高位精巣摘除術を知りたい
精巣(睾丸)が腫れてきたので心配になり泌尿器科を受診すると、精巣腫瘍ですぐに高位精巣摘除術が必要と言われました。どのように行われるのでしょうか。また、子作りの能力に影響はありますか?
(35歳 男性 大阪府)
A 低侵襲、短時間で済み 術後3~4日で退院
精巣腫瘍は20~30歳代に発症のピークがある若年層に多い腫瘍です。進行が速く、全身に転移しやすいという特徴もあります。数カ月から1年ほどで命に関わる状況もありえます。早期治療が大切です。
精巣腫瘍は、見た目と触診ですぐに診断がつきます。陰嚢が腫れる病気はたくさんありますが、痛みがない腫れやしこりがあったらすぐに受診すべきです。
精巣腫瘍が疑われたら、無条件で精巣の摘出手術となります。悪性であることがほとんどであり、病気の進行具合や転移といったことを考慮する前にまず摘出を行います。他の多くのがん種では、手術の前に病変部の一部を採取して生検し、がんと確定したら切除するという流れですが、精巣腫瘍では生検は禁忌とされています。生検用に採取する際にがん細胞が散らばってしまう恐れがあるからです。
摘除術の目的は2つあります。どのような組織型かという診断をつけることと、がんの治療です。精巣内に留まっている段階なら基本的に摘除術で治療は終わります。高位精巣摘除術は、精巣よりも高い位置、脚の付け根から少し上の辺りを切開して行われるため、このように呼ばれます。
まず、転移の経路となる精管と血管が束になっている精索を切断し、結紮(糸などで結ぶ)します。その後に精巣を陰嚢の皮膚から剥離して、切開した部位まで引き上げて摘出します。
多くの場合、下半身麻酔で30分ほどで終了します。患者さんの手術に対する負担、危険性は少なく済みます。手術は診断が付き次第できるだけ早く設定され、前日か当日に入院し、退院は3~4日後というのが一般的です。退院後3~4日で仕事に行く方々も多くいます。
子作り能力は、精巣は2つあるので、残った1つがきちんと働いていれば問題はありません。しかし、不妊には別の要因もあるので、注意が必要です。
精巣腫瘍は無精子症など、元々精子を作る能力が弱い人に発症しやすい傾向があるからです。
摘除の影響がない一方で、子作りに与える問題があるとすれば、抗がん薬治療です。抗がん薬は増殖が盛んな正常な細胞にも作用するので、精子を作る能力が低下してしまうことがあります。