長谷川記子の心と体の特効薬
花に囲まれたような幸福感を生み出すローズ
はせがわ のりこ
星薬科大学薬学部卒業。
香りや予防医学への興味から、ヨーガ・薬膳・ハーブのアロマテラピーを研究。
薬剤師、アロマテラピスト。著書『ガンを癒すアロマテラピー』(リヨン社)
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ローズ
がん患者さんの中には病状がかなり進行したりすると、精神的に落ち込み、絶望感、孤独感に陥ってそこからなかなか抜け出せないことがあります。
私のトリートメントを受けている35歳の肺がんの女性もそうした1人です。
彼女が肺がんになったのは5年前。まだ30歳になったばかりの若さですから、そのとき受けた精神的ショックは並大抵のものではなかったと思われます。
しばらくは小康状態が続いていたようですが、最近になって腰部の仙骨から尾骨にかけてがんが転移していることがわかり、大学病院で放射線治療、疼痛治療を受けていました。しかし、こうした治療もはかばかしくなく、座っているのがやっとというような状態でした。
しかし、そうした状態にも関わらず、治療を一通り終えると、病院側から退院を告げられました。問題はその退院の日でした。
たくさんの研修医たちが見守る中で主治医から、「もうここでは打つ手がなくなった。実家の近くの病院へ移って、ゆっくりと静養したほうがよい」と、暗に「末期がん」で、「もう治る見込みがない」ことを告げられたのです。
この主治医の言葉に彼女は相当深い精神的ダメージを受けたようです。これを契機に、彼女の病状は急激に悪化していったのです。見るからに精気が失せ、体力が低下し、1人で歩くのも億劫という感じになりました。
彼女の母親は、そんな娘が心配で、あれしなさい、これ食べなさいなどと声をかけるのですが、彼女は逆にそんな母親を心配する性格で、つい言いたいことも言えなくなり、引きこもってしまうという状態でした。
こんな精神状態のときに、無理に励まそうとしたり、話をさせようとしたりしてもそれは逆効果です。むしろそっとしてあげるとか、ゆっくり休ませてあげるとか、そしてなによりお薦めなのがアロマです。
アロマではローズとラベンダーが何よりです。ローズは、甘く優雅な崇高な香り。とくにローズ・オットーは「エッセンシャルオイルの女王」と呼ばれるほど貴重です。ラベンダーは、甘いフローラル調の香りです。
このローズを主体に、2対1の割合でブレンドするのですが、この組み合わせがよく、このアロマを嗅ぐと、まるで花に囲まれたような幸福感がその人の中で広がり、精神的な寂しさや孤独が癒されるのです。
彼女に横向きになってもらい、背骨のくぼみに沿って親指をはわせながらトリートメントしていきました。さらに掌を回しながらトリートメントし、手が十分に温まったら患部の腰へと移りました。気持ちよくなったのか、彼女はものの5分で寝てしまい、トリートメントが終わったときの顔が印象的でした。まるで赤ちゃんのような無邪気な表情だったのです。
香りの力も侮れない、と思う一場面でした。