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祢津加奈子の新・先端医療の現場17

自力排尿を可能に!「新膀胱」造設手術

監修●武藤 智 帝京大学医学部付属病院泌尿器科准教授
取材・文●祢津加奈子 医療ジャーナリスト
発行:2012年7月
更新:2019年8月

  
武藤智さん
「腸を使って新しい膀胱を造る
ことができます」と話す
武藤智さん

膀胱の全摘手術を受けると、以前は腹壁に造った穴から尿を排泄することが多かった。しかし今では、小腸を使って「新膀胱」を造設することで、自分で排尿することが可能になった。帝京大学泌尿器科准教授の武藤智さんによると「条件さえ合えば何歳でも新膀胱は可能」だという。

まずは膀胱を全摘

膀胱は、前立腺とともに全摘する

膀胱は、前立腺とともに全摘する

今日、手術を受けるのは51歳の男性。血尿から膀胱がんと判明。武藤さんによると、「膀胱筋層より深く食い込んだ浸潤性の膀胱がんだったので、膀胱全摘、さらにご本人と相談して新膀胱を造設することになった」そうだ。

手術は、まず膀胱を摘出するために腎臓から膀胱につながる2本の尿管を切断するところから始まる。下腹部を切開し、腹膜を開く。血管を傷つけないように周囲の膜を剥離しながら、尿管を露出していく。

最初に露出したのは右側の尿管だ。これを膀胱の上で切断し、腎臓側の断端にカテーテルを挿入、腎臓から出る尿を体外に排泄する。同じように、左側の尿管も露出して切断。

次第に膀胱の形もはっきりとしてきた。膀胱の出口近くには尿道をくるむように前立腺が存在する。膀胱全摘術では、前立腺の下で尿道を切断して膀胱を摘出する。つまり、前立腺も膀胱と一塊に摘出する。

小腸から新膀胱を造設

[新膀胱の作り方]
新膀胱の作り方

ここまで膀胱全摘が終わるまでが、およそ3時間。ここから、新膀胱造設術がスタートする。

新しく膀胱になるのは、小腸だ。大腸に近い部位を60㎝、正確に計って両端を切断する。付着している腸間膜は付けたままにしておく。残った小腸は、自動吻合器を使ってつなぎ合わせた。

さらに、切断した小腸は端のほうを7㎝ほど残して縦に切開する。つまり、円筒を切って開く感じだ。この開いた部分を真ん中から半分に折り畳んで袋状にていねいに縫い合わせる。これで新しい袋、つまり新膀胱ができたわけだ。

袋ができたら、水を入れてふくらんだ形をみる。武藤さんによると「風船と同じで1番下の部分を尿道と縫い合わせたい」からだそうだ。

その袋の1番下に穴を開けて少し粘膜を出っ張らせ、尿道と縫い合わせる。逆側は、尿管とつなぐ。といっても、新膀胱はふつうの膀胱より小さい。そこで、2本の尿管を1本に縫い合わせ、小腸の切り開かなかった部分、つまり新膀胱の頭と縫い合わせる。これで、新膀胱が設置されたことになる。

膀胱の摘出から新膀胱の設置まで、合わせて7時間近い手術だった。まだ、尿は腎臓につないだカテーテルから排泄されているが、2週間もすればカテーテルは全て抜去し、新膀胱にたまった尿を尿道から排泄できるようになるそうだ。

ストーマから新膀胱へ

全摘後、すぐに生検を行い、迅速病理診断をする

前立腺部にがんがないことが新膀胱造設手術の条件。全摘後、すぐに生検を行い、迅速病理診断をする

膀胱がんは高齢になるほど多く、最近増加しているがん。男性が女性の3倍くらい多いのも特徴だ。

膀胱がんにも、大きく2種類ある。膀胱壁の比較的浅い部分にできるのが筋層非浸潤性膀胱がん、筋層より深く食い込んだのが浸潤性とよばれるがんだ。武藤さんによると「圧倒的に非浸潤性が多く、膀胱がんの8割を占める」という。こちらは、内視鏡手術などで治療できる場合もあるが、そうはいかないのが浸潤性がん。

「膀胱全摘が必要になるのは、ほとんどが浸潤性」なのだそうだ。

ただ、以前は膀胱を摘出すると、「回腸導管(腎臓につないだ小腸を腹壁につなぐ)などの方法で、腹部に排泄用の穴を作り、ストーマ(人工膀胱)に尿をためて捨てるという方法しかなかった」という。つまり、袋に尿をためるしか手段がなかったのである。

もちろん、この方法も「昔は、ストーマパウチの種類も少なくて皮膚がただれたりしましたが、今は改良されてそういうこともなくなりました。専門のナースもいるので、きちんと管理してくれます」と、武藤さん。

むしろ、定期的にトイレに行けないなど制限のある人にとっては、ストーマのほうがいい場合もあるという。

だが、「自分のボディイメージが変わることで、つらい思いをする人も多かったのです」と武藤さんは語る。それまで、トイレで排尿していたのに、袋にためて捨てるようになる。その違いに、とまどい悩む人もまた多かったのである。そこに登場したのが、新膀胱だった。


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