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放射線の副作用対策
放射線の副作用の特徴をよく知り、自己管理をしっかりと
放射線治療の副作用は日常生活の過ごし方次第で軽減可能

監修:末國千絵 国立がん研究センター中央病院看護部放射線治療科外来看護師
取材・文:伊波達也
発行:2011年9月
更新:2013年6月

  
末國千絵さん
「不安があれば、遠慮なく
医療者に相談を」と話す
末國千絵さん

放射線治療によって、皮膚炎や粘膜炎、下痢など、照射部位によりさまざまな副作用が現れます。
しかし、どんな副作用が出るのか、特徴を知って自己管理すれば、未然に防げたり、症状を軽度で抑えられるものもあります。

がん細胞は放射線のダメージを受けやすい

放射線治療は、手術に比べて体への負担が少ない治療といわれますが、がんをたたくと同時に正常細胞が傷ついてしまうため、副作用は否めません。

「最近の放射線治療は、治療する病巣を絞り込んで放射線を照射することが可能になったため、正常組織をできるだけはずして治療ができるようになってきました。とはいえ、腫瘍の前後にある正常組織にも放射線が透過するため、副作用が出てしまうのです」

そう話すのは、国立がん研究センター中央病院放射線治療科外来看護師の末國千絵さんです。

[放射線治療で受ける放射線の線量と細胞の生存数の関係]
放射線治療で受ける放射線の線量と細胞の生存数の関係

放射線を多くかければかけるほど、細胞はダメージを受けるが、正常細胞よりも腫瘍細胞のほうが、より多くのダメージを受けやすく、死滅しやすい

[放射線の照射野とは?]
放射線の照射野とは?

皮膚炎が出現するのは、マーキング部位だけではない。放射線は必ず皮膚を通過して体内のがんに到達し、体を突き抜けて体外へ出ていくので、照射の入口側の皮膚と出口側の皮膚両方に皮膚炎が発症する

放射線治療は、正常細胞とがん細胞のダメージの受け方の違いを利用して行われています。

がん細胞は、正常細胞よりも放射線のダメージを受けやすいという特徴があります。一方、正常細胞はダメージを受けても修復力が早く、1回ダメージを受けても次の日には回復する力を持っています。

その回復能力の違いを利用し、時間をかけ、細かく20回、30回と分けて、正常細胞を回復させながら、がん細胞に多くのダメージを与えられるよう少しずつたたいていくのです。

1日2グレイ(Gy/放射線が物質に吸収されたときのエネルギー量の単位)で週5日、1週間10グレイほどで、総線量50~70グレイ程度をあてるのが平均的な治療です。また、疼痛などの症状緩和のための照射の場合は30グレイ程度です。

「放射線治療は、がんの種類やがんのできた部位によって、放射線をあてる線量の上限が決まっていて、それを考慮しながら行います。のどに照射をし、唾液腺がダメージを受けると副作用で唾液が出にくくなりますが、がんの種類により使用する放射線の量が異なるため、同じ場所に照射しても副作用の程度に差が出る場合があります。たとえば、放射線に反応しやすい悪性リンパ腫の場合は30~40グレイ照射しますが、下咽頭がんなどの頭頸部がんでは70グレイ程度あてる必要があるため、口の渇きなどの副作用が強く出ます」

あらゆる照射で現れる副作用は皮膚炎

放射線治療による副作用は、放射線があたった部位に現れます。治療開始直後に出るもの、治療を始めてから約2週間(治療回数で10回程度以降)で出始めるもの、終了後かなり時間を経てから出るものなどさまざまです。副作用の症状は、放射線があたる部位によって違います。

どのがんにも現れる副作用が、日焼けのような皮膚炎です。放射線は必ず皮膚を通過して体内のがんに到達し、体を突き抜けて体外へ出ていくので、マーキングしたところだけでなく照射の入口側の皮膚と出口側の皮膚の両方に皮膚炎が発症します。

「放射線治療による皮膚炎というとケロイドのような大やけどを想像する人も多いですが、それほど深刻なものではありません。日焼けの程度はがんの種類、照射部位、照射の方法により異なり、個人差もありますが、うっすら色が変わったり、少しかさつく程度の場合もあります」

放射線は、同じ強さで体のなかを突き抜けるわけではないので、1番強いエネルギーががんにあたるように、照射が計画されます。皮膚に近い部位にがんがある場合には、皮膚にあたる線量も高くなるので皮膚炎が強めに出る傾向があります。膵臓や子宮など、体の奥深い部位では、皮膚へのダメージが少なくなります。また、たくさんの方向から照射して、がんをたたく場合は、皮膚炎の程度は軽くて済みます。

[放射線の照射と皮膚炎の症例]
放射線の照射と皮膚炎の症例

肺の腫瘍に3方向から放射線を照射したところ(上)、マーキングの印のない背中も日焼けしたように皮膚炎が発症した(下)。皮膚炎は、上の図のビーム①の出口、ビーム②とビーム③の入口に生じている

[食道がんの患者さんに対する照射法の例]
食道がんの患者さんに対する照射法の例

同じ食道がんでもさまざまな照射法があり、患者さんのがんの状態や隣接する肺や心臓などとの位置関係によって最適な方法が選択される。他方向から照射したほうが皮膚へのダメージは少ない


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