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知っておきたいお金の悩み解決法 (2)
治療で仕事を休んだときは傷病手当金で乗り切ろう
病気治療のために仕事を休まざるを得なくなったとき、医療費と並んで大きな心配となるのが収入が途絶えるということです。こんなときに頼りにしたいのが傷病手当金です。傷病手当金は、病気休業中に被保険者とその家族の生活を保障するために設けられた社会保険の制度で、病気やけがのために労務不能となり会社を休み、事業主から十分な報酬が受けられない場合に支給されます。自営業者や無職の人が加入する国民健康保険にはない制度です。
傷病手当金の支給要件は、(1)私傷病による療養のために仕事に就くことができない、(2)療養のために4日間以上欠勤した、(3)欠勤したために報酬の支払いがないこと、の3つです。
要件-1 労働不能期間の証明が必要
「私傷病」の反対となる言葉は「業務上の傷病」です。つまり、仕事に起因した病気やけがによる療養は傷病手当金の対象とはならないということです。そもそも健康保険自体が業務上の傷病は対象としていないのです。ほとんどのがんの場合、私傷病となりますがたとえばアスベスト肺がん(アスベスト粉塵により発症した肺がん)など業務上の傷病となるケースもあります。この場合は、傷病手当金ではなく労災保険から休業補償給付が支給されることになります。
「仕事に就くことができない」とは、病気やその治療のために労務不能の状態であるということです。労務不能については、診てもらっている医師に傷病手当金請求書に労務不能期間の証明を書いてもらいます。入院ではなく、通院自宅療養でも医師の指示通りに受診していれば労務不能は認めてもらえます。また、転院したときは、それぞれの病院で証明をもらう必要があります(期間が重なるときはどちらか一方の証明でよい)。
要件-2 療養のために3日間以上欠勤した
傷病手当金は療養のために継続して3日以上欠勤すると4日目から支給されます。最初の3日間のことを待期期間といいます。この3日間は連続していなくてはなりません。たとえば2日間休んで1日出勤し、その後2日間休んでも待期の3日は完成しないのです。なお、この3日間には土日など会社の公休日も含めて考えます(表1参照)。
※ただし、どれも待機期間から労務不能と認められていることが条件です
要件-3 欠勤したために報酬の支払いがない
「報酬の支払いがない」とは、給与が支払われないということですが、たとえば基本給は不支給だったが、会社の規定で家族手当や住宅手当などは欠勤控除されずに1カ月分まるまる支払われた場合などは、報酬の一部が支払われた状態となります。この場合は、支給される予定の傷病手当金からその分だけ引かれて支給されることになります。
傷病手当金の支給は欠勤4日目からですが、待期の最初の3日間は給与が出ていてもかまいません。この3日間については傷病手当金も支給されませんから、その間有給休暇があるときは利用するとよいでしょう。
いくら支給されるのか
傷病手当金は、政府管掌健康保険の場合労務不能の1日につき給与(正しくは標準報酬日額)の6割が支給されます。たとえば、*標準報酬月額30万円のAさんに支給される傷病手当金は、30万円÷30日=1万円(標準報酬日額)、1万円×60パーセント=6000円。よってAさんには労務不能の1日あたり6000円の傷病手当金が支給されることになります。大企業の健康保険組合や公務員の共済組合などには、さらに上乗せの給付(附加給付)があり、合わせて8割から9割の支給となることもあります。
傷病手当金は通常、給与の6割の支給ですから、有給休暇がとれるときはそのほうが有利かもしれません。しかし、職場復帰してから通院のために会社を休んでも傷病手当金はもらえません。その分の有給休暇は残しておくという選択肢もあります。
*標準報酬月額=健康保険の保険料や給付の基準となる仮の給与額。通常4・5・6月に支払われた給与総額の平均値を39段階に分けられた標準報酬月額表にあてはめて決定される