がんのチーム医療・施設訪問16
国立がん研究センター東病院 食道外科チーム(千葉県柏市)

社会復帰までが医療の責任 退院してからもしっかりフォローアップ

取材・文●「がんサポート」編集部
(2015年12月)

  

術前から退院までではなく、社会復帰までトータル治療を地域まで広げる
大幸宏幸さん 国立がん研究センター東病院食道外科科長

一般的な外科治療においても「手術をして終わり」という時代は終わり、術前からの医療介入の大切さが指摘されていますが、がん治療ではさらに社会復帰までを見据えなければなりません。食道がんではより重要度が増します。退院後のプログラムを行っている医療機関はあまりないのではないでしょうか。

患者さんが一番不安なのは退院後です。食道がんの手術は大掛かりなため、体に劇的な変化が起きているからです。入院中は医療関係者がサポートできますが、退院後は本人任せとなってしまいます。私はトータル治療という概念を術前から退院までではなく、社会復帰まで視野に入れるべきだと見直しました。食道がんは特にケアが必要とされるので、サポートチームが必要と思い、周りを見ると専門性と高い知識、熱意あるスタッフがたくさんいました。医師だけが対応出来る範囲は限られています。その人たちとチームを組んだ医療体制を作りました。

電話フォローアップも

患者教室や専門外来は取り組みの大きな柱ですが、電話フォローアップというシステムもあります。退院した後に不安になっても、参考書やインターネットで悩みにピタリと一致する答えを探すことはとても難しいことです。そのような場合には、気軽に当院の代表番号に電話して、お名前と手術した日などを伝えてもらえれば、病棟や看護外来の看護師などが対応します。医師に相談するよりも看護師のほうが入院中からの親しみもあると思います。

退院後は、まず2週間後に初回外来があり、そのあとは1カ月後の患者教室、リハビリがうまくいっていれば次からは4カ月おきに再発を警戒するCTなどの検査となります。1年に1回は内視鏡による検査も大切です。

社会復帰には地域との連携も大切

今後は、地域医療との連携が課題です。退院したあとの実際の生活では、ご家族やケアマネジャー、訪問看護師などが強く関わることになるからです。我々の取り組みを理解してもらうために、そのような方々を患者教室に招いて地域への広がりを進めているところです。

また、セルフモニタリングといって、患者さんに自分の健康を自分で管理してもらう取り組みにも力を入れていきます。リストバンド型活動計をつけてもらい、歩数や心拍数を記録します。インターネットでそのような情報を安全に活用できれば、地域包括医療も進展します。これからも地域連携を深めることで新しい医療体系を確立していきたいと思います。


社会生活復帰までを見据えた取り組みを目指す

国立がん研究センター東病院

数多いがんの種類の中でも食道がんは手術が大掛かりになるため、退院後も違和感や悩みを持つ患者さんが多い。多職種の医療関係者がそれぞれの専門的立場から、術前には不安を和らげ、術後も丁寧な生活指導・相談することが必要だ。国立がん研究センター東病院の食道外科チームでは、「食道がん患者教室」などを開いて、患者さんの社会生活復帰までを見据えた取り組みを目指している。

退院後の「患者教室」で勉強と悩みの相談

「夜中に咳が出て眠れなくなり、生活のリズムが崩れて困っています」

「再発の可能性はどれくらいでしょうか」

国立がん研究センター東病院で毎月1回開かれている「食道がん患者教室」での、患者さんからの質問だ。1つひとつに医師や看護師らが丁寧に答えていく。

同院で食道がん患者教室を始めたのは1年半前。対象は退院後1カ月ほどの患者さんで、本人だけではなく、夫婦で参加するケースも多い。生活を送る上でのアドバイスや質疑応答が主なメニューだ。

食道がんの手術は、食道を切除した後に食道の代わりとなる胃管を胃を用いて再建するという大掛かりなものだ。同院では大きく胸や腹部を切らなくて済む胸腔鏡と腹腔鏡による手術を積極的に行っているが、それでも退院後の体の変化に戸惑う患者さんは多い。退院後によく見られる症状としては、息切れ、つかえ感、セルフケア能力の低下、食事摂取量の低下などがある。

「これまでは退院して〝終わり〟という医療でしたが、患者さんの社会生活復帰までを見据えた取り組みを目指しています」と同院食道外科科長の大幸宏幸さんは患者教室の大切さを強調する。

大幸さんがリードして「食道外科チーム」ができ、患者さんの目線に立った術前から手術、退院、そして社会生活までをトータルにケアするチーム医療が始まった。

患者教室はその中でも大きな役割を持つ。当初は60分間のプログラムだったが、伝えることが多く、また患者さんの興味も高いため、現在は90分間にわたり行っている。

食道外科手術チーム

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