がん関連遺伝子を網羅的に調べる遺伝子検査を先進医療で実施 ~国立がん研究センター中央病院~

検査システムの保険適用を目指す

国立がん研究センター中央病院は、4月3日、がん患者のがんに関する遺伝子を1回の検査で網羅的に解析し、抗がん薬の選択に役立てる遺伝子検査を4月9日より先進医療Bで実施すると発表した。

この遺伝子検査では、同研究センターが日本人の特徴を踏まえて開発した試薬「NCCオンコパネル」を用いて、がんに関連する114個の遺伝子変異と12個の融合遺伝子変異を1回の検査で調べることができる。「NCCオンコパネル」での検査をはじめとして、解析に使用するプログラムの開発、解析結果に基づいて方針を決定するエキスパートパネルの実施方法や院内体制などは、中央病院で2013年7月に開始された臨床研究「TOP-GEAR(トップ-ギア)プロジェクト」で検証が進められてきた。

先進医療Bとは

先進医療Bは、保険適用の対象にするかどうかを検討するために、有効性・安全性を臨床研究で評価するもので、本先進医療は「個別化医療に向けたマルチプレックス遺伝子パネル検査研究」として実施される。

本研究の対象は、16歳以上の標準治療がない、または標準治療があっても終了(見込みを含む)している固形がんの患者、あるいは原発不明がんの患者で、国立がん研究センター中央病院のほか、今後、がんゲノム医療中核拠点病院やがんゲノム医療連携病院の一部とも協力し、205例から最大350例の患者に参加願い、NCCオンコパネル検査の有用性を検証する。

その後、遺伝子検査の結果に基づき、既承認薬や適応外薬を用いた企業治験や医師主導治験なども含めた薬剤選択を行い、その有効性についても確認し、保険適用を目指す。

本研究での検査手順:

1.先進医療の説明(インフォームドコンセント)を行う。
2.遺伝子解析を行う腫瘍組織を準備し、解析可能か確認する。
3.腫瘍組織と比較するための採血を行う。
4.腫瘍組織および血液からDNAを抽出し、NCCオンコパネルにより解析を行う。
5.網羅的遺伝子変化の解析結果は、院内または連携病院のエキスパートパネルと呼ばれる複数の専門家で構成される委員会によって、「意義づけ」が行われる。
6.遺伝子解析結果を担当医へ返却する。
7.遺伝子解析結果は担当医から説明される。

<検査に要する期間と費用>

検査には数週間を要し、結果が戻るまで1か月弱が見込まれている。

先進医療技術である遺伝子解析に必要な費用は全額負担となり、それ以外の検査や診療の費用は一般の保険診療と同様の費用負担となる。

また遺伝子検査の結果、遺伝子に異常が見つからない場合や、異常が見つかっても治療に使用できる薬剤がない場合でも下記費用が必要となる。

遺伝子監査に要する費用は約67万円(このうち一部を研究費で補てんするため患者負担額は約47万円)

上記に加えて、本研究に必要な検査や診察にかかる費用(※)の目安
約2万5,000円(3割負担の場合) ※生検の有無等により異なる。また、結果に基づく治療費用は含まず。

<研究期間(予定)>

登録期間:1年(2018年4月9日~2019年3月31日)
追跡期間:半年(2019年4月1日~2019年9月30日)

問い合わせ先:
国立がん研究センター中央病院相談支援センター
〒104-0045 東京都中央区築地5丁目1−1
TEL: 03-3542-2511(代表)
FAX: 03-3542-2545
Eメール: ncc-admin@ncc.go.jp

<研究の背景と現状>

遺伝子解析技術の進歩により、がんの原因となる様々な遺伝子変異が相次いで発見されてきており、遺伝子変異を有する一部のがんには、対応する分子標的薬の治療効果が非常に高いことが判明している。例えば、乳がんにおけるHER-2遺伝子増幅、非小細胞がんにおけるEGRF変異やALK融合遺伝子、また悪性黒色腫におけるBRAF変異では対応する分子標的薬による治療が保険診療で行われており、これらの遺伝子変異を調べる検査は1回の検査で1個の遺伝子変異を調べているのが現状。

一方、近年、遺伝子の塩基配列を高速に読み出せる次世代シークエンサーの開発により、治療対象となる多数の遺伝子変異を網羅的に短時間で検出することが可能になってきている。また、がん種が異なっても(原発部位、臓器が異なっていても)同じ遺伝子に変異がある場合や、同じ分子標的薬が有効な場合もあることが分かってきた。

このような背景から、とくに標準治療のないがんや標準治療の効果がなくなった患者について、がんの遺伝子を網羅的に調べ、個々の患者のがん組織の遺伝子変異に合った薬剤を選択する治療が望まれている。

この患者のがん組織の遺伝子変異に適した治療を行うがんのゲノム医療は、第3期がん対策推進基本計画においてその推進が掲げられ、全国どこにいてもがんゲノム医療を受けられる体制の整備が進められている。

※関連情報:がん関連遺伝子を網羅的に調べる遺伝子検査のご案内

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