放射線治療による副作用とその対策
皮膚炎には軟膏を、膀胱炎や下痢なら十分に水分を補給しよう

監修・アドバイス:山下浩介 神奈川県立がんセンター放射線治療科医長
文:池内加寿子
(2005年10月)

  
山下浩介さん やました こうすけ
神奈川県立がんセンター放射線治療科医長。
1956年東京生まれ。
81年防衛医科大学医学部卒業。
各地の自衛隊病院、国立がん研究センター等を経て現職。放射線治療に関する啓蒙活動を行いながら、患者側の視点やQOLを大切にした医療をめざす
神奈川県立がんセンター
放射線治療科医長の
山下浩介さん

放射線治療ってこわいもの?
照射法や機器の発達により、昔のような副作用は減っています

放射線治療は、他の治療法に比べて高齢者でも負担なく受けられ、体の機能や形も温存できる方法として、最近とみに脚光を浴びています。その一方で、放射線の副作用に対する不安の声も聞かれます。放射線は目に見えないものですし、原爆のイメージと重なるためか、漠然とした恐怖を感じる方も多いのではないでしょうか。

神奈川県立がんセンター放射線治療科医長の山下浩介さんはこう話します。

「30年ほど前には、放射線を加速して体内に集中させる機器が発達しておらず、X線のエネルギーが弱かったため、皮膚にもっとも強くあたり、ただれや潰瘍などの障害が多くみられました。

その後、機器や照射法が格段に進歩し、リニアックやマイクロトロンというX線のエネルギーの高い機器の発達により、放射線を体内に集中的に照射することが可能になったため、皮膚障害は少なくなっています」

昔の放射線治療のイメージや、誤解に基づく過度な不安をもつのは心身の負担になり、適切な治療の障害にもなります。

「放射線はがんを焼き殺すというイメージから、熱い、痛いと思っている方もおられますが、照射中に痛みや熱さを感じることはありません。また、放射線をどこかに浴びると体全体に回ってしまうのではないか、放射線が体に残り、周囲の人にも影響するのではないか、などというのも大きな誤解です」

放射線の副作用はどこに、いつ起こる?
放射線を照射する部位に起こり、放射線感受性等によって症状はさまざま

体の外側から放射線をかける「外照射法」の場合、少しずつ何度にも分けてかける「分割照射」が行われます。1日2グレイ程度の線量を週4~5回、ほぼ1カ月から1カ月半かけて行うのが普通です(*注1)。がん細胞は正常細胞より放射線のダメージを修復する能力が弱いため、一定の線量を小分けしてかけ、正常細胞を修復させながら、がん細胞に与えるダメージを増やしていき、副作用をできるだけ減らすのが目的です。

「放射線をかけると必ず副作用が生じるというわけではなく、照射部位、範囲、線量、放射線感受性などによって症状が異なり、個人差も大きいものです」

放射線治療は局所治療ですから、副作用が出るのは放射線をかけた部位に限られます(*注2)。たとえば、乳がんや肺がんでは胸にかけるので、胸の皮膚炎などが起こる可能性がありますが、お腹の中の内臓にはダメージがありません。また、同じ治療をしても、放射線感受性の強弱によって軽度ですむ人もいます。

「放射線治療の副作用には、治療中から治療後しばらくの間に起こる急性期の副作用(急性障害)と、治療終了後、数カ月たってから起こる後遺症(晩期障害)があります(後述)。急性期の副作用の症状は、治療後1~2週間くらいがピークで、多くの場合、日ごとに改善していきます」

*注1=緩和ケアで疼痛緩和などに利用する場合は、目的に合わせて線量や回数を調節する
*注2=骨髄移植をする前処置として放射線をかけるときは、全身が対象となる

[日常生活の注意ポイント--あなたはどこに放射線をかけていますか?]
図:日常生活の注意ポイント

山下浩介さんより一言

副作用がたくさん並んでいると、それらのすべての副作用が起こるのではないかと心配される方が多いのですが、放射線治療は、がんのある部分だけに照射する局所治療ですから、照射範囲以外の副作用は起こりません。副作用が気になる方は、ご自身が治療中(治療予定)の照射部位のみご覧ください。

急性期の副作用で起こりやすい症状は?
多くみられるのは、日焼けのような放射線皮膚炎です

●放射線皮膚炎

乳がんやおなかのがん、頭頸部がんなどで放射線治療をする場合、副作用として頻度が高いのが、照射される範囲に起こる放射線皮膚炎です。

「これは、海水浴などで起こる紫外線による日焼けと似ています。最初は皮膚が赤くなる程度ですが、長く日光に当たっていると日焼けがひどくなるのと同じように、線量が多くなるにつれて、赤みが増し、皮膚がむけやすくなります。ただ、最近の6MV(メガボルト)以上の高エネルギーX線による放射線治療では、ただれや潰瘍になることはほとんどありません。4MV-X線やコバルトγ線、電子線など、放射線の線質や、1回当たりの線量、照射の分割方法、照射面積、総線量、照射部位の刺激の受けやすさなどによっても現れ方が違いますから、気になるときは放射線治療医に遠慮なく伝えましょう」

治療中や、治療後1カ月程度は、皮膚の刺激を避け、細菌等の感染を防ぐために清潔に保ちます。入浴するときは、放射線照射位置を示すマークを消さないように注意して、シャワーで軽くすすぐ程度にし、清潔なタオルで、こすらないように押し拭きします。

病院によっては、照射部冷却用のタオルが冷蔵庫に用意されているところもありますが、部位によっては放射線の効果を弱める可能性もあるので、家庭では自己判断せず、医師に相談してから対処します。

皮膚の炎症がひどいときはステロイド入りのクリームや軟膏を、かゆいときにはかゆみ止めを医師に処方してもらうとよいでしょう。香料入りの軟膏は刺激になるので避けてください。

「皮膚の炎症は、秋になると日焼けが治るのと同様に、だんだんに治ってくるので、それまでは皮膚が敏感になっていると考えて、やさしく扱ってください」

炎症がおさまっても、皮膚が乾燥していたら、ベビーオイルなどで保湿します。

なお、バストに放射線をかける方は、ワイヤー入りのブラジャーやハードなブラジャーでは皮膚がこすれてむけたり、痛みが出たり、また、治療用のマークも消えやすいので、柔らかい素材のブラジャーやタンクトップなどを着用するとよいでしょう。マーカーのインクがついても惜しくないものを利用している人もいます。

なお、1度放射線を限度線量までかけた部分に再びかけることはできないので、温存乳房に再発した場合、2度目の放射線治療は難しくなります。

また、放射線治療後は皮膚が伸展しにくくなっているため、メスを入れると縫合不全を起こすことがあり、乳房再建もしにくくなります。

山下浩介さんより一言

乳がん治療で放射線をかけても、結婚・妊娠・授乳はできる!

乳房温存療法で、温存手術と組み合わせて放射線をかけるケースが増えています。最近では20代30代の若い患者さんも増え、がん治療を終えてから結婚、妊娠、出産をする方も増えてきました。妊娠を希望している方には、ご自身に協力してもらい、照射する放射線の積算値が計れる器具をつけて治療の際に線量を測定しています。胸に放射線をかけても、少ない量なら卵巣には影響しないのですが、ある量を超えると影響する怖れも出てくるので、私たちも注意深く治療にあたります。治療後、3年から5年たてばほぼ問題ないといえます。

つい最近も、患者さんから「赤ちゃんが産まれた!」といううれしい知らせが届きました。照射側と反対側のバストで授乳もできて、母子ともに元気だそうです。

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