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貧血治療薬としてネスプも登場!

リスクに応じた治療戦略がカギ 骨髄異形成症候群の最新治療

監修●原田浩徳 順天堂大学医学部内科学血液内科准教授
取材・文●柄川昭彦
発行:2015年6月
更新:2015年8月

  

「骨髄異形成症候群は、リスクに応じた治療戦略が大切です」と
語る原田浩徳さん

正常な血液細胞が造られなくなる病気である骨髄異形成症候群(MDS)。完治させる唯一の治療法は造血幹細胞移植だが、たとえ造血幹細胞移植ができなくても、新たな薬の登場で、治療オプションは広がってきている。

血液を造る能力が低下し 白血病へと進行する病気

骨髄異形成症候群は、正常な血液細胞が造られなくなる病気である。この病気が発見される段階では、ほとんどの場合、まだはっきりとした自覚症状は現れていない。なんとなくだるいということで医療機関を受診し、血液検査の結果、赤血球、白血球、血小板が少ないということから、この病気と診断がつくケースが多い。

順天堂大学医学部内科学血液内科准教授の原田浩徳さんによれば、この病気には、2つの代表的な病態があるという。1つは、正常な赤血球、白血球、血小板を造る能力が低下してしまうこと。もう1つは、進行すると白血病に移行していくことである。

「骨髄異形成症候群は、血液細胞を生産する工場である骨髄において、赤血球・白血球・血小板の製造を行っているけれども、完成する前に壊れてしまうようなことが起きているため、血液を検査すると血球が少なくなっているのです。このような現象を無効造血と呼んでいます」(図1)

進行すると白血病へ移行するが、この病気から起こる白血病は、若い人にも見られる急性白血病とは違うという。

「多くの急性白血病は、遺伝子に転座という変異が起きることで発生します。これに対し、骨髄異形成症候群は、固形がんと同じように、遺伝子の傷ともいえる突然変異の積み重ねが原因。そのため、この病気は主に60歳以上の人に見られる病気で、高齢になるほど多くなるのが特徴です」

遺伝子の傷が原因となるので、放射線治療や抗がん薬治療を受けた人に起こりやすいことがわかっている。

図1 骨髄異形成症候群とは?
図2 骨髄異形成症候群のリスク分類の考え方

治療を進めるために低リスクと高リスクに分類

骨髄異形成症候群はいくつかのタイプに分類することができる。

「分類方法は色々ありますが、治療に直結しているのはIPSSによる分類です。骨髄中の芽球(白血病細胞)の割合、染色体異常の種類、血球減少の種類や程度などを点数化し、低リスク群、中間群-1、中間群-2、高リスク群の4つに分類します。実際の治療では、低リスク群と中間群-1をまとめて低リスク、中間群-2と高リスク群をまとめて高リスクとし、それぞれの治療戦略に沿って治療を進めていきます」(図2)

図3 骨髄異形成症候群のリスク別に見た治療戦略

低リスクは、正常な血液細胞を造る能力が落ちることが主となっているので、そこに治療を集中させることになる。一方、高リスクの場合、治療の中心となるのは白血病に移行するのを抑えることである(図3)。

「この病気の治療について、まず知っておく必要があるのは、低リスクでも高リスクでも、完治させるには造血幹細胞移植しかないということです。造血幹細胞移植ができれば、治癒する可能性があります」

しかし、高齢者の病気なので、実際に造血幹細胞移植を受けられる人は多くない。

「造血幹細胞移植は命を落とすリスクもある治療法なので、受けられるのは60歳までというのが原則です。最近では60~70歳でも行う場合がありますが、体力や他の病気の合併などを考えると、受けられるのは一部の人に過ぎません」

IPSS=国際予後予測スコアリングシステム

輸血と鉄キレート薬で貧血を治療する

図4 体内に鉄が過剰に蓄積することの弊害

代表的な症状である貧血が進むと、心臓に負担がかかって心不全を来す危険性がある。それを防ぐには輸血が必要だが、輸血を繰り返していると鉄過剰症が起きてくる。

「人間の体が1日に吸収できる鉄は1~2㎎で、便として排出できる量も1~2㎎です。ところが、1回2単位の輸血を行うと、体内には200㎎の鉄が入ります。100~200日分の鉄が入ることになるわけです。輸血は2週間に1回くらい行うので、体内には鉄が過剰になります。それが様々な臓器に蓄積してくるのです」(図4)

心臓に鉄が蓄積し、心不全で亡くなる人もいるという。そこで、鉄を体の外に出す鉄キレート療法が行われるようになった。鉄キレート薬は体内で鉄と結合し、それが排出されるときに、鉄も一緒に外に出す。かつての鉄キレート薬は注射剤だったため、鉄キレート療法を受けるのは大変だった。現在よく使われているのは、エクジェイドという経口剤である。

「エクジェイドを毎日服用していると、鉄過剰症を防ぐことができます。輸血と併用することで、生存期間を延長する効果が証明されています」

骨髄異形成症候群で繰り返し輸血を行った患者さんを対象に、鉄キレート療法を併用しなかった場合と、併用した場合を比較する試験が行われている。その結果、鉄キレート療法を併用することによって生存期間(OS)の延長が示されている。こうした結果を受けて、現在輸血と鉄キレート療法はセットで行うこととなっている。

エクジェイド=一般名デフェラシロクス

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