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急性リンパ性白血病(ALL):治療

監修:大野竜三 愛知県がんセンター総長
取材・文:祢津加奈子 医療ジャーナリスト
発行:2004年12月
更新:2013年6月

  

急性リンパ性白血病

光が差してきた4剤併用プラスグリベック療法

急性リンパ性白血病は、9番の染色体と22番の染色体が相互に転座してできたフィラデルフィア染色体(下図参照)を持つものとそれ以外のものに分けられます。大野さんによると「7割がフィラデルフィア染色体を持たないタイプで、これには大人の場合は標準治療といえるものがまだない」といいます。

しかし、基本的には化学療法と造血幹細胞移植が主体です。化学療法では、一般にオンコビン(一般名ビンクリスチン)、プレドニゾロン、ダウノマイシン、エンドキサン(一般名シクロフォスファミド)の4剤併用療法が行われています。「これで、7割が完全寛解に入ります」と大野さん。完全寛解に入り、条件がクリアされれば、造血幹細胞移植が行われます。それが難しければ、維持療法として化学療法が行われます。しかし、残念ながら「多くの例が再発するのが現状で、治癒するのは3割です」と大野さん。小児の場合、急性リンパ性白血病でも同じ4剤併用療法でハイリスクでも6割、標準的なリスクならば8割が治っている。それに比べると、成績がだいぶ落ちるのです。再発した場合、再度研究的治療を含めて化学療法が行われます。

一方、フィラデルフィア染色体陽性の急性リンパ性白血病の場合、従来は全く治療法がないに等しかったといいます。「標準的な化学療法を行っても完全寛解に持ち込めるのは6割、地固め療法を行ってもほぼ全滅」という惨憺たる状況だったのです。しかし、ここにきて大野さんらが、非常に期待できる治療法を見出しています。あとでお話するように、慢性骨髄性白血病の特効薬に注目した大野さんは、標準的な4剤併用の化学療法に、さらにそのグリベックを上乗せしたのです。その結果、実に「9割以上で完全寛解に導入できた」のです。完全寛解に入れば、造血幹細胞移植に持ち込みます。この結果は、間もなく世界的な医学雑誌に発表されますが、「完全寛解に入ってもドナーが見つからないで、造血幹細胞移植ができない人にも案外いい成績が出ている」といいます。造血幹細胞移植では3割に治療関連死があるので、その影響もあると考えられます。

ドナーが見つからない場合は、地固め療法としてグリベックと4剤併用療法を交互に行い、その後グリベック単独での治療を行います。あるいは、ドナーが見つかるまでの間グリベックと4剤併用療法を交互に1カ月ずつ行います。その結果が、案外いいというのです。まだ研究段階ですが、日本発の初めての白血病の標準治療になることも期待されており、大きな希望が出てきました。

[フィラデルフィア染色体]
フィラデルフィア染色体
フィラデルフィア染色体のでき方
9番と22番の染色体の一部が入れ替わることによって、bcr-ablという遺伝子ができる
[急性リンパ性白血病の標準治療]
急性リンパ性白血病の標準治療


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