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「非B非C型」肝がん 生活習慣の改善こそ重要

メタボリック関係因子も関わる注目のタイプの肝がん

監修●建石良介 東京大学大学院医学系研究科がんプロフェッショナル養成基盤推進プラン・消化器内科特任講師
取材・文●「がんサポート」編集部
発行:2014年12月
更新:2015年2月

  

「生活習慣病の影響を最も受ける臓器は肝臓だと思います」と話す建石良介さん

つい最近まで、原発性肝がんの9割はB型やC型の肝炎ウイルスの持続感染によるもので占められていたが、その分布構造は過去のものとなり、これから急激に増加していくのが「非B非C型」だ。生活習慣に原因があるもので、様々な危険因子が絡まって発症する。どのように対処すればよいのか、予後はどうなのか。

ウイルス感染による肝がんは今後減少

図1 非B非C肝がん患者の推移

出典:文献より引用改変

「原発性肝がんは、以前は9割がB型、C型肝炎ウイルスが原因でした。しかし、『非B非C型』といわれる肝がんが急増しています。肝がんはウイルスという危険因子を特定しやすい特徴がありましたが、その因子を持たない人々にも肝がんの恐れがあるのです」

東京大学大学院医学系研究科がんプロフェッショナル養成基盤推進プラン・消化器内科特任講師の建石良介さんは話す。

全世界規模で見れば、最も多いのはB型だが、日本や欧州ではC型が多かった。これらのウイルスは母子感染や輸血、医療行為などで広まっていたが、予防対策が推進された1980年代から急激に減り、90年以降の新たな感染は、公衆衛生学的に無視できるほど小さいという。

新たな罹患はウイルスによるものではなくなっていく。

「非B非C型肝がんの割合は、1991年の10.0%から2010年には24.1%まで増加しています(図1)。今後はさらにこの傾向が強まっていきます。重要なのは、割合だけでなく絶対数が増加していると考えられることです。1年間に肝がんに罹患する患者さんはほぼ横ばいで47,000人ほどですから、20年前は4,000人ほどだった非B非Cが今は1万人を優に超えていると見られます」

Tateishi R, et al:Clinical characteristics,treatment,and prognosis of non-B,non-C hepatocellular carcinoma :
a large retrospective multicenter cohort study.J Gastroenterol,2014 Jun15

非B非C型の大きな要因は「肥満」

非B非Cの研究が本格化したのは10年ほど前からだ。「B型、C型肝炎ウイルスといった強力な危険因子が明らかではない"新しい病気"として肝がんを考えていこう、という転換です」

様々な生活背景を持った患者さんが非B非C型肝がんを発症する。「飲酒によるアルコール性肝疾患が大きな要因とされてきましたが、最近はアルコールの消費量が落ち込んでおり、肝がん増加の原因とは考えにくい状況です」

そのほかにも、原発性胆汁性肝硬変や自己免疫性肝炎などの要因もありうるが、建石さんは一番の要素をあげた。

「肥満です。肥満の割合はかなり増えています。生活習慣の影響を最も受ける臓器は肝臓だと言っていいと思います」(図2)

図2 男性肥満者の増加

出典:厚生労働省国民健康・栄養調査

肥満をベースとする高血圧、脂質異常症、高血糖のメタボリックシンドローム(内臓脂肪症候群:以下メタボ)が大きな危険因子になっているというのだ。

建石さんは、53施設の協力を得て、非B非C型肝がんに罹患した患者さんの背景因子、発見時の合併症、治療法や予後について解析を行った。

それによると、非B非Cの背景肝疾患の内訳は多い順に、分類不能54.0%、アルコール性肝疾患26.3%、脂肪肝11.2%となった。分類不能とされた中では中等度飲酒者や肥満患者が多くを占めた。

男性が4分の3を占め、年齢の中央値は70.0歳。約半数が糖尿病を併発しており、非アルコール性脂肪性肝疾患(NAFLD)では62.7%と最も高率だった。診断時に超音波検査で脂肪肝が認められたのは全体の4分の1で、NAFLDでは約3分の2に上った。肝硬変の合併が認められたのは全体の3分の2だった。

建石さんは、「肥満によって起こるインスリン抵抗性やそこから生じる糖尿病、脂肪肝などが相互に関連し合いながら発がんを促進していることが予想されます」と分析している。

発がん時には見えない脂質異常も

さらに建石さんは、メタボの影響が診断に現れないケースが多いことも指摘する。

「脂質異常は肝臓においてはパラドキシカル(矛盾した状態)なのです。肝がんが見つかったときには脂質異常と診断されないことが多くあります。脂肪が蓄積することによって肝臓に炎症が起きることはほぼ確実とされていますが、脂肪肝から肝硬変に進行するに従って肝機能が弱まり、脂質の1つであるコレステロールを合成できなくなるからです。また、肝臓に溜まった脂肪も肝硬変になるとだんだん抜けていくことが知られています」

炎症や酸化ストレス状態にさらされた細胞が、がんへの一歩を踏み出す。

「発がんした肝臓を見ると、超音波検査ではっきり脂肪肝といえる人は半分に満たないのですが、非B非Cの患者集団では、脂肪肝、元脂肪肝併せて6~7割含まれていると思っています」

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