に踏み出す」という選択肢があってもいいのではないか。それを知ってほしい。必ず前に踏み出さなければならないということではないが、そうした選択肢がある社会は素晴らしいのではないか。私はそう思っています。

がんになっても笑顔で生活できる社会の実現を目指す、LAVENDER RINGのサイトです。

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