長谷川記子の心と体の特効薬

フローラルな香りで心を癒して


発行:2004年9月
更新:2013年8月

  

はせがわ のりこ
星薬科大学薬学部卒業。
香りや予防医学への興味から、ヨーガ・薬膳・ハーブのアロマテラピーを研究。
薬剤師、アロマテラピスト。著書『ガンを癒すアロマテラピー』(リヨン社)

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イラスト:イランイラン

私がアロマトリートメントを担当したがん患者さんの中に、40代の肺がんの男性がいました。遠くから私のクリニックを訪ねて通ってくださったのですが、あちこちに転移がわかり、3カ月ほどで食欲がかなり落ちてしまいました。ある日私が「どんなものを食べていらっしゃるんですか」と尋ねると、「点滴で食べてるよ」と、クスッと笑いながら言いました。その言い方がとても寂しそうだったのをよく覚えています。

そのとき彼の選んだ香りは、ラベンダー、ローズなどのフローラル系の精油でした。通常アロマテラピストは、患者さんの症状を緩和する作用のある精油を選んでブレンドします。肺がんの患者さんでしたら、よく使うのはユーカリです。ユーカリの成分には抗炎症作用があり、胸の奥の痛みを伴う咳をやわらげる作用があるからです。この方の場合も、始めのころはユーカリを使っていました。でもがんが進行してからは、彼が好む香りでトリートメントをして差し上げるようにしました。

彼が選んだラベンダーやローズ、それにイランイラン、カモミールなどのフローラル系の香りは、鎮静効果があり、心をやすらかにする香りです。つまり彼は、肉体的な痛みの緩和ではなく心のケアを求めていたのです。

彼の中には1人で病気と闘う孤独感や、死に対する恐怖感などが潜んでいたのでしょう。おそらく暗闇の中に1人で置き去りにされたような寂しさを感じていたと思います。医薬品は、患者さんの病状に合わせて医療者が選びますが、アロマは患者さん自身に精油を教えてもらうことがあります。アロマを勧める私たちだけが、精油を選ぶわけではありません。

がん患者さんの中には病状がかなり進行すると、精神的に落ち込み、絶望感や孤独感に陥ってそこからなかなか抜け出せない方がいます。こんなときこそ、私はアロマで心を癒してほしいと思います。香りは大脳辺縁系に直接作用し、心身ともにリラックスした状態をかもしだします。ゆっくり休息することができれば副交感神経が優位になり、免疫力を上げることにつながります。

また、私はときどき、罪悪感を持っているがん患者さんに出会います。「家族に迷惑をかけて申し訳ない」「職場の人に負担をかけて申し訳ない」と、がんになった自分を責めてしまう方たちです。でも今大切なのは、病気を治す力が自分にあることを信じ、自分自身を大切にすることではないでしょうか。

罪悪感を抱いているがん患者さんには「申し訳ないと思わないでいいのよ」と言ってあげたい。アロマならきっと、その方の心を癒すお手伝いができるでしょう。

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