複雑な外科解剖、臓器特異性に精通し、高い技術を要する高難度手術
監修●島田和明 国立がん研究センター中央病院副院長/肝胆膵外科長
取材・文●「がんサポート」編集部
腹部内臓器官の中で肝臓・胆道・膵臓はお互い密接な関係にあるため「肝胆膵」として一括に診療されるのが合理的とされる。肝胆膵外科手術は、複雑な解剖と臓器の特性から高度の技術が要求されるため、日本肝胆膵外科学会では「高度技能専門医制度」を導入し、広く質の高い手術が安全に行われるように努めている。肝胆膵のがん診療について、外科治療を中心に島田和明さんに伺った。
「非B非C型」肝がん 生活習慣の改善こそ重要
監修●建石良介 東京大学大学院医学系研究科がんプロフェッショナル養成基盤推進プラン・消化器内科特任講師
取材・文●「がんサポート」編集部
つい最近まで、原発性肝がんの9割はB型やC型の肝炎ウイルスの持続感染によるもので占められていたが、その分布構造は過去のものとなり、これから急激に増加していくのが「非B非C型」だ。生活習慣に原因があるもので、様々な危険因子が絡まって発症する。どのように対処すればよいのか、予後はどうなのか。
intermediate stage(ステージB)肝がんの治療
監修●泉 並木 武蔵野赤十字病院副院長/消化器科部長
取材・文●黒木 要
肝がんの病期分類で国際的に影響力が強いBCLC(バルセロナ臨床肝がん)病期分類。ところがその中でintermediate stage(インターメディエイトステージ:中間期)と呼ばれる、いわゆるステージBに属するものは対象となる症例範囲が広く、様々な治療法が行われており、当然、それによって生存率も異なってくることが予想される。
肝動脈化学塞栓術、そして化学療法まで
監修●池田公史 国立がん研究センター東病院肝胆膵内科長
取材・文●柄川昭彦
進行した肝がんでは、まずは肝動脈化学塞栓術(TACE)が治療の基本となる。しかしやがてそれも効かなくなる。そのとき登場するのが化学療法だ。延命効果が確認されている薬がある中、いかに肝機能を維持し、適切なタイミングで効果のある薬剤をしっかり使うかが重要だという。
切除可能膵がん 新たな治療戦略の可能性
監修●中郡聡夫 東海大学医学部消化器外科教授
取材・文●町口 充
膵がんは見つかった時点ですでに進行がんであることが多く、手術ができても再発・転移する割合が高い。そこで様々な補助療法が検討されており、術後の補助化学療法(アジュバント療法)については有効性が明らかになっている。現在は術前補助化学療法(ネオアジュバント療法)が有効か否かの臨床試験が行われているところだ。
切除不能膵がん 抗がん薬の新しい治療戦略
監修●大川伸一 神奈川県立がんセンター副院長/消化器内科部長
取材・文●伊波達也
膵臓は胃の裏側の後腹膜にあるため、がんの早期発見が難しく、年間発症する約3万人のうち、手術を受けられる人は約2割だ。切除不能進行がんの治療では、根治を望めないまでも延命を図るための模索が行われており、昨年(2013年)12月に新しい治療法FOLFIRINOXが承認された。それに続く治療薬の動向も紹介する。
切除不能進行胆道がん 諦めず、新たな治療法があることを知って欲しい
監修●森 隆太郎 横浜市立大学医学部消化器・腫瘍外科学助教
取材・文●柄川昭彦
胆道がんの唯一の根治的治療法は手術だ。しかし、進行胆道がんで手術が困難な患者さんには、化学療法や放射線療法が行われている。なかには抗がん薬が効いて、腫瘍が小さくなる患者さんもいるが、そういった人たちにも化学療法を漫然と続けているのが現状だ。そうした中、注目されるのが、腫瘍が増大せず長期間効果を持続している患者さんに手術を行うという新たな治療法だ。手術することで、より長期の生存も可能になってきたという。
胆道がん患者の声 治療の可能性を広げるために
監修●石井 浩 がん研有明病院消化器内科副部長
監修●眞島喜幸 日本胆道がん患者会世話人/NPO法人パンキャンジャパン代表
取材・文●常蔭純一
現在、胆道がん治療に有効な抗がん薬は3剤しかない。「もっと治療薬が欲しい」という患者会の声と、胆道がんの化学療法の現状と今後の展望について専門医に聞いた。