がんのチーム医療・施設訪問17
千葉県がんセンター前立腺センター(千葉県千葉市)

患者を地域で支える診療体制を構築 前立腺がん地域チーム医療

取材・文●「がんサポート」編集部
発行:2016年1月
更新:2019年7月

  

早期発見、治療で治る そのための適切な診断を連携で
植田 健さん 千葉県がんセンター医療局局長/前立腺センター・泌尿器科部長

私が千葉県がんセンターに赴任して10年ほどになります。すでに前立腺がんの治療では日本有数の実績があり、診療科間の合同カンファレンスもありました。そのように前立腺がんを総合的に診る環境が定着しているので、1時間で10数件のデータをレビュー(精査)することもスムーズに行われ、意見をしっかりと言い合うことができています。

当時の前立腺がんの新患は年間250人ほどでしたが、最近は約500人にまで増えました。「前立腺センター」を標榜したのは、平成23年(2011年)です。前立腺の治療に力を入れていることを患者さんや地域社会にアピールするためです。泌尿器科というよりも、何を中心にしているかをわかりやすくしようとしました。もちろん、膀胱がんや腎がんなどにも対応しています。

QOL向上につながる地域連携を

私が医師になったころは、前立腺がんで来院する患者さんはみんな進行がんでした。今はPSA検査が普及したことや治療法の進歩があり、早期に発見して適切な治療すれば治るがんとなりました。術後も食事や呼吸に影響が少ないので、消化器や循環器の疾患よりも高いQOLを保つことができます。

私は大学病院勤務やカナダ留学を経て、前立腺に特化した医師となりました。手術だけではなくホルモン療法や放射線療法もあり、治療法がたくさんあることに興味を持ったからです。現在でも臨床試験(治験)を含めた新しい治療や地域としてのより良い治療体制のための取り組みを続けています。

50歳過ぎたらPSA検査を

私はがんを経験しています。10年前にハイリスクの急性リンパ性白血病と診断され、骨髄移植を受けました。現在では職場復帰し、専門医からは治癒したと言われています。患者さんに体験談を話すことはほとんどありませんが、患者さんに心の葛藤があるようなときには、患者さんの気持ちや家族背景、生活状態などの相談の中で、サバイバーとして話題にすることもあります。

今やがん罹患は当たり前です。いつなってもおかしくないと思って、情報は自身で持っていたほうがいいでしょう。

前立腺の場合は50歳を過ぎたらPSA検査を受けたほうがいいです。自分の基本的数値を知っておけば安心です。テレビの医療番組も参考にはなるでしょうが、振り回されずに正しい知識を持って、冷静に対応することをお勧めします。

日本有数の前立腺がん治療実績

千葉県がんセンター

PSA(前立腺特異抗原)検査の普及もあり、患者数が増加している前立腺がん。それに加え、ロボット支援下手術や新薬の数も増えている。病院で患者を抱え込まずに、1人ひとりに合ったケアをするためには、的確な診断と地域のクリニックとの連係が必要だ。日本有数の前立腺がん治療実績を持つ千葉県がんセンターを取材した。

関連領域の専門医による合同カンファレンス

合同カンファレンス参加スタッフ。前列左が泌尿器科医長の小林将行さん

千葉県がんセンターでは、毎週水曜の夕方、白衣をまとった医師たちが1つの部屋に集まって来る。「前立腺センター」の合同カンファレンスだ。前立腺がんと診断された症例の検査データをレビュー(精査)し、治療方針の決定につなげる。

大きなモニター画面に目を凝らすのは、泌尿器科、放射線治療部、画像診断部、臨床病理部の医師約15人。それぞれの専門領域の立場からレビューする。この日議題とされたのは13の症例だった。泌尿器科の担当医師が生検、画像検査、血液検査、直腸診のデータなどを読み上げながら示す。

これに対し、画像診断医がCT(コンピュータ断層撮影)、MRI(磁気共鳴画像)、骨シンチグラムなどの画像を見ながらコメントしていく。同院では、PSA値で引っ掛かり検診に訪れた患者には、リスクの高低にかかわらず、全例でCT、MRI、骨シンチグラムを撮る。

医療局局長で前立腺センター・泌尿器科部長の植田健さんは、「合同カンファレンスでは多いときに20例ほどを検討することもあります。患者さんの選択と同意を得て、治療に進むための重要なステップです。当院ではありませんが、担当医が放射線治療と決めた後に、放射線の専門医が診たところ適応ではないと判断され戻されたということもあります。患者さんとしては、治療方針が変わることで大いに混乱してしまうので、それぞれの専門医の眼で早い段階で検討してもらいます」と話す。

共通の説明用紙に分かりやすく「あなたは何期(ステージ)なので治療適応となるのはこの治療法です」と書いて提示し、考えてもらう。もちろん、他院でのセカンドオピニオンを希望する場合には妨げない。同院でも他院で治療を受けた患者さんを対象にセカンドオピニオン外来を設けている。

連携のメリットは広がる

植田さんは、さらにこの合同カンファレンスのメリットを話す。

「CTは胸から骨盤まで撮るので、肺がんや胃がん、膵がんなどが見つかることもあります。がんだけではなく、ほかの悪性疾患、尿路結石なども見つけられます。総合力としての効果ですね」

画像診断で肺や胃に異常が見つかれば、前立腺がんは進行がゆっくりなので、悪性度の高い疾患の治療に回ってもらうことになる。

泌尿器科、放射線治療部、画像診断部などのスタッフによる合同カンファレンス

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