シリーズ・オンコタイプDX検査 Report1-1 専門医が勧める患者説明と対応の仕方
オンコタイプDX検査は予後予測と化学療法効果予測検査。主治医が情報提供した上で、判断は患者さんにまかせる
豊富な乳がん専門医の植野映さん
ホルモン受容体陽性(ER+)、HER2陰性(HER2−)、早期乳がん患者での予後予測と化学療法の効果予測に有用とされるオンコタイプDX検査。米国臨床腫瘍学会(ASCO)、全米総合がん情報ネットワーク(NCCN)、ザンクトガレン(St. Gallen)国際専門家コンセンサス委員会、欧州臨床腫瘍学会(ESMO)などの欧米の主要ガイドラインではすでに採用されていますが、日本では保険適用になっていません。
このため、まだ同検査の使用経験のない、あるいは使用経験の少ない医療従事者が多くいるとみられます。そうした医療従事者(とくに乳腺外科医)に対し、同検査を適応患者に勧めるにあたり、どのように対応すればよいか、同検査の経験が豊富な専門医にその具体例を教えていただきました。
<検査前>
❶患者さんにオンコタイプDX検査を勧めるケースは?
・あくまで基本的には、ルミナルAタイプ(エストロゲン受容体陽性、HER2陰性)でリンパ節転移のない患者さんです。
❷患者さんにオンコタイプDX検査を勧めるタイミングは?
・手術後、病理検査でオンコタイプDX検査の適応と判明次第速やかに、選択肢の1つとしてオンコタイプDX検査の話をします。
・最終的に病理検査が出てくるのが手術後3週間前後、さらにオンコタイプDX検査を受けた場合は、その検査結果が判明するのは3週間後なので、検査結果を待っていると遅くなるため、乳房温存療法であれば、先に術後放射線療法を行い、検査結果が判明した後に薬物療法を開始します。
・術前のバイオプシー(組織生検)で、ルミナルAタイプなのか、その他のタイプかある程度予測がついていますが、リンパ節転移が問題となります。
❸オンコタイプDX検査についての具体的な説明内容は?
・オンコタイプDX検査の説明をする前に、「手術終了後、術後の補助療法を考えましょうか」といったところから始めます。
・術後補助療法として、薬物療法と放射線照射療法の2つがあることを示します。
・さらに薬物療法には化学療法、内分泌療法、分子標的療法の3つがあることも話します。
・そういうことを説明した上で、現段階の乳がんに効果がある治療法を提示します。
・病理検査でオンコタイプDX検査が適応であると判明した場合は、オプション(選択肢)としてオンコタイプDX検査があることを話します。
・検査費用(約40万円)についても、高額であることは最初に話します。
・検査を受けているのは40歳代、50歳代の患者さんが中心で、高齢者(75歳以上)は適応対象とはなりません。ただし全身状態(PS)がよく、化学療法の対象となる患者さんには検査適応となるケースもあります。
❹患者説明で特に強調する点は?
・患者さんには化学療法を避けたいという気持ちがあり、「化学療法は必要ですか」と先に聞いてくるケースは多くあります。
・そこでオンコタイプDX検査で10年後の再発リスクを評価し、リスクが低い場合には化学療法を避けられることができることを話します。
❺説明の際に使用されるツールは?
・特別な資料は使用していません。
・患者さんによく見せるのは、全米総合がん情報ネットワーク(NCCN)の治療ガイドラインに掲載されている表です。
・腫瘍サイズ、ER、HER2、リンパ節転移などの結果を示して、「あなたのがんはNCCNのガイドラインではここに当てはまります」ということを説明します。
・オンコタイプDX検査の内容等を話した後、家族と相談する際の資料として、検査会社が作成・提供したパンフレット等を手渡すことはあります。
❻説明後、患者さんに委ねる検討期間は?
・検討期間は1週間としています。
・説明後、その場で決めてくださいということはありません。いったん持ち帰っていただき、返事を待つ状態です。
・時に持ち帰っていただくことなく、一度待合室に出てもらって、ご家族で30分間~1時間ほど話し合っていただき、そのあと再度診察室で話を伺うこともあります。
・患者さんが事前に検査内容を勉強しているというのではなく、主治医から検査内容を聞いてから決定しているケースが多いです。
・ただ最終的に検査を受諾する人では、3人に1人は即決しているのが実情です。
❼患者さんが判断に迷っている場合の対応は?
・一度説明した後に、本人から受諾の申し出のない限り、こちらから「やりましょう」と話しかける(勧める)ことはありません。
・先方から言ってこない限り、こちらからはそれ以上は踏み込まないようにしています。
※ 検査結果の解釈は最新の情報をもとに主治医とご相談ください(2023.09.01)
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