がんのチーム医療・施設訪問13
国立がん研究センター中央病院 造血幹細胞移植科チーム(東京都中央区)

多職種で移植の様々な局面をカバー 退院後のフォローアップも大切に

取材・文●「がんサポート」編集部
発行:2015年7月
更新:2016年9月

  

合併症の管理を頑張ることが完治につながる
福田隆浩さん 国立がん研究センター中央病院 造血幹細胞移植科科長

造血幹細胞移植は化学療法では治らない症例が対象で、完治が期待されるという大きなメリットがあります。合併症が多いことが問題ではありますが、その発症を抑えられれば、治療成績は上がります。多くのがんでは新しい抗がん薬が開発されると治療成績が上がりますが、移植の世界では合併症の管理をしっかりすることが完治の可能性を高める治療になります。その合併症対策は、医師だけではなくチームで取り組むことで充実すると考えています。

フォローアップ外来の大切さ

患者さんにとっては、移植直後の苦しい急性期を切り抜けることをまず目指しますが、移植後2年以上経った段階で合併症により亡くなる方が1割ほどいらっしゃるのが現実です。GVHD、臓器障害、2次がんなどが主な原因です。緊急入院もあります。長い闘いになります。

その手助けとして、移植後長期フォローアップ(LTFU)外来があります。本邦の造血細胞移植学会でも長期フォローアップシステムが移植を行う多くの医療施設に整うことを目指して、看護師の研修制度を行っていますが、まだ十分に広がっているとは言えません。

また移植後合併症に対する治療薬には、未承認薬がとても多いのも課題です。当院では、それらの薬剤や検査も積極的に使用して、学会や論文などで安全性や有効性を報告することで適応拡大の認可につなげたいという取り組みをしています。

ドナーさんの気持ちも大切に治療を頑張って

退院して長期フォロー段階にある患者さんには、急性期を乗り越えた頑張りをたたえたいと思います。しかし、ここで「もう大丈夫」ではないので、ここまで頑張って完治に近付いているのだから長期に定期的にチェックすることで、さらにいい状態を保っていけるように頑張ろうということを呼びかけています。

また、同種移植はドナーの協力なしには成り立ちません。ドナーの方が高いリスクを負ってまでボランティアで提供してくれたことを忘れずに、家族など支えてくれた周囲の方々のことにも目を向けていただければと思います。

造血幹細胞移植を広汎な職種によるチーム医療でサポート

国立がん研究センター中央病院外観

血液がんにおいて、造血幹細胞移植は最後の砦だ。しかし、完治が期待できる一方で、リスクも高い。大量の化学療法で副作用に悩まされ、移植後にはつらい合併症などに苦労するケースも多い。国立がん研究センター中央病院では、広汎な職種によるチーム医療を取り入れ、細やかな対応を目指している。

幅広い職種が集まる定例会議

「患者さんがご飯を食べられなくなったのですが、食事の工夫でどうにか1日500kcalまで食べられるようになりました」

「PS(全身状態)が一番大事です。移植に向かい、栄養状態を含めたPSをいかに上げていくかについて情報交換を続けて、みなで診ていきましょう」――

国立がん研究センター中央病院の造血幹細胞移植科が毎週月、金曜日に行う多職種チームカンファレンスは1時間以上に及ぶこともある。出席者は20人ほど。医師、看護師、薬剤師、管理栄養士に加え、移植コーディネーターらも加わる。患者さんたちの状態を報告し合うとともに、治療方針の確認や今後の対応について話し合われる。会議中もPHSが鳴って医師らが急いで病棟に向かう場面も。患者さんの状態は医師を離してくれない。

毎週月、金曜朝に開かれる多職種カンファレンス

専門家のカバーで成り立つ移植治療

同科科長の福田隆浩さんは「複数のメンバーが話し合い、カバーし合いながら行わなければ移植治療は完成しません。移植は大量抗がん薬による副作用に加え、ドナーの免疫反応による合併症(移植片対宿主病:GVHD)や感染症なども非常に多い。医師1人では担えないので、チーム医療の重要性を感じています」と話す。

同院は年間100人前後が移植を受け、常に30~35人の移植患者が入院している日本有数の移植医療機関だ。移植チームのスタッフは、移植専門医師が6人、副担当医が5~6人、看護師は25人ほどで、薬剤師は3人、管理栄養士が1人、移植コーディネーターが1人で、臨床試験・治験コーディネーターが2人という布陣。

さらに、「ほかの部門との連携も進めています。移植細胞を採取し、処理して保存する、解凍して投与するといった移植の根本である細胞処理はとても大切なので、昨年(2014年)10月から合同チームで当たっています」。具体的には、輸血療法科の医師や臨床検査技師、持続血液透析や人工呼吸器などのスペシャリストである臨床工学技士らと横断的に取り組むようになった。

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