放射線治療の副作用「皮膚障害」にどう対処する?
早期発見・早期治療で重症化を防ごう!
成人看護学教授の
飯野京子さん
いいの けいこ
1960年生まれ。
82年新潟大学医療技術短期大学部卒。
99年聖路加看護大学大学院修士課程卒。
82年国立がん研究センター中央病院看護師。
01年国立看護大学校成人看護学教授。
専門は成人看護学、がん看護。
放射線皮膚炎になったら?
こすったりかいたりせずに、放射線科医師に相談するのが解決の早道
放射線皮膚炎
放射線治療には皮膚障害がつきもの、というイメージがありますが、それは一昔前の話。最近では放射線治療機器や照射法が進歩し、皮膚への影響はかなり軽減されているようです。
「リニアック、マイクロトロン、陽子線など、新しい放射線治療機器の開発が進み、皮膚などの表面ではなく、深部にあるがんの組織に集中して放射線を照射できるようになってきました。また、綿密な治療計画により、1方向からだけではなく、多方向から角度を変えて照射する多門照射、放射線量を分けて照射する分割照射が行われるため、以前みられたようなひどい皮膚炎が起こることはほとんどなくなっています」
放射線照射量との関係は
通常の放射線量は、1日2グレイずつ週5日、1週間で10グレイ、総線量50グレイ程度。がんの種類や部位によっては70グレイ程度まで照射することもあるそうです。化学療法を併用する場合は、30グレイ程度が一般的。
「目安としては、20~30グレイで発赤や紅斑、40~50グレイで乾燥性皮膚炎、60~70グレイで水疱やびらんなどの症状が起こりやすいとされていますが、機器や照射部位の放射線感受性、個人差などによって異なります」
放射線皮膚炎の対策
- 照射範囲をこすらない
- 石けんで洗わない
- かゆいときはそっとたたく
- マークを消さない、書き足さない
- 自己判断で軟膏等を塗らない
「皮膚炎は治療が終わるとだんだんに治ってきますから、あまり心配はいりませんが、悪化を防ぐために刺激を避けることが大切です」
(1)石けんは使わずにそっと流す
放射線照射範囲の皮膚は、日焼けしたときと同様に弱くなっているので、皮がむけたり、じくじくしてきたりすることがあります。「石けんで洗う、こする、下着や衣類で締め付けるなど、物理的・化学的刺激を避けてください」。入浴は、シャワーか短時間の入浴で流す程度にし、絆創膏やかみそりの使用も控えます。
(2)安易に冷やさない
放射線皮膚炎予防のため、照射後に照射部位を冷やす病院もありますが、「放射線の効力を減ずる可能性がある」との見方もあり、賛否両論。自己判断で冷やすことは避けましょう。
(3)軟膏等は処方してもらう
かゆみがあるとき、浸出液でジクジクしてきたときは、放射線科医師にかゆみ止めや消炎剤、ステロイド剤などの薬剤を処方してもらいます。照射時に鉱物性の成分入りの軟膏やパウダーが皮膚についていると、放射線の効果を損なうという意見もあるので、まず放射線科医師に相談することが大切です。塗り薬でなく経口薬を処方する医師もいます。かゆいときにはかきむしらず、そっとたたく程度にしておきましょう。
放射線皮膚炎対策で一工夫
声を聴きあう患者たち&ネットワーク「VOL-Net」
代表・伊藤朋子さん
5年前、乳房温存療法後に1日2グレイずつ週5日、計5週間の放射線治療を受けました。総線量は50グレイ。人によっては2グレイずつ5回の追加照射が行われる場合もあります。私の場合、照射時間は1、2分で、あら、もう終わり? という感じ。その病院では照射直後だけでなく、灼熱感があるときはアイスノンのようなもので冷やしていました。本当に日焼けのように熱を持った感じになるので、素人的には適度の冷却で楽になったように感じました。冷却を勧めない医師もいますし、冷やしすぎは明らかに良くないと思います。
治療後半、25グレイの折り返し地点あたりで、かゆみなどの違和感が出現。放射線科の主治医はブデソンクリームを処方してくれました。その後の色素沈着は1年以上続き、術創より目立つほどで、温泉には行きたくなかったですね。
治療中は、マークが消えないようにシャワーでそっと流す程度にし、傷や照射範囲がこすれないように100円ショップで見つけたガーゼ感覚の柔らかいブラを愛用。マークが色移りしても惜しげがなくて、おすすめです。