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乳がんホルモン療法最新レポート
アロマターゼ阻害剤の臨床での使い方、3種類の使い分け方を学ぶ

監修:紅林淳一 川崎医科大学病院乳腺甲状腺外科准教授
取材・文:柄川昭彦
発行:2007年6月
更新:2013年4月

  
紅林淳一さん
川崎医科大学病院
乳腺甲状腺外科准教授の
紅林淳一さん

乳がんのホルモン療法はホルモン剤の開発により飛躍的な進歩を遂げている。
そのなかで最近注目を集めているのがアロマターゼ阻害剤。
なかでもこれを臨床的にどう使っていけばいいのか、3種類のアロマターゼ阻害剤をどう使い分けていけばいいのかが注目されている。

乳がんのホルモン療法は薬の開発で進歩した

写真:国際乳がん会議で発表する紅林淳一さん

ザンクトガレン国際乳がん会議で発表する紅林淳一さん。日本人で初めての演者だった

乳がんのホルモン療法は、薬の登場によって進歩してきたといえる。川崎医科大学付属病院乳腺甲状腺外科准教授の紅林淳一さんによれば、今から30年ほど前、エストロゲン(女性ホルモンの一種)の働きを抑えるタモキシフェン(商品名ノルバデックスなど)が登場したことが、ホルモン療法が広く行われるようになるきっかけだったそうだ。

「それ以前のホルモン療法は、手術で卵巣や副腎を取ったりするなど、とても侵襲(傷口)の大きな治療法でした。そのため、一般的にはあまり行われていなかったのです。ところが、新しく登場したタモキシフェンは、1日に1回1錠飲むだけで、エストロゲンの働きを抑えられます。非常に使いやすく、これが乳がんのホルモン療法の主流となりました。画期的な変化だったのです」

乳がんには、女性ホルモンに対するレセプター(受容体)を持ち、その働きを利用して増殖するタイプと、女性ホルモンとは関係なく増殖するタイプとがある。ホルモン療法は、女性ホルモンが作用しないようにすることで、がんの増殖力を失わせる治療法。ホルモン受容体を持つがんに対しては、この治療法が勧められている。

「タモキシフェンが登場したころ、乳がん治療の1つの方向として、再発を予防することが重視されるようになっていました。それにタモキシフェンが使われ、術後補助療法が広く行われるようになっていったのです」

その後、新しいホルモン療法剤として、LH-RHアゴニストが登場した。脳下垂体に作用し、卵巣からのエストロゲンの分泌を抑え、卵巣を取ったのと同じような効果が得られるため、閉経前乳がんに対する卵巣機能抑制法として行われている。

また、合成黄体ホルモン剤のメドキシプロゲステロンという薬もつくられている。黄体ホルモンの働きでエストロゲンの分泌を抑えるこの薬は、タモキシフェンが効かなくなった患者に使われている。

[図1 体内のホルモン分泌とホルモン療法の関係]
図1 体内のホルモン分泌とホルモン療法の関係

ホルモン療法剤が出揃い使い方を模索する時代

その後に開発されたのが、閉経後の乳がんの治療に用いられるアロマターゼ阻害剤である。閉経後は卵巣からのエストロゲンの分泌はなくなるが、副腎皮質で分泌されるアンドロゲン(男性ホルモン)を原料に、アロマターゼという酵素の働きによって、エストロゲンがつくり出される。アロマターゼ阻害剤は、このアロマターゼの働きを阻害することで、エストロゲンをつくれなくする薬だ。

「大いに期待されていたのですが、最初に登場した第1世代の薬は、ステロイドホルモンを補充しないと使えないなど、とても不便な薬でした。結局、あまり使われなかったのですが、10年ほど前に、進化を遂げた第3世代のアロマターゼ阻害剤が3種類開発され、これによって乳がんのホルモン療法が新しい時代を迎えることになりました」

第3世代のアロマターゼ阻害剤には、アリミデックス(一般名アナストロゾール)、アロマシン(一般名エキセメスタン)、フェマーラ(一般名レトロゾール)がある。日本で使われるようになったのはこの順だが、世界的にはほぼ同時期に登場している。

「現在開発中の薬が1つありますが、乳がんのホルモン療法剤はほぼ出揃ったと見ていいでしょう。それを臨床的にどう使っていけばいいのか。最近の話題はそういうところに集中しています」 3種類のアロマターゼ阻害剤をどう使い分けるかにも、注目が集まっているそうだ。


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