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口腔乾燥、粘膜炎はセルフケアを積極的に

頭頸部がんの 化学療法と放射線同時併用療法の副作用対策

監修●久保田 彰 神奈川県立がんセンター頭頸部外科部長
取材・文●伊波達也
発行:2015年8月
更新:2015年10月

  

「患者さんが今まで通りの生活が送れるよう、サポートすることが大切だと思っています」と話す
久保田 彰さん

手術がメインだった従来の治療から、化学療法と放射線治療を組み合わることで「切らない治療」が可能になった頭頸部がん。近年注目されている化学療法と放射線同時併用療法で起こりうる副作用とその対策には、どのようなものがあるのだろうか。

頭頸部がんは切らない治療をする方向へ

図1 頭頸部がんの種類

頭頸部とは、簡単に言えば顔面から頸部までの部分を指す。その範囲は、頭側では脳の下側まで、体に近い側では鎖骨まで含まれる。鼻や口、喉、あご、耳などの部分にできるのが「頭頸部がん」だ(図1)。

頭頸部には、食べること、話すことのほか、顔の形など整容性にも関わり、人間が生きていく上で、人生を謳歌するには欠かせない器官が集まっている。

そのため頭頸部がんの治療においては、大きく切って病巣を取りきるという考え方から、少しでも機能を温存して、治療中も治療後も、QOL(生活の質)を保ちながら日常生活を送れるための治療法が模索されてきた。

神奈川県立がんセンター頭頸部外科部長の久保田彰さんは次のように話す。

「〝切らない治療〟の可能性を求めて、様々な臨床試験が報告されてきました。1991年には、喉頭がんの患者さんに対して、化学療法の効果があった人は放射線で治療し、化学療法の効果がなかった人は手術をするグループ(A群)と、最初から手術をするグループ(B群)とを比較したところ、生存率は変わらず、ほぼ同等の成績でした。しかも従来は喉を切除していた人たちのうち、39%の人が喉を残せたという臨床試験の結果が報告されました。つまり、手術をしなかった人が含まれているA群の生存率は、全例手術を行ったB群と差がないわけですから、〝切らない治療〟ができる人がいるということになります。

98年に結果が出た臨床試験では、上咽頭がんの患者さんに対して、化学療法と放射線の併用療法のグループのほうが、放射線単独治療のグループと比べて生存率が向上したことが報告されました。

さらに2003年には、化学療法と放射線の同時併用療法が最も有用であるという臨床試験の結果が報告されました。喉頭がん患者さんに対する化学療法と放射線の同時併用療法は、化学療法が効いたら放射線、効かなかったら手術をする治療や、放射線単独の治療と比べて、生存率は変わらないものの、喉を温存できる確率が高いという結果が示されたのです」

どんな副作用が起こるか 前もって知らせる

現在の標準治療は、進行がんの場合、手術と術後の放射線の併用、化学療法が有効であれば放射線あるいは効果がなければ手術、化学療法(抗がん薬または分子標的薬)と放射線の同時併用などの選択肢がある。

「昨今では、患者さんの希望から、化学療法と放射線の同時併用を行うことが多くなってきています。

化学療法と放射線の同時併用の治療では、治療効果が高い反面、化学療法と放射線それぞれの副作用や後遺症対策が重要になってきます。患者さんが病気のつらさを認識するのは、症状が出たときです。がんの治療の場合、治療前の痛みなどの症状より、治療を通じて様々な副作用や後遺症で苦しむことがあります。ですから患者さんには、治療前に、治療で起こり得る副作用や後遺症についても包み隠さず伝え、あらかじめ副作用をイメージしてもらうことが大切です」

久保田さんは、治療前に副作用や後遺症について記した小冊子を患者さんに渡し、きちんと理解してもらい、心構えを持ってもらうとともに、患者さん自身が日常的にセルフケアを行う意識を高めてもらうようにしている。

では実際に、どのような副作用や後遺症があるのだろうか。

図2 化学療法と放射線の同時併用の治療中の副作用と対処法

図3 化学療法と放射線の同時併用の治療後の後遺症

図2、3 に示したように、化学療法と放射線の同時併用では、治療中の副作用と治療後の後遺症は様々だ。「治療中の副作用の管理をしっかりすることが、治療後の後遺症を軽減させることにつながる」と久保田さんはいう。

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